2018年4月、社員3人がエベレスト登頂に挑戦する会社があります。それが、広告会社のDACグループ。これは同社が遂行しているプロジェクトの一環で行うもの。登山天気アプリを提供しているtenki.jpとしては、とても興味を惹かれます。どうしてエベレストなのか、なぜ会社の業務でここまでやるのかをうかがってきました。3回にわたってお届けする予定です。

DACグループ「セブンサミッツプロジェクト」第2弾として登頂成功した南米大陸最高峰のアコンカグア(2013年2月3日)

左:前山 敏行 (まえやま・としゆき) 59歳

株式会社DACホールディングス 常務取締役

・2014年8月、ヨーロッパ大陸最高峰エルブルス(5,642m)登頂

・2017年4月、世界最高峰エベレスト ノースコル(7,020m)到達

右:上山 弘平 (かみやま・こうへい) 36歳

株式会社デイリースポーツ案内広告社 部長代理

・2013年2月、南米大陸最高峰アコンカグア(6,962m)登頂

・2017年4月、世界最高峰エベレスト ノースコル(7,020m)到達


創立50周年から始まった「セブンサミッツプロジェクト」

──エベレストは言わずと知れた世界最高峰で、登頂するのは常人の業ではないと思っていましたが、お2人とも山岳部などで山に登ってきたわけではないとお聞きしました。

上山:私の登山歴は5年くらいです。『セブンサミッツプロジェクト』の第2弾として2012年にアコンカグアに手を挙げたのがきっかけでした。ただただ好奇心からです。

前山:私はエルブルスのときからですね。当時の役員会で代表が『私が背中を見せているのになぜ役員は手を挙げないんだ』と言いながら私と目が合って、迫力に負けて手を挙げてしまったのが始まりでした(笑)。長野生まれですが、富士山以外の経験はありません。

──まず前提として、DACグループでの『セブンサミッツプロジェクト』があるわけですね。

前山:2012年にDACグループが創立50周年を迎えたとき、100年企業になるためにどうしたらいいかというテーマで発足したのがこのプロジェクトです。社員がリレー方式で世界七大陸の最高峰*に挑戦するという。代表の石川和則は冒険家としても活動していて、冒険を通じて自分の背中を見せ、その感動を社員にも体感してほしいという気持ちをずっと持ってきました。それが根底にあります。

上山:登山経験は不問で、挙手した希望者がトレーニングを経て挑戦者が決まります。毎年恒例の富士登山研修には10数回参加していたんですが、それ以外の経験がなく、会社の全面バックアップを受けてガイド登山で冬山にデビューしました。プロジェクトに参加している社員は私のような人間が多いんですよ。

前山:『セブンサミッツプロジェクト』は今第6弾まで成功していて、今年(2018年)4月からいよいよ最後のエベレスト挑戦が行われます。およそ2カ月かけて登頂してきます。

*プロジェクトの順に、キリマンジャロ(アフリカ大陸:5,895m)、アコンカグア(南アメリカ大陸:6,962m)、デナリ(北アメリカ大陸:6,190m)、エルブルス(ヨーロッパ大陸:5,642m)、コジオスコ(オーストラリア大陸:2,228m)、マウント・ビンソン(南極大陸:4,892m)、エベレスト(アジア大陸:8,848m)

2014年6月23日、第3弾で挑戦したデナリ山頂に立つ石川和則代表


すべて「会社持ち」で世界の最高峰へ挑戦できる

──エベレスト登頂となると時間はもちろん費用も相当かかるわけですが、それはすべて会社が?

前山:あくまでも業務の一環なんですよ。会社を休むのではないから、有給休暇も消化しません(笑)。社旗を持って行って山頂で写真を撮って、クライアント様に感謝のメッセージを送ります。

上山:他の会社の人に話すとみんな『信じられない』と言いますね(笑)。登山関係のクライアント様だと、担当者同士で話が盛り上がったりして、会話のきっかけになっています。

前山:広告会社ですし、こういう面白いコトをしているというのがメッセージになっています。社員教育もいろいろやっていて、その一環というのもクライアント様から認められているんです。マウント・ビンソンに登ってから部長に昇進した社員は、名刺に『マウント・ビンソン登頂』と入れて、『ビンソン部長』と呼ばれてるんですよ(笑)。そういうところから話が弾みます。

──社員の皆さんはどんな受け止め方をされているんですか。

前山:みんなとっても温かく応援してくれてます。冬山シーズン中にトレーニングしているのを社内報やSNSで発信して、挑戦するプロセスを見ていますから。

上山:プロジェクトに参加するチャンスは平等に与えられているので、それを掴みたい人が手を挙げているというだけの話ですね。

前山:私は今回『団長』を任されています。役員代表ということと、プロジェクトの集大成と言うことで、今度は自分が社員に対して背中を見せたいなと。今まで代表からずっと感動を与えてもらってきたので。

エベレスト隊がトレーニングの一環として登頂した赤岳


「イズム」がカタチになってエベレストへ

──先ほどもお話しされましたが、石川和則代表の気持ちが集約されたのが『セブンサミッツプロジェクト』なんですね。

上山:代表は冒険について『挑戦は無限の可能性を生み出し、冒険は人の心を成長させる』と語っています。人間の成長に一番大事なのがチャレンジすることであると。

前山:挑戦する気持ちや夢が成長につながるんです。夢の大きさは、その人の伸びしろにも関わっているんじゃないかと思います。

上山:DACグループの社是や石川イズムが、社員用の冊子にまとめられています。今言ったようなことも書かれていて、管理職研修の重要なツールにもなっているんです。代表が何を思っているか、社員はどうあるべきかを浸透させる。『赤本』って我々は呼んでいます。

前山:今回も、目的や趣旨をメッセージとして代表も発信しているから、社内では唐突感なく受け止められています。共通の目的を、社員が一体になって応援しようという。大きな夢ですね。

──いろいろなことが一本につながっているわけですね。

前山:2月に入って八ヶ岳トレーニングにも行ってきましたし、その想いをつなげる準備は万端ですよ。



★「会社員が挑むエベレスト ②」に続きます。

上山さんが手に持っているのがグループの理念が込められた「赤本」です

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 「業務の一環」で世界最高峰へ向かう〜会社員が挑むエベレスト ①