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随心院の春の風物詩に「はねず踊り」があります。この踊りは、小野小町と言えば欠かせない深草少将との恋物語が由来となっています。百代通い(ももよがよい)が叶ったら…と約束して足しげく小町の元へ通った深草少将と小町の恋に由来し、小野の庵(のちの随心院)に咲くはねず色(薄紅色)の梅の花とともに、童らと野遊びをしていたという小町の伝説を加味しています。一時期、途絶えていましたが、今も随心院で毎年3月最終日曜日に開催されています。今年は梅の花も少しゆっくり咲き始め、今はまだ満開を迎えていませんが、はねず踊りの頃には見ごろとなることでしょう。はねず色の衣装をまとい、小町と少将に扮した少女たちの踊りは、小町を偲ぶものでもありますね。
小町と言えば、やはり「花の色は移りにけりないたずらに わが身世にふるながめせしまに」が外せないところですね。そのほかにも、逢瀬を思わせる恋の歌や夢の歌が多いのですが、そのいずれも、どこか人生論を含んでいることが見逃せません。小町は、「あはれてうこと」という概念を常に大切にしていたからではないでしょうか。元来、「あはれ」とは、仏教用語です。「あぁ!」という、感嘆の言葉であり、人の心に動かされることを意味します。小町は常に誰かの心に動かされ、その感嘆を言の葉に託していたのだと言えますね。その代表的な歌が、【あはれてうことこそうたて世の中をおもひはなれぬほだしなりけれ】(人の心に動かされて「あはれ」と詠まずにはいられないことこそ、世の中を捨ててしまいたいという気持ちを繋ぎとめて、うかうかと私をこの世に生き続けさせる理由です)と、小町の歌心を吐露させていることからも分かります。
梅から桜へ、花を愛でる時に私たちが感じる「あぁ!なんて綺麗!」という気持ちも「あはれてうこと」のひとつでしょう。
コレクション日本歌人選 小野小町 大塚英子著
随心院 公式サイト
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