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パティシエにチョコラティエと専門の職人さんの呼び名が定着するほど、日頃私たちがいただくお菓子はバラエティ豊かになりました。これだけ洋菓子が豊富に出まわっていますがどうしてもカロリーは高め。そんなことで昔ながらの和菓子に再び熱い視線が送られています。「あんみつ」「みつ豆」といえば以前は女性に人気の定番の甘味でした。そこに使われているのがテングサなどの海藻から作られた「寒天」です。今では「寒天」といえばダイエットになくてはならない食品といってもいいかもしれません。食物繊維が豊富で吸水力があり、水分を多く含むとかさが増えるので満腹感を得られるとともに、腸内では便を軟らかくして排便をたすけ便秘の解消につながります。
このような優れた食品を作るためには冬の寒さを利用していたのです。テングサを煮てできた寒天液は常温で固まります。これを冬の凍てついた寒さの中で凍らせた後に、天日にさらして水分を溶かし乾燥させることで、長い間保存できる乾物の寒天ができるのです。ふたたび水にふやかして煮とかし固めれば寒天ができあがります。信州諏訪地方では気候風土を生かした農家の副業として、冬場の寒天作りは立派な地場産業となったそうです。
みなさんが夏に海水浴へ行った時、足にテングサが絡みついてじゃまだなぁと思ったことはありませんか? 私は思いきって持ち帰ってみたことがありました。よく洗って乾燥させてから、たっぷりの水で煮出した液を固めて食べてみたところ、あまりの美味しさにびっくり!「寒天ってこんなに美味しかったんだ!」と大発見したことがあります。海のうま味と言うのでしょう。身近に取れるものを利用して食の楽しみと健康を守ってきた日本人ってすごいな、とまだ若かった学生の私は心から思ったものでした。
「蕗の薹」と書きます。蕗は冬に氷をたたき割るようにして出てくるので「款冬」(かんとう)という異名がついています。大寒の初侯は「款冬華」と書いて「ふきのはなさく」と読みます。蕗は花をつける茎と葉をつける茎が別々になっており、まず花茎をのばして花を咲かせた後に地下から伸びる葉の茎(ふき)が出てきます。その若い花の蕾が「蕗の薹」です。独特の香りと苦みが蕗の薹の特徴です。苦み成分のアルカノイドは肝機能を強くして新陳代謝を促進するそうです。また塩分を排泄するカリウムにも富んでいます。冬の間にたまった毒素を排出して春に向かって体内を整えてくれそうです。昔おばあちゃんが「春の苦みとえぐみは好んで食べよ」と言っていたことを思い出します。花のあとに出てくる蕗の葉にも独特の苦みとえぐみがありますね。まさに旬を食す大切さを感じます。
「蕗の薹」は天ぷらやおひたしといった定番のほかに、刻んで味噌とみりんを合わせて炒めた「ふきのとう味噌」も春の訪れを楽しむ「ごはんのお共」と言えますね。
参考:食品成分データベース 文部科学省
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
「冬来たりなば春遠からじ」とはよく言われますが、その気持ちを表している季語が「春近し」や「春隣」と言えるでしょう。たとえ今は「大寒」の寒さの中でも、これを過ぎれば必ず春はやって来る、それを心待ちにしている気持ちが「隣」の字に込められていますね。
春隣る雨氷上をながれけり 石原舟月
仲見世や櫛簪に春近し 長谷川かな女
春隣吾子の微笑の日日あたらし 篠原梵
降る雨の流れ方に微妙な温度差を感じたり、早々と店先に並べられた春の髪飾りにハッとさせられたり、身近に成長を見守る幼子の笑顔にさえにも、待ちわびる春を見出している俳句の数々です。寒さはもしかしたらこれからが本番かもしれません。でもきっとそこここに春が潜んでいるに違いない、と春を期待する心を感じます。大地からも空からも身近なところに少しずつ少しずつ、私たちが気付かないうちにやってくる春を是非、あなたも探してみてください。きっと楽しい春が迎えられますよ。