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まずは年末を詠んだ詩歌から。年末には「年の暮れ」「年の別れ」「年の名残」などさまざまな言い方があります。
日もどんどん短くなっていきます。新しい年の準備や一年の締めくくりの行事がたくさんあります。そんな中で、桂信子の句、身の回りのものはすべて塵にすぎない、と言い切ってしまう潔さはうらやましいくらいです。
〈行く年や猫うづくまる膝の上〉夏目漱石
〈暮れてゆく年なり飯を食べてゐる〉太田鴻村
〈十二月どうするどうする甘納豆〉坪内稔典
〈冬薔薇や賞与劣りし一詩人〉草間時彦
〈本買へば表紙が匂ふ雪の暮〉大野林火
〈日記買ふ未知の月日に在るごとく〉中村秀好
〈月まぶし忘年会を脱(のが)れ出て〉相馬遷子
〈庭師来て冬の形をつくりだす〉平井照敏
〈忘年や身ほとりのものすべて塵〉桂信子
これからは風邪をひきやすい時期でもあります。「くさめ」はくしゃみのこと。
〈くさめしてしらじらとあるおもひかな〉長谷川ふみ子
〈咳の子のなぞなぞ遊びきりもなや〉中村汀女
〈マスクして弱い心を覆ひ得ず〉佐東聖一
〈わが丈にあまる一枚ガラス窓磨けば冬の海鳴りはじむ〉今野寿美
この歌は大掃除の情景かもしれませんが、日常の中にふいに発見される非日常を描いています。何か不穏な雰囲気もあります。
とくに俳句は短いだけに、夢のような謎めいたドラマを感じさせることがあります。冬の句の中にもこんなものがあります。冷たい空気が緊張感に満ちた空間を作ります。
〈蝶墜(お)ちて大音響の結氷期〉富沢赤黄男
〈夢に舞う能美しや冬籠(ふゆごもり)〉松本たかし
〈人影もなく湯豆腐の煮えてをり〉岸本尚毅
冬には、霜が立ち、雪やみぞれ、晴天にかすかな雪が風に舞うことがあります。「風花(かざはな)」といいます。
〈霜の刃を踏めば無限の空が鳴る〉石原八束
〈かぎりなく降る雪何をもらたすや〉西東三鬼
〈雪日和たたみ鰯の目の碧き〉長谷川櫂
〈みぞるるや雑炊に身はあたたまる〉飯田蛇笏
〈風花の大きく白く一つ来る〉阿波野青畝
そしてクリスマス、大晦日がやってきます。大晦日のことを「大年(おおどし)」ともいいます。
〈見つめよと置くともしびやクリスマス〉千葉皓史
〈大年のオリオンを妻よろこべり〉志城柏
── みなさんはどんな一年でしたか? 2018年もよい年であるといいですね。