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日本の漫画の歴史は古く、はじまりは「鳥獣人物戯画」だと言われています。それを聞いて、「漫画?」と疑問に思う人も多いでしょう。しかしなんと、鳥獣人物戯画の一部の場面には現代の漫画で使われている効果線などの技法が使われているのです。このことから、鳥獣人物戯画は日本最古の漫画と呼ばれています。
この作品の楽しみ方の一つとして挙げたいのが、「ストーリーの多様性」です。鳥獣人物戯画の中には台詞がなく、そのためにストーリーもはっきりしません。しかし台詞がないということを逆手にとると、私たち鑑賞者が自由にストーリーを想像することができるのです。「蛙はどんな笑い声をあげながら、何について笑っているのか」「猿はどうして兎に追われていて、どんな悲鳴をあげているのか」など、様々な想像を繰り広げることができます。
家族や友人たちと一緒になって各々が想像したストーリーを披露し合いながら鑑賞することで、一つの絵の中からたくさんの発見をすることができるかもしれませんね。
〈参考:日本文化いろは事典「鳥獣戯画」〉
みなさんは「ジャパン・パンチ」という漫画雑誌を知っていますか?この雑誌は、1862年(文久2年)にイギリス人のチャールズ・ワーグマンによって横浜の外国人居留地で創刊された、日本初の漫画雑誌です。この雑誌の名前は、イギリスの風刺雑誌「パンチ」に由来しています。雑誌には当時の日本の暮らしや日本政府への批判などが描かれており、明治20年まで続いたこの雑誌は日本の文明開化に大きな影響を与えました。
ジャパン・パンチの刊行が終ってからは、1901年(明治34年)創刊の「滑稽新聞」や1905年(明治38年)創刊の「東京パック」などを中心としてポンチ絵ブームがやってきます。ポンチ絵ブームの流れからすぐに日本初の子ども向け漫画「少年パック」も創刊されるなど、幕末から明治に掛けて日本の漫画雑誌の礎が築かれたのです。
これらの雑誌を創刊した宮武骸骨や北沢楽天は、手塚治虫や岡本一平をはじめとした多くの作家に影響を与えています。雑誌は美術展などで観ることができるので、漫画好きの方は美術展が開催された際に足を運んでみてはいかがでしょうか。
〈参考:丸善-雄松堂書店「幕末・明治期を世界に発信した幻の風刺雑誌 THE JAPAN PUNCH」〉
〈参考:さいたま市「さいたま市立漫画会館 - 北沢楽天」〉
今回は漫画の歴史の一部をご紹介しました。ここでは紹介しきれなかったのですが、他にもたくさんの作家や作品が日本の漫画文化の発展に関わっていました。
「漫画の日」である今日を機会に、少し昔の漫画を読んだり、鳥獣人物戯画などの絵巻物を鑑賞しに美術展に赴いてみることで、今身近にある漫画に対する認識が変わってくるかもしれませんね。