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冷やして飲む炭酸飲料として定着している「サイダー」。暑い季節に清涼感をもたらす爽やかなこのイメージは、実は日本特有のものなのです。日本のサイダーの語源は、英語で「リンゴ酒」を表すサイダー(cider)に由来します。サイダーは、フランスではシードル(cidre)となり、同様にリンゴ酒を意味します。たしかに、日本でもリンゴの発泡酒をシードルと呼んでいますね。こちらが本当の意味でのサイダーだったとは!
一方で、アメリカやカナダにおけるサイダーは、お酒ではなく「リンゴ果汁」を指します。ペンシルベニア州の州法では、アップルサイダーとは「リンゴから絞った、琥珀色、不透明、未発酵のアルコール分を全く含まないジュース」と規定されているとか。お酒か果汁かの違いはあっても、サイダーと呼ばれるものは「リンゴ」が原料となる点は共通しています。
アメリカの寒い季節に欠かせない飲みものである「ホットアップルサイダー」。温かいリンゴのサイダー(=)温かいリンゴジュースだったのですね。からだが温まる香辛料を加えたスパイシーなレシピが人気です。
アメリカで広く栽培され、収穫を祝う祭りも開催されるリンゴには、今も語り継がれる伝説があります。開拓時代、たったひとりでリンゴの種を携えて東部から中西部まで徒歩で移動しながら、リンゴ園を作り続けた人がいます。聖書の言葉を伝えながら質素な身なりで人々のために無償で行う行為に、やがて感謝と尊敬の念が沸き起こり、彼は聖人として迎えられるようになります。
この「ジョニー・アップルシード」と呼ばれる聖人は実在の人物。本名ジョン・チャップマン(1774年9月26日〜1845年3月18日)はマサチューセッツ州で誕生し、ペンシルベニア州、オハイオ州、インディアナ州、イリノイ州、ケンタッキー州へと、彼のリンゴの種を植える聖なる行為は広がっていきます。リンゴの種にちなんで、人々は彼をAppleseed(リンゴの種)と呼ぶようになりました。
ジョニー・アップルシードの忌日として広まった3月11日、誕生日の9月26日は「ジョニー・アップルシードの日」として、アメリカの記念日となっています。また、リンゴの収穫時期には、「ジョニー・アップルシード祭り」が開催され、アップルパイやアップルサイダーなどが振舞われるとか。アメリカでは、リンゴは開拓時代を通して人々を支えてきた特別な果物なのですね。
アメリカでは、ハロウィン、感謝祭、クリスマス休暇などイベントにも欠かせないホットアップルサイダー。この冬は、ぜひ自家製で楽しんでみませんか。
作りやすい分量でのレシピをご紹介します。
【ホットアップルサイダー レシピ】
・クローブ 10粒
・オールスパイス 10粒
・シナモンスティック 2本
・ジュニパーベリー 6粒
・リンゴジュース(ストレートタイプ)1リットル
・オレンジの皮 1個分
・砂糖 適宜
〈作り方〉
1. スパイス類を鍋に入れ、から煎りして香りを出したら、リンゴジュースとオレンジの皮を加え、弱火で30〜40分煮る。味をみて、好みで砂糖を足したら、ざるにさらしを敷いて漉し、保存瓶などに入れる。
※オレンジの皮は、塩(分量外)で磨くようにして水で洗い流し、ワックスをよくとってから使うとよい。
2. 1を適温に温めてから、カップに注ぐ。
参考文献(レシピ)
坂田 阿希子、伊藤 まさこ、仁平 綾 『ニューヨークレシピブック NEW YORK RECIPE BOOK』 誠文堂新光社 2015