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ピッツァの話をする前に、おそらく古代からあった食文化についてご紹介しましょう。
古くから人びとは、平たいパンを皿がわりに、具材を載せて食事をしていたようなのです。
たとえば古代ギリシャでは、その名も「プラクントス(お皿の意味)」という、平たいパンに具材を載せて焼いた食べものが存在していました。
また、古代ローマの英雄叙事詩「アエネーイス」には、「小麦でつくったケーキ」を皿がわりに食事をし、最後には皿まで食べてしまった、というエピソードが登場します。
「平たく焼いたパン」に「具材を載せる」、こうした食文化は、世界じゅうに普遍的に存在していたことでしょう。
現代社会においてピッツァが、民族や宗教を超えて幅広く受け入れられているのも、その普遍性があってこそという説があるほどです。
18世紀ごろ、ナポリの貧しい人びとのあいだで食べられるようになったのが起源といわれるピッツァ。
人びとは、露店商で売られるピッツァを買い、その場で食べていました。
貧しいとは、「住居にキッチンや調理道具がないほど」貧しい、ということ。
調理済みの安価な食べものを買うしかなかったのです。
そうした位置づけの食べものだったピッツァがイタリア全土に普及したのは、第二次世界大戦の後。
イタリア南部から、産業が発達した北部に移住する人が増え、それとともに食習慣も北へと伝わりました。
次第に、中流~上流の人びとも、ピッツァを口にするようになったのです。
さらに、観光産業の発展で、世界じゅうからイタリアを訪れる人も増加。
そうした人びとがピッツァを口にすることで、「イタリアの伝統料理」としてのピッツァが成立していったというのです。
ピザ、ピッツァといえば、イタリアだけでなく「アメリカ」を連想する方も多いかもしれませんね。
アメリカでピッツァが普及したのも、1940~50年代ごろ。
それまでは、イタリア系の移民が多い地域でのみ食べられるローカルフードでした。
第二次世界大戦では、多くのアメリカ人兵士がイタリアに従軍。
彼らが帰国して、アメリカ全土にピッツァの味を伝えました。
さらにメディアや交通インフラの発達で、ピッツァをはじめとするイタリア料理のレシピが広く知られるように。
レストランチェーンや宅配チェーンの発達などが、ピッツァの普及に果たした役割も見逃せません。
マーケティングやテクノロジーの発達と、食文化のグローバル化。
現在の、世界的な「寿司ブーム」にもつながるお話かもしれませんね。
進化を続けるピッツァ。次にピッツァを食べる時は、ぜひその歴史にも思いを馳せてみてください!
参考:キャロル・ヘルストスキー(田口未和訳)「ピザの歴史」(原書房)