- 週間ランキング
岩手県の伝統工芸品である南部鉄器には、奥州市水沢で生産されるものと盛岡市のものの2つがあり、それぞれの歴史は異なります。
奥州市水沢の鋳物文化は、1090年頃に藤原清衡が現在の滋賀県から呼び寄せた鋳物職人に鍋や釜を作らせたことから始まりました。その後伝えられた技術によって中尊寺の梵鐘などが鋳造されることとなったのです。
一方盛岡市の鋳物文化は、17世紀中頃に茶道に造詣の深かった28代南部藩主重直公が京都出身の釜師を招いたことから始まりました。その後鉄瓶をはじめ様々な工芸品が制作されることとなったのです。
一言で「南部鉄器」と言っても、それぞれの土地で違った歴史を歩んでいたのですね。
南部鉄器と言えば、重量感のある黒を基調としたデザインの印象が抱かれがちですが、最近はカラフルな色合いの急須が多く生産されています。色とりどりの急須はキッチン器具としてだけではなく、インテリアとして購入されることも多いようです。
カラフルな急須は現代の日本人の心を掴んだだけではなく、海外でも人気を博しています。海外の方々は南部鉄器の急須を使って紅茶やコーヒーを楽しんでいるそうです。かわいらしい形と色合いの急須は、お茶の時間を華やかにしてくれますよね。
日本の贈り物として、南部鉄器の急須を海外の方にプレゼントするととても喜ばれるのではないでしょうか。
南部鉄器のキッチン器具は、調理に使うことで気軽に鉄分補給できるという点からも注目されています。鉄器を使って調理をすると、鉄器から溶け出した良質な鉄分が徐々に食材へと移り、手軽に鉄分補給ができるとのこと。
食品に含まれる鉄分には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2つがあります。ヘム鉄はそのまま人体に吸収されるのですが、非ヘム鉄はビタミンCや消化酵素の働きによって人体が吸収できる形に還元される必要があります。非ヘム鉄からの鉄分吸収は、少々効率が悪いのです。しかも私たちが食品から摂取する鉄分の多くは、吸収率の低い非ヘム鉄と言われています。
一方鉄器から溶け出す鉄分は、吸収率の良い「ヘム鉄」。調理に鉄器を使用することで、効率良く鉄分を吸収できるんだそうです。貧血対策の一つとして、南部鉄器を使って調理をしてみてはいかがでしょうか。
一つ買えば100年は使えると言われる南部鉄器ですが、長く使うためにはしっかりとしたお手入れが必要です。使用した後に残った水分は、そのまま放置してしまうと錆の原因となってしまいます。
使えば使うほど出る鉄の味わいは、南部鉄器が人気である理由の一つでもあります。購入した際はしっかりとお手入れをしながら使用し、使い込むことによって滲み出てくる鉄の味わいを楽しみましょう!