秋にかけてラニーニャ現象発生には至らず 冬にかけて平常の状態が続く可能性が高い
気象庁は今日12日、エルニーニョ監視速報を発表しました。エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない、平常の状態となっています。今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もありますが、その状態は長続きしません。このため、ラニーニャ現象の発生には至らず、冬にかけて平常な状態が続く可能性が高くなっています。
●7月の実況
7月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.1℃で、基準値に近い値でした。また、エルニーニョ/ラニーニャ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の5月の値は+0.1℃で、基準値に近い値でした。太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、中部で平年より低く、東部では平年に近くなりました。太平洋赤道域の海洋表層の水温は西部で平年より高かった一方、中部から東部では平年より低くなりました。太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は中部で平年より強かったですが、東部では平年程度でした。対流活動は、インドネシア付近では活発でしたが、太平洋赤道域の日付変更線付近では平年程度でした。このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態となっていることを示しています。
●今後の見通し
今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もありますが、その状態は長続きしません。このため、ラニーニャ現象の発生には至らず、冬にかけて平常の状態が続く可能性が高くなっています(60%)。 大気海洋結合モデルは、秋にかけて太平洋赤道域で貿易風が強い状態が続き、エルニーニョ監視海域の海面水温が低下すると予測していますが、大気海洋結合が弱いため長くは続かず、その後冬にかけては海面水温は上昇して基準値に近づくと予測しています。また、実況では太平洋赤道域全体の冷水は蓄積されていません。
以上のことから、今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もありますが、冬にかけて平常の状態が続く可能性が高くなっています(60%)。
●エルニーニョ/ラニーニャ現象とは
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象のことです。一方、ラニーニャ現象は同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象のことです。エルニーニョ/ラニーニャ現象は、海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。「エルニーニョ現象」発生時の日本は、冷夏や暖冬になりやすく、「ラニーニャ現象」発生時は、夏に沖縄・奄美で雨量が多く、冬は寒気が流れ込みやすいと言われています。