ヤクルト対阪神 8回裏から3番手で登板した阪神石井(撮影・鈴木みどり)

阪神が延長10回の激闘を制し、優勝マジックを19に減らした。1-1で迎えた1死満塁で、8番熊谷敬宥内野手(29)が決勝の2点タイムリー。勝利に石井大智投手(28)の渾身(こんしん)ピッチも欠かせなかった。同点の8回に登板してピンチを招くもド根性で1回0封。レジェンド江夏豊に並ぶ球団3位の連続イニング無失点を41とし、自身が持つ日本記録の連続無失点も42試合に伸ばした。

   ◇   ◇   ◇

8回に3アウト目が刻まれると、石井は一瞬力が抜けたかのように、両膝に手を置いて安堵(あんど)した。「毎回違いますけど、ちょっとあのミスは話にならない。また明日から頑張ります」。熱戦を終えた後は反省しきり。猛虎のレジェンド左腕が築いた“41イニング目の壁”は、簡単なものではなかった。

1-1のまま試合が進む中、同点の8回に登板。1死から8番岩田のセーフティーバントを悪送球し、二塁まで進まれた。2死までこぎつけるも、今度は増田へのスライダーがワンバウンドとなり暴投。2死一、三塁のピンチを背負った。最後は代打長岡の一塁への鋭い打球を、一塁手大山が一度グラブをはじいたが、即座にリカバー。しぶとく守り切るのが藤川阪神、そして石井のすごさだ。

これで41イニング連続無失点。1969年(昭44)に江夏豊がマークした記録に肩を並べ、球団歴代3位に浮上した。藤川監督が現役時代に記録した球団記録は47回2/3。石井は「考えていないので大丈夫です」と淡々と話したが、着実に指揮官の記録にも近づいている。連続試合無失点も42試合まで伸ばした。17日巨人戦でプロ野球新の40試合連続を達成して以降も、自己記録を更新し続けている。

好投するときも失点するときも、自身の運命は初めから決まっていると割り切るのが石井流のメンタル調整法。一方で感情を抜きにして、投球の反省はいたってロジカルに行う。投手について回る「失投」への考え方も同じだ。

「失投はするものだと思っているから。失投する前に何かできることはなかったか。結局打たれるということは、自分の中でリスク管理ができていなかったり欠如していた可能性が高い。そのリスク管理の仕方をどういうところで取るか」

1球のミスを嘆くのではなく、重きを置くのはミスを前提にしたリスク管理。反省と分析を繰り返し、登板の数だけ引き出しを増やしてきた。

石井の熱投に応えるように、打線は延長10回に熊谷が勝ち越しの2点タイムリー。ヤクルト戦の3年連続勝ち越しを決め、優勝マジックをついに19に減らした。0を並べ続けるリリーバーとともに、リーグの頂点が近づいている。【波部俊之介】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【阪神】石井大智がレジェンドに並ぶ41イニング連続無失点「失投はするもの」右腕の思考とは