【DeNA】加入2年目の33歳森唯斗「昔のこと言ってもキリがない」灼熱のDOCKで汗流す
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セミの鳴き声が聞こえる灼熱(しゃくねつ)のDOCK。加入2年目のDeNA森唯斗投手(33)は若手に交じってファームで汗を流していた。今季ここまで1軍登板なし。シーズンも佳境に近づく中で何を思うのか。
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「やれることをやろうとは思ってます。出番があったらいつでも行くぞと準備しながらやってます」
「ラストチャンス」と位置付けて臨んだ今シーズン。夏の暑い時期になって状態も上がってきた。1軍先発陣では大貫、バウアー、ケイが離脱中と台所事情は苦しい中、11日の同リーグ日本ハム戦で先発して6回2安打無失点と好投でアピールした。
「自分のパフォーマンスは多少なりともできてるんじゃないかと。自信にもなってます。ただ僕が(1軍に)上がりたいと言って上がれるわけじゃない。チャンスがあるもんだと思って待機してます」
準備は惜しまないのが“森唯斗スタイル”。貫いてきたものがある。
「早くやることやって、準備を終わらせたい。トレーニングもむしろ朝にしたいんです。やっぱり練習終わってからだとダレることもある。朝の方がまだ暑くないですし、人が増えてぎゅうぎゅうになるのも嫌」
デーゲームならまだ暗い早朝、ナイターでは試合開始10時間前に球場に着くことも。
「でも損するタイプだと思いますよ。帰るのは早いので、あいつもう帰って…と思われるかもしれない。でも僕の考えは、やることないんだったら早く帰ればいいと。それで練習してないと思われるんだとしたらそれはそれで構わないと思うようにしてます」
ソフトバンク時代には4度のリーグ優勝、6度の日本シリーズ優勝と、そのうち3度の胴上げ投手にもなった。頂点の魅力と楽しさを知っているからこそ、若手選手たちへ歯がゆさも感じる。
「ちょっと考えが変われば…と思う選手はたくさんいますよ。でもそれはこっちから発信することじゃない。ソフトバンクの時にしろ、自分で気付いて頑張ってた子は出てきたりしてますしね。最近だと西武にいった仲田。彼はすごいですよ。めちゃくちゃ練習します。頑張ってもらいたいなと思いながら気にはしてますけどね」
そう思うのも、自らにないものを後輩たちが持っていると感じているから。
「だって僕よりいい球投げる投手なんていっぱいいますし。僕はスピード出るかと言われたら出ない。でもそこは気にしてないし、抑えて帰ったらいいんでしょ? って」
33歳とベテランと言われる年齢になった。原点は野球少年だった頃となんら変わらない。
「投げて抑えたら楽しいし、打たれたらやっぱり腹が立つ。だけど、じゃあ次どうやって抑えようかなというのは考えますしね」
でも2軍で満足する気はさらさらない。1軍通算484登板。魅力と怖さと楽しさを知り尽くしている。
「ファームでずっと投げてても何にもならないですから。やっぱり1軍の舞台っていうのはすごいし、いいところ。だからこそ若い子とか頑張ってもらいたいというのは思ってます。あれだけ楽しい経験をせずに終わる人はいくらでもいる。才能持ってるすごい子たちがいっぱいいるからこそ、ここにいる場合じゃないぞと思います」
自らにも言い聞かせるようにそう言った。過去の輝かしい実績も数字も思い出も関係ない。一選手としてアピールを続ける。
「今は今でしょ。だって昔のこと言い出してもきりがないですから。ずっと昔のようにできたらいくら稼げますか。それがずっとできないからみんな引退していくんじゃないですか」
心の奥底でたぎらせる闘争心。暑さでゆらゆらと熱気がこもるDOCKのグラウンドを見つめながら言った。
「まあ、まだまだ頑張らないといけないです」
33歳。このまま終わる男じゃない。【小早川宗一郎】