【悼む】釜本邦茂さん死去「一蹴入魂」体現したメキシコ五輪「ゴールへ一直線」「吐くまで練習」
<悼む>
日本サッカー界「史上最高ストライカー」釜本邦茂さんが10日午前4時4分、肺炎のため大阪府内の病院で死去した。81歳だった。京都府出身。日本代表として68年メキシコ五輪で7得点を挙げ得点王に輝き銅メダルに貢献。国際Aマッチ男子歴代1位の75得点、日本リーグはヤンマーで202得点を誇る。93年Jリーグ開幕時のG大阪監督、日本サッカー協会の副会長、政治家としても活躍。最近は病気療養していた。通夜、告別式は近親者で執り行う。後日、お別れの会を開く予定だ。
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記者が釜本さんを最後に取材したのが20年3月。翌年の東京五輪に出場する後輩への助言を求め、その熱弁は何時間も続いた。
メキシコ五輪の得点場面を、足元にあったゴミ箱をボールに見立て、解説してくれた。「当時は釜本を止めたら相手守備の評価が上がるから、オレを蹴飛ばしにきた。逃げてたら点取れないでしょ、自分はゴールへ一直線。気概を持って、吐くぐらいまで練習をしたのが、僕らメキシコ五輪のメンバーですよ」。
ドイツ人コーチのクラマーさんから教わったのは「大和魂」。釜本さんら全員がアマチュアの立場だったが、プロの意識で競技に向き合えと。精神力を養うため、大相撲の朝稽古を見学にも出かけたという。
ラグビーW杯日本代表に選ばれた外国出身の選手が、君が代を斉唱して戦う姿に、70歳代になっても心を震えさせ、記者に「大和魂はいろんなところにあるんですよ」と教えてくれた。1本のシュートに魂を宿らせた釜本さんの座右の銘は「一蹴入魂」。スポーツに限らない人生訓が、そこにはあった。【横田和幸】