ワールドカップ(W杯)へ向けて、日本代表選手たちの意識が高まった。東京・国立競技場で行われた6月のブラジル戦。世界のトップクラスに触れ、選手の間から上がったのが「共通理解」の必要性を訴える声。同じことを考えていた森保一監督は素直に耳を傾けた。 ブラジルは攻撃の自由度が高い一方、守備の組織力は想像以上だった。日本は中盤から前に縦パスを入れることができず、サイドでは1対2の局面をつくられた。スローイン時もうまく対応され「全てパターン化されていた」。相手の引き出しの多さに、指揮官も舌を巻くしかなかった。 監督は就任当初から基本コンセプトを示しつつ、ピッチ上では選手の判断を尊重してきた。規律を忠実に守るのは日本人の長所ではあるが、型を意識するあまり、柔軟性や大胆さが失われると短所にもなると考えていたからだ。 サッカー王国の緻密で整備された戦いを目の当たりにし、指揮官は考えを改めた。「あのブラジルがあそこまでやっている。共通認識を徹底して共有する」。チームのベースも固まり、動く時だと判断した。 迎えた9月のドイツ遠征。新型コロナウイルスによる制限も緩和され、合宿中は選手同士の意見交換が活発に行われた。プレスのかけ方や攻撃を組み立てる際の立ち位置などを確認し、全体ミーティングでは具体的な動き方を示す映像を用いて整理。それまで見えにくかった「絵」をそろえる作業が進んだ。 米国戦で見せた見事なプレスはその成果の一つ。長友佑都(F東京)は「危機感と熱意が意見交換につながった。今は若手もがんがん意見を言ってくる。非常にいいチームになっている」。本番が迫りつつある今、成長を実感している。 (デュッセルドルフ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕快勝した米国戦の後半、三笘(左から2人目)がゴールを決め、喜び合う吉田(右端)ら日本の選手たち=23日、ドイツ・デュッセルドルフ