既に負け越しが決まっている大関との一番はあっけなく決した。左で前まわしを引いた照ノ富士は回り込もうとする正代に素早く体を寄せ、何もさせずに土俵の外へ。「落ち着いて取れたかなと思う」。いつもと変わらぬ表情だった。 相撲内容が着実に良くなってきた。左膝などの負傷による休場明け。初日に大栄翔に完敗し、8日目までに3敗を喫するなど、今場所の混戦を招く大きな要因をつくったが、調子の上がらない大関陣を尻目に立て直す。その理由を「積み重ねじゃないか」。横綱は短い言葉で振り返った。 古傷を抱える両膝が完全に癒えることはない。それでも「常に気を張って体をベストの状態に持っていくために、毎日きついトレーニングをやってきた」。序二段への転落から復活する道のりでつかんだ揺るぎない自信と、一人横綱の責任感が前に進む力になってきた。 平幕隆の勝と並んだまま千秋楽へ。「一日一番集中してやっている。そういうことを気にしてもしょうがない」。3場所ぶりの賜杯獲得へ、荒れた場所を締める役割が求められている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕照ノ富士(右)は正代を寄り切りで下して3敗を守る=21日、東京・両国国技館