新関脇で12勝を挙げて優勝した翌場所。5敗目を喫した次の日の意味を、若隆景は誰よりも理解していただろう。大関昇進の足固めには、2桁白星をつなげたいところ。そんな状況で何とか踏みとどまった。 今場所初めて迎える大関戦は、180センチの自身より5センチ低い貴景勝との一番。激しく頭で当たり、持ち味の低い姿勢を貫いた。下から攻め続け、引き技にも落ちずに対応。「しっかり足を出していこうと思った」。逆に相手をはたき込み。本来の動きの良さがあった。 初賜杯を抱き、注目度はにわかに高まった。これまでとの立場の違いに重圧も増しているに違いない。「一生懸命、相撲を取っている」。本人は決して言い訳をすることはないが、土俵下で見た佐渡ケ嶽審判部長(元関脇琴ノ若)は黒星が先行している現状について「対戦相手に研究されているというのもある」と指摘する。 上位陣との対戦を控える今後に向け、攻め抜いて大関からつかんだ白星は力強く背中を押すはず。自らに言い聞かせるように「自分の相撲を取っていきたい」と繰り返した。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕若隆景(奥)は貴景勝をはたき込みで破る=16日、東京・両国国技館