表彰式で「君が代」を聞きながら、熱いものがこみ上げてきた。坂本は「ついに世界選手権で、自分で(国歌を)流したな」。常に掲げてきた「自分に勝つ」という目標をやり遂げての戴冠だった。 強豪ロシア勢は参加が認められず、北京五輪銅メダリストの坂本は優勝候補。ただでさえ重圧を感じていた中、フリーで樋口と河辺が崩れた。自分が2位以内に入らなければ日本女子の上位2人の順位の合計が「13」を超え、来年の世界選手権の枠が2に減ってしまう状況になった。 「怖過ぎる」。直前のヘンドリックス(ベルギー)が滑っている最中に涙があふれた。それでも、演技に向かうときには気迫十分の顔つきになっていた。「ここまでの頑張りを無駄にしたくなかった。心を入れ替えた」。ジャンプは4回転などの大技がなくても出来栄え点(GOE)の評価が高く、ほぼミスのない演技。北京で出した自己ベストを合計で約3点更新した。 伊藤みどり、浅田真央らに続く日本女子6人目の世界女王となり、「まだしっくり来ない」と苦笑いした。あらゆる重圧を乗り越えての頂点。ロシア勢が不在とはいえ、強いスケーターでなければ、たどり着けなかった。(モンペリエ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕フィギュアスケート世界選手権の女子で初優勝した坂本花織=25日、フランス・モンペリエ(EPA時事) 〔写真説明〕女子フリーで演技する坂本花織=25日、フランス・モンペリエ(AFP時事)