2021年1月5日

大和ハウス工業株式会社
代表取締役社長 芳井 敬一
大阪市北区梅田3-3-5

■建設現場の働き方改革
「耐火被覆吹付ロボット」実工事に初導入

 大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、2018年4月に開発および実証実験を行っていた、鉄骨の柱や梁をロックウール(※1)・モルタルで耐火被覆吹付(※2)するロボットを、建設現場(神奈川県横浜市)の実工事に初めて導入しました。

 当社が実工事に初めて導入した「耐火被覆吹付ロボット(以下、「本機」)」は、産業用ロボットアームと走行台車、昇降台車を組み合わせたロボットです。鉄骨の柱や梁をロックウールやモルタルで耐火被覆吹付するには3人の職方を要す作業において、本機を使用することで、耐火被覆吹付作業全体に要する時間を実証実験時の約20%削減を上回る、約30%削減させることを可能にしました。
※1.玄武岩や鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解し生成される人造鉱物繊維のこと。
※2.鉄骨に耐火性能を持たせるために必要不可欠な工事。

●ポイント
1.ロボットアームの配置方向を横向きに設置し、吹付範囲を拡大
2.走行台車のタイヤに「メカナムホイール」(※3)を採用することで、全方向に移動可能
3.パンタグラフ(※4)式昇降台車により吹付可能高さ7mを実現
4.図面データを用いて経路計画を作成し、数cmの誤差で吹付位置の調整が可能
※3.モーター出力により車輪円周上に45度の角度で取り付けられたローラーが回転するため、車体の向きを変えることなく全方向に移動可能な特殊車輪。
※4.平行四辺形(ひし形)で伸縮する構造のもの。

■導入背景
 当社は、建設現場の人手不足解消および職方の負担軽減のために、2017年5月から鉄骨の耐火被覆吹付について自動化の開発に着手、2018年4月に実証実験を行い、性能の向上を図ってきました。  
 このたび完成した本機は、産業用ロボットアームの位置や走行台車のタイヤの改善、昇降台車の構造の改良のほか、ロボットが作業を行う上で必要なデータ入力項目を削減するため、BIMと連動させることを想定した仕様に改良し、建設現場の実工事に初めて導入することとなりました。

1.ロボットアームの配置方向を横向きに設置し、吹付範囲を拡大
 実証実験で使用した試作機では、ロボットアームを縦向きに設置していました。
 本機では横向きに設置することで、柱の最下部などロボットでは吹付が困難とされていた部分にもロボットアームが届くよう改良。吹付可能範囲を大幅に拡大させました。

2.走行台車のタイヤに「メカナムホイール」を採用することで、全方向に移動可能
 建設現場の限られたスペースで使用することを考慮し、走行台車の車輪に「メカナムホイール」を採用することで、縦・横・斜めなど全方向への移動を可能にしました。
 また、「メカナムホイール」は細かい移動もできるため、移動誤差も数cm以内に納めることもできます。

3.パンタグラフ式昇降台車により吹付可能高さ7mを実現
 実証実験で使用した試作機では、昇降台車にスライド式のリフター(吹付可能高さ4m)を設置していました。
 本機では、パンタグラフ式リフターへ変更するとともに、上昇用シリンダーを縦に設置することで、省スペース化と吹付可能高さ7mを実現しました。

4.図面データを用いて経路計画を作成し、数cmの誤差で吹付位置の調整が可能
 本機は、図面データにある柱と梁などの部材の大きさや柱の距離等の情報から、吹付に必要な経路計画を自動で作成できます。また、本機が作業を行う上で必要なデータ入力項目を削減するため、BIMと連動(※5)させることを想定した仕様に改良しました。
 位置認識には、株式会社トプコンの3次元計測機「LN‐100」と計測時に使用する「プリズム」を併用することで、数cmの誤差で吹付位置の調整ができるようにしました。
※5.BIMと連動するソフトは現在開発中。

■今後の展開
 今後は、働き方改革の一環として「耐火被覆吹付ロボット」の複数現場への導入を目指し、改善や改良と運用体制の検討を進めます。
 当社は今後も、技術者不足対策や労働環境改善のため、省力化や短工期化など生産性向上を図る新技術の開発に努めます。

■「耐火被覆吹付ロボット」概要
名称:「耐火被覆吹付ロボット」
本体寸法:全長:2,300mm
全幅:1,200mm
全高:最大6,100mm、最小1,200mm(吹付高さ7,000mm)
本体質量:約1,400kg
使用条件:国内の建設現場における屋内での使用を想定
電源:三相200V
搭載ロボットアーム:産業用6軸ロボットアーム




情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 「耐火被覆吹付ロボット」実工事に初導入