こんにちは! 国際フィナンシャルコンサルタントの荒川 雄一です。
さて今回は、国際通貨の状況を通じて、「円の特性」について考えてみましょう。
国際通貨の状況
国際通貨基金(IMF)が公表している2015年6月末時点の世界の外貨準備に占める各通貨の割合は、以下のようになっています。
米ドル 63.8%
ユーロ 20.5%
ポンド 4.7%
日本円 3.8%
カナダドル 1.9%
豪ドル 1.9%
昨今の動きが注目されている中国の「人民元」はというと、昨年4月末時点で、約6,700億元(約12兆7,000億円)でした。世界の外貨準備の約1%ほどです。
しかしながら、「人民元」を一瞬にして国際化する方法として、中国がとった戦略が、国際通貨基金(IMF)の「特別引出権(SDR)」の「構成通貨」に、採用されることでした。
SDRとは
SDRとは、IMFが1969年に創設した国際準備資産で、「米ドル、ユーロ、ポンド、円」の「国際通貨バスケット」に基づいて決められます。
外貨準備不足をきたした国は、IMFの指定する国にSDRを引き渡すことによって、被指定国から交換可能通貨を引き出すことができるというものです。
つまり、SDRに採用されるということは、まさに「国際通貨」の仲間入りができるということです。
そして、昨年11月のIMF(国際通貨基金)の理事会において、「SDRの『構成通貨』に、人民元が採用される方針が固まった」と発表されたのです。
これによって、中国元の貿易・決済額の通貨別シェアも上昇しました。
2年前の通貨別シェアとの比較
2年前の2014年1月の通貨別シェアは、以下のようになっていました。
米ドル 38.75%
ユーロ 33.52%
ポンド 9.37%
円 2.50%
カナダドル 1.80%
豪ドル 1.75%
人民元 1.39%
それが、今年の1月時点には、次のように変化しています。
米ドル 42.96%
ユーロ 29.43%
ポンド 8.66%
円 3.07%
人民元 2.45%
カナダドル 1.75%
人民元のシェアは、約8割伸び、カナダや豪ドルをあっという間に追い越してしまいました。
4位の「円」を抜くのも、時間の問題とみられています。
SDRの構成比
そして、上述したSDRの構成比については、
以前は、
米ドル 41.9%
ユーロ 37.4%
ポンド 11.3%
円 9.4%
でしたが、変更後は、以下のようになるとみられています。
米ドル 41.73%
ユーロ 30.93%
人民元 10.92%
円 8.33%
ポンド 8.09%
ヨーロッパの低迷を受け、ユーロが大きく割合を減らす中、ポンド、円を抜いて、人民元は3位の構成比率となります。
「元の国際化」を目指してきた中国にとっては、大きな前進といえます。
反面、「国際通貨」となれば、「自由な取引」が求められるため、自分たちの都合での為替コントロールは許されなくなります。
最後に
通貨においても、中国の今後の為替動向が、世界に大きく影響していくことは間違いありません。
反面、「円」の国際通貨としての役割は、徐々に低下しているのが現状なのです。
次回は、なぜ円が、「安全通貨」として買われるかについて、考えてみたいと思います。(執筆者:荒川 雄一)
情報提供元: マネーの達人