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返済中の住宅ローン変動金利が「1%」上昇したら返済額はどのくらい増えるか
住宅ローン借り換えの「提案書」とは、他の銀行で住宅ローンを返済している人に、自分の銀行へ借り換えをセールスするための提案資料です。
「ウチの銀行に借り換えればこんなにお得ですよ!」というのが原則的な内容ですが、そこにはいろいろなことが記載され、また注意事項など内容も多いため、実際に銀行員が目の前で説明していく作りになっています。
そこで、まずは提案書に書かれていることを、簡単にまとめました。
【現在のローン内容】
【借り換え後の内容】
借り換えには費用がかかります。
主な費用としては住宅ローン担保の登記費用や収入印紙代、保証料や手数料などです。
ローン残額にもよりますが、借り換えには数万から数十万円の費用が必要になります。
と提案したとすれば、いくら毎月がお得になると言われても一度に30万円も払うことには抵抗があり、セールスとしてはうまくすすみません。
そこで銀行員の作る借り換え提案書では今のローン残高に、借り換えに必要な費用を上乗せして(1+5)シミュレーションをするのが大原則です。
したがって借り換え提案書は、借り換えに必要な経費を上乗せ、つまり今のローン残高より多い金額で作られている点に注意してください。
借り換え提案で銀行員は「メリット」「トータルメリット」という言葉をよく使います。
これは、「今のままで返済した場合の総返済額(元金と金利の総合計)と、ウチの銀行に借り換えた場合の総返済額を比較すると、約250万円もメリットがあるんですよ!」というものです。
ただしここで注意しなければいけないのは、金利が最終回まで変わらないという前提で計算しているという点です。
これはなぜかというと、住宅ローンの金利は先行きどうなるかは予想できませんので、あくまで計算の前提条件として金利が最後まで変わらないと仮定して作ってあるからです。
またメリットを考える場合、借り換えに必要な費用も差し引きで計算する必要があり、借り換え提案書では、借り換えで生ずるメリットから費用を差し引いて「トータルメリット」7(6ー5)と表現している場合もあります。
将来の金利動向が予想できず仕方ない部分ではあるのですが、銀行員によってこのメリットを推すタイプと、あくまで参考程度にとどめるタイプにわかれます。
たとえば私は後者の参考程度タイプで、たとえばお客様に「ここにあるメリットは、あくまで「金利が変わらなかったら」という仮定なので参考程度にしましょう。
それより毎回返済額がいくら減るか、あるいはこの〇〇という部分に注目してください」といった使い方をしています。
借り換えの提案は、金利差による返済の軽減効果をアピールする作り、つまり言ってみれば「良いことを前面にプッシュして、注意事項は小さく記載」というよくある作りになっています。
そして小さく(または「*」「注」など)書かれた注意事項こそ、本当に注意すべき事項なのです。
「メリットは最終返済日まで金利の変動がないという前提で計算しております」
「別途、団体信用生命保険の加入が必要になります。」
「別途、保証人が必要になる場合があります」
といった具合で、なんとなく「ふわっと」記載してあり、実際はこの部分を銀行員がしっかり説明しなければいけません。
しかしどちらかというとマイナス部分なので、説明をあいまいに済ませる者や、説明すらしない銀行員もいます。(書面に記載はされているので、受け取ったお客様は説明を受けたことにはなります)
この注意事項について、次項で3つ詳しく説明したいと思います。
借り換え提案書は銀行員が口頭で説明しながら使うツールなので、そのままみなさんがご覧になってもわかりにくいと思います。
そこで、ここに注目すれば大丈夫というチェックポイントを3つほど紹介します。
チェックポイント1:金利の種類 変動か、固定か
チェックポイント2:保証に種類保証 会社扱いか、保証人扱いか
チェックポイント3:団体信用生命保険 現在の内容と比べてどうか
まず、借り換え後の金利種類が変動金利なのか、それとも最終回まで固定金利10年間の固定金利なのか、などを確認する必要があります。
提案書によってはタイトルの部分で「変動金利(年2回金利見直し形式)」としっかり記載してるものや、「お借換後の金利:固定金利(当初5年)」と小さく記載されているものなど形式はまちまちなので、ここはしっかり確認してください。
将来の予想、ご自身の考え方など金利については人それぞれのスタンスや好みがありますので、返済の減少金額やメリットだけでなく、金利種類もしっかりとチェックしてください。
いま借りているのが保証付会社扱いなら、新規で借りたときに保証料(*)を払ったはずです。
借り換え提案書で保証会社扱いです、とか保証会社の保証が付くとわかるなら問題ありません。
また必要な費用の中に「保証料」の項目がなかったら、銀行員に確認することをおすすめします。
逆に保証人扱いで返済中の人は、同じように保証人扱いになっているかも確認が必要です。
このあたり、借り換え提案書は銀行員が調査・推測で作成した部分もあり、提案内容がいま返済中のローンについて、しっかり網羅されていない可能性もあります。
例1)保証会社扱いが、保証人扱いの提案になっていた
→ 新しく保証人が必要、いなければ借り換えできない
例2)保証人扱いが、保証会社扱いに変わっていた
→ 保証料を支払う必要がある
このように、提案内容を確認しないで話が進んでしまうと、思わぬ誤算も生まれる可能性があるのです。
(*保証会社が住宅ローンの保証人になることで住宅ローンを借りるのが保証会社扱いの住宅ローンで、保証会社がローン返済を保証する対価としての手数料が保証料)
住宅ローンの借り換え提案では、団体信用生命保険は一般的なタイプの前提です。
団体信用生命保険は、住宅ローンを借りる人が加入する生命保険で、本人が死亡や高度障害など所定の状態になると保険金が支払われ、その時点のローンが全額完済してもらえる仕組みで、保険料は毎月の返済額に含まれ、これが一般的な団体信用生命保険の内容です。
ところが団体信用生命保険には他にも
・ 「ガン特約付き(ガンと診断されたら保険でローンが完済)」
・ 「◯大疾病保障付き(成人病など特定の病気になったら保険で完済・◯は数字で・八大疾病などと使う」
・ 「ワイド(病歴がある人など健康面に懸念事項がある人でも加入できるように、告知事項が緩和されている 引受条件緩和型保険とも呼ばれる」
などいろいろな団体信用生命保険があります。
こうした特別なタイプの団体信用生命保険(スペシャル団信、ハイブリッド団信などとも・団信は団体信用生命保険の略)は一般的なタイプに比べ特約が付く分金利が高くなるのが原則で、ケースにもよりますが、一般的な団体信用生命保険より0.2〜0.4%金利が高めに設定されています。
借り換え提案書には団体信用生命保険についての記載がなかったり、あってもよくわからなかったりするので、
を確認しておく必要があります。
今回は住宅ローンの借り換え提案書のチェックポイントについてお話してきました。
確認が必要なところは、実際に提案している銀行員に直接聞くのが結局は早く確実です。
借り換え提案をしてきた立場から申し上げると、提案書にも千差万別あって、なかには(よくないことなのですが)メリットがわかりにくかったり、銀行員や銀行のセールスを最優先に作ってあるものもあります。
私が文中で「確認してほしい」と述べたチェックポイントなどは、セールスする側からするとなるべく注目してほしくないのが本音でもあるのです。
しかし、ご自身にとって大事な部分は納得できるまで確認をするべきです。
セールスを急ぐあまり、質問しても答えが曖昧だったり、答えをひきのばしたり(ごまかしたり)するようなら、その提案を受けるべきではないと思います。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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