a) 起点の違い 新卒採用市場において、就活生は卒業に伴い毎年入れ替わるため、各学生にとって就職活動は一度きりの活動となるが、企業は毎年新卒採用を行っているため、新卒採用に関するナレッジが蓄積されやすい状態にある。このため就職活動では、情報弱者の学生と情報強者の企業という情報格差が生じる構造となっている。こうした状況であるにもかかわらず、就職ナビなどのエントリー型サービスは情報弱者の学生から情報強者の企業にアプローチするモデルになっているためミスマッチが発生しやすい。これに対し「OfferBox」などダイレクト型サービスは、情報強者の企業から情報弱者の学生にアプローチするモデルになっている。このようにアプローチの起点に違いがあるため、エントリー型サービスで待っていても会うことができない学生を、ダイレクト型サービスは見つけることができ、情報の非対称性を乗り越えて個別最適なマッチングが可能となるのである。
b) 構造の違い これまで多くの就活生と企業に利用されてきたエントリー型の就職ナビサイトでは、情報弱者の学生からアプローチしなければならないため、認知度やブランド力の高い企業に応募が集まる傾向があった。一方、情報強者とはいえ企業側も、短期間に大量の応募学生から選ばなければならないため、偏差値や在籍大学といった学歴などで選別する傾向にあった。このようにエントリー型サービスは、認知度や偏差値といった特定の軸を頼りにマッチングするため、採用手法は偶然性の強い構造となっていると言うことができる。一方、ダイレクト型の「OfferBox」は、企業が充実したプロフィールを見て学生に直接アプローチするという構造になっているため、必然性の高いWin-Winのマッチングが可能となるのである。
c) 要所の違い 従来のエントリー型サービスは偶然性の強いマッチング構造となっているため、サービス内にいかに多くの企業と学生を集めるかが要所となっていた。一方、1名1社ごとの個別最適なマッチングが可能なダイレクト型サービスでは、サービス内に「集める」ことより、サービス内で登録した学生と企業をいかに「動かす」※かが重要な要所となる。「集める」と「動かす」というビジネスの要所の違いが競争力の差につながるわけだが、「動かす」ためには、ミスマッチを解消するという強い信念のもと、業界初のオファー送受信数制限機能のサービスへの実装や、決定人数をKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)としたKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)ツリーを用いた改善の積み重ね、導入企業への1to1コミュニケーションの必要性の啓蒙など、日々のサービス改善の徹底が欠かせない。したがって、徹底して「動かす」という企業文化も競争優位の一要素と言うことができる。直近で会員制ラウンジ事業をM&Aしたが、「動かす」ことを目的に、企業と学生がリアルに出会う機会を増やしているのである。