■業績動向

1. 2022年3月期通期の業績
翻訳センター<2483>の2022年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比4.3%増の10,337百万円、営業利益が同94.0%増の811百万円、経常利益が同80.8%増の841百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同387.0%増の573百万円と堅調な増収と各利益の大幅なV字回復を達成した。

売上高に関しては、主力の翻訳事業及び通訳事業がコロナ禍の落ち込みから回復し、全社の増収をけん引した。翻訳事業では前期比308百万円増(前期比4.1%増)となった。特許分野は、主要顧客である特許事務所からの受注が好調に推移したこと等により同216百万円増(同10.2%増)となった。医薬分野では、外資製薬会社からの受注が好調に推移し、国内製薬会社との取引も堅調なことから同1.0%増(同29百万円増)となった。工業・ローカライゼーション分野では、同10百万円減(同0.5%減)となった。ただし2022年3月期から収益基準の変更を行っており、旧基準に換算して比較すると同253百万円増(同12.4%増)となり、最も伸びた業種分野だったことがわかる。主要顧客である自動車関連や機械関連の企業の需要回復がその要因である。金融・法務分野では、企業の管理系部署からの受注が好調に推移したのに加え、保険会社からの大型案件受注やIR関連資料の受注増加などにより、同75百万円増(同14.7%増)と伸びた。

派遣事業においては、語学スキルの高い人材への底堅い需要に支えられ堅調に推移したものの、期間限定業務終了の影響などから同16百万円減(同1.3%減)となった。通訳事業では、顧客企業における対面での会議・商談の自粛が長期化しているものの、オンライン会議の定着に伴う通訳需要を積極的に取り込み、同178百万円増(同37.0%増)と大幅に回復した。コンベンション事業では、「第19回国際EBウイルスシンポジウム」「第2回東アジア文化都市サミット」など延期となっていた案件の開催が徐々に再開したものの、大規模な国際会議やイベントの開催における制限の長期化に加え、サービスのデジタル化に伴う案件の規模縮小が影響し、同78百万円減(同26.1%減)となった。

売上総利益は前期比12.2%増と2ケタ増、売上総利益率は47.4%と同3.3ポイントの大幅な改善となった。これは機械翻訳や翻訳支援ツールを積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んだ成果である。販売費及び一般管理費は同3.5%増と、微増にとどまった。結果として、営業利益は、売上総利益増のインパクトが大きく同94.0%増と前期からV字回復した。セグメント利益では、翻訳事業が同287百万円増、通訳事業が同53百万円増、コンベンション事業が同41百万円増と、派遣事業を除くすべての事業が増益に貢献した。


自己資本比率70%超。無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性が極めて高い
2. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の総資産は前期末比877百万円増加の7,172百万円となった。そのうち流動資産は795百万円増加となった。現金及び預金の726百万円、受取手形及び売掛金の106百万円がそれぞれ増加したことが主な要因である。固定資産は81百万円増加となった。投資その他の資産の増加が主な要因である。

負債合計は前期末比311百万円増加の2,081百万円となった。そのうち流動負債は296百万円増加となった。未払法人税等の100百万円、買掛金の91百万円がそれぞれ増加したことが主な要因である。固定負債には大きな変化はなかった。なお同社は無借金経営を継続しており、有利子負債はない。

経営指標では、流動比率で333.7%、自己資本比率で70.9%とともに高い水準にあり、財務の安全性は高いと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 翻訳センター Research Memo(5):2022年3月期は増収増益。機械翻訳などデジタル化進展により原価が低減