1. リアルエステート事業 (1) 東京都心部の不動産の開発・投資に特化して競争力を磨く a) 堅調な需要が見込める東京都心部 ディア・ライフ<3245>は創業以来、東京圏の単身者・DINKS向け都市型マンションを中心に不動産開発事業を展開している。人口減少期に入った日本においても、東京圏においては一世帯当たりの人数が減少し、世帯数が増加中であり、さらには働き方やライフスタイルの変遷もあり、好立地にある都心マンションの需要は衰えていない。結果として、都心での用地の確保の難易度は上昇し、新築マンション供給戸数は頭打ち傾向が続き、マンション価格は上昇を続けている。同社の戦略は明確であり、23区のなかでも都心部を中心に投資をしている。同社取り組み物件(都市型マンション、収益不動産、開発プロジェクト)のうち95.7%は23区内に位置する。また、最寄り駅から5分以内の物件が53.0%、10分以内で99%となっており、利便性の高い物件への投資を徹底している。
b) コロナ禍、東京オリンピック・パラリンピックを経ても不動産市況は活況 コロナ禍によりホテルや商業施設の不動産市況は大きな影響を受けたが、住居(レジデンス)に関しては影響が軽微だったと言えるだろう。また、東京オリンピック・パラリンピック後は不動産市況が落ち込むと予想する意見も過去には見られたが、現在までのところ市況は堅調である。一般財団法人日本不動産研究所「第45回不動産投資家調査」(2021年10月現在)においては、不動産投資家に「現在の不動産投資市場の市況について、新型コロナ感染症の発生前(2019年下期)と比較して、どのように認識していますか?」との質問をしたところ、40.0%が「2019年下期と変わらない」と回答し、最も多かった。プラスの回答である「現在の方が活況だ」や「現在の方がかなり活況だ」と回答した割合は31.1%で、マイナスの回答である「現在の方が低調だ」「現在の方がかなり低調だ」を上回った。世界的な金融緩和に支えられ、不動産投資家の積極的な投資姿勢が依然として継続していることがわかる。
c) エリアに特化した用地取得と建築発注が強み このような環境下、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリアに事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することにより、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。
(2) 収益不動産の購入・売却を強化 a) 高い目利き力が生かせる収益不動産投資 同社は都市型マンションを開発から手掛けることを中心に業容を拡大してきたが、さらに事業基盤を拡大し収益の多様化を図るため、既に稼働している優良な中小型収益不動産への投資も積極化している。収益不動産は、保有期間中に家賃収入を得た上で不動産サイクルを見極め、より良いイグジットのタイミングを図ることで収益の最大化を目指す。またポテンシャルより賃料が低い物件や空室率が一時的に高くなっている物件を安く仕入れ、保有期間中にリノベーションやテナント付けを行うことによって資産価値の向上を図った上で売却するなどのノウハウや不動産運営能力を持つ同社にとって、創意工夫の余地が大きい。
b) リスク回避と資産効率の向上 都市型マンション開発で良好な実績を上げ続け、高成長を遂げた同社の信用力は高い。2015年に東証1部に昇格し、財務の健全性も高いことから、金融機関とのリレーションも良好で借入余力も大きい。一般的に、新規に物件を建築するマンション開発事業に比べて既築の収益不動産事業は付加価値の創造余力が低いが、収益化のタイミングは早く、賃料収入と売却を選択できる流動性を持つといった事業特性の違いがある。収益不動産に取り組むことで、安定的な収益性とリスク回避を両立させ、資産効率のさらなる向上を図っている。