■今後の見通し

● 2018年9月期の業績見通し
カナミックネットワーク<3939>の2018年9月期通期の業績は、売上高が前期比16.1%増の1,500百万円、営業利益が同9.0%増の360百万円、経常利益が同0.4%増の332百万円、当期純利益が同3.0%増の230百万円と増収増益の期初予想を据え置く。

売上高に関しては、主力のクラウドサービスが引き続き成長する予想。売上予想1,500百万円に対する第2四半期進捗率は50.8%に達しており、既存顧客の売上がベースであるストックビジネスの特性を考えると、上振れが必至の状況だ。コンテンツサービスも有料・無料ユーザーID数が増加することでメディアとしての価値が高まっている状況であり、成長が期待できる。

経常利益に関しては、中期的な成長のための投資・経費を見込んでおり、期初の微増予想を変えていない。開発面では、プラットフォームに関する各種開発や旭川医科大学との共同研究など研究開発にも投資を増やす。営業面でも、営業人員の採用を強化する方針だ。既に経常利益の第2四半期進捗率で68.3%まで達しているが、下期は投資を加速するため着地は予想数値に近づくだろう。


■中長期の成長戦略
旭川医科大学との共同研究で医療介護連携の地方型モデル構築を開始。多言語対応のタブレット型「介護記録システム」リリース
1. 旭川医科大学との共同研究開始
同社は、2018年3月、国立旭川医科大学に共同研究講座を設置し「IoTクラウド利用のグローバルモデル構築」を目指すことを発表した。旭川医科大学は以前から遠隔医療に取り組んできた。同社は、この研究に必要な遠隔医療・看護支援等に関する新たな情報共有項目や支援システムに関する研究開発の役割等を担う。

元々、同社は東京大学との共同研究で「柏モデル(千葉県柏市)」を作り上げてきた経緯がある。「柏モデル」が都会型だとすれば、今回研究が始まった「旭川モデル」は地方型である。地方型の特徴は、1)大学・大学病院を頂点とする病院、クリニック、介護施設のピラミッド構造があり連携しやすい、2)拠点間の距離が遠いため遠隔医療、オンライン診断が有効、3)医師が不足しており退院後の介護までフォローできない、などである。これらの特徴は、日本の地方都市に共通しており、今後の横展開の余地が大きいモデルとして期待が高まる。

研究開発のスケジュール概要は以下のとおりである。
(1) 2018年: 地域包括ケアモデル(IoTクラウドによるパッケージ型医療・介護インフラモデル)を旭川市内で構築。
(2) 2019年:北海道モデル(道北、道東などの45地域をIoTクラウドとオンライン診療で支援する)。
(3) 2020年:グローバルモデル(対象地域を海外拠点に拡大する)。

2. IT導入補助金が予算拡充してスタート
経済産業省が中小企業の生産性向上を目的に交付するIT導入補助金が今年も始まった。昨年もあった補助金だが、昨年に比べて5倍の総額500億円規模となり、1社あたり投資額の2分の1(上限50万円、下限15万円)が補助される。同社はIT導入支援事業者に認定されており、カナミッククラウドサービスは補助対象ツールに登録されている。同社が介護事業者などに営業する際に、フックとなり、導入が促進されることが期待される。なお、補助対象経費にはクラウド利用費(1年間が上限)が含まれている。

3. 多言語化の推進:多言語対応のタブレット型「介護記録システム」リリース
介護業界の人手不足解消の切り札として期待されるのが外国人技能実習生だ。2017年11月に外国人技能実習制度の対象職種に介護職が追加される法改正が行われ、介護現場に外国人が増え始めている。一方で外国人にとっても、介護事業者にとっても課題となるのは日本語の問題だ。同社は2018年4月に5ヶ国語(日本語、英語、中国語、ベトナム語、ビルマ(ミャンマー)語)に対応したタブレット型「介護記録システム」をリリースした。ボタンを選ぶだけで、日本人でも外国人でも国籍を問わず標準化・共通化した介護記録の運用が実現できる。記録されたデータはカナミッククラウドサービスの中で医療介護連携にも活用できる。同社の基本戦略であるプラットフォーム化が具現化した一例と言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



<NB>

情報提供元: FISCO
記事名:「 カナミックN Research Memo(5):2018年9月期通期は増収増益予想。売上高進捗は50.8%と順調