■中期経営計画と中長期の成長戦略

5. 海外領域セグメントの取り組み
海外領域は2016年8月にMTrecを買収したことで一気に拡大した。MTrecが本社を置くイングランド北東部には自動車関連メーカー等の製造業が集積しており、英国日産自動車製造会社の工場(サンダーランド)や日立レールヨーロッパの鉄道車両工場(ニュートン・エイクリフ)などの日系企業も多数進出している。そうした市場環境もあり、トラスト・テック<2154>は自動車関連企業や家電企業、機械企業などを主要顧客として順調に業績を拡大させている。同社グループ入りしてからは、日系企業を中心とした自動車業界等からの人材需要取り込みに注力した。

世界の人材派遣市場の中でイギリスは12%を占めているとみられ、13%を占める日本と肩を並べている。人口の差を考えれば実質的には日本以上に成熟・発展した市場ということができる。MTrecはここを拠点にしているということで、国内より高い収益性を獲得できるポテンシャルがあると期待される。

同社の海外戦略のもう1つの軸はアジアだ。アジアは人材派遣市場としては未成熟ではあるが、人口の多さや世界の製造工場としての位置付けから、ポテンシャルが高いと期待されているのは前述のとおりだ。

同社はアジアでは将来の成長を見据えた先行投資に取り組んでいる。2017年6月期においては、インドネシアで人材紹介を行う新法人PT. TRUST TECH ENGINEERING SERVICE INDONESIAを設立(2016年9月)したほか、中国では山東省に日本式の人材派遣事業を行う合弁会社を設立(2016年10月、持分法適用会社)した。また2018年6月期に入ってからは、上海に人材紹介事業を行う托斯蒂客(上海)人才咨詢有限公司を設立した(2017年7月)。

これらの中で弊社が特に注目するのは、山東省の合弁会社、山東聯信智達人力資源有限公司(通称Trust-Bridge。同社の出資比率は49%)だ。2017年6月期の事業開始後、2017年春には単月黒字にまで成長した。2018年6月期は通年で黒字化が見込まれている。日本式人材派遣事業が順調に離陸したことで、将来の更なる展開に期待が高まる。

海外領域については、MTrecに続く、人材派遣事業の成熟国(欧米先進国)での事業展開に注目・期待が高まるところだ。しかしながら、これら地域での事業展開はMTrecのケースと同様、M&Aによることになる可能性が高いと弊社ではみている。M&Aは言うまでもなく相手のあることであり、事前の想定は同社自身にとっても極めて困難だ。今後の進展を見守りたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 トラストテック Research Memo(15):アジアは将来の市場拡大への布石を着実に打っていく方針