■RIZAPグループ<2928>の中長期の成長戦略

3. RIZAPボディメイク事業の成長戦略
パーソナルジムのRIZAP事業の成長は現在も続いている。RIZAP事業の売上収益の動向を測る上でのKPI(重要経営評価指標)は新規会員の増加ペースだ。累計会員数は2017年1月で7万人を突破したのち、2017年5月時点で約8万人となった。月約2,000人ペースでの新規会員の流入が続いていることになる。この新規会員を受け入れる店舗の新規出店も順調で、2017年3月末の店舗数は目標どおり120店に達した。47都道府県全県出店も完了間近となってきている。

RIZAP事業の成長エンジンは複数存在しているが、特に重要なものとして弊社では以下の3点を考えている。すなわち、1)会員1人当たりのLTV(ライフタイムバリュー)を引き上げ、2)シニア層の取り込みによる潜在的会員の拡大、3)ジム及びトレーナーの生産性向上による店舗売上高の拡大の3点だ。これ以外にもRIZAPの法人向け展開による成長戦略や、RIZAPの高いブランド力を生かした事業提携による成長戦略などがあるのは従来からレポートしてきたとおりだ。

(1) LTV向上策の状況
LTVを上げていくということは、RIZAPの事業モデルがフロー型からストック型へと転換することを意味している。顧客1人当たりの売り上げ単価でみた場合、スタンダードコースだけ場合は「入会金+298,000円+物販」で数十万円の売上高だが、スタンダードコースを終えた会員を、何らかの形で再契約してアクティブ会員状態にキープすることで、1人当たりの売上高は飛躍に増大することになる。

再契約率向上のために同社が打ち出した1つの施策が、ライフサポートプログラムだ。これは月2回/19,600 円でトレーナーの指導を受けつつ体形・健康の維持を図ることができるというものだ。これを再契約した顧客の場合、1人当たり売上高は「入会金+298,000円+物販+(19,600円×継続月数)」となる。フロー型からストック型への移行で1人当たり売上高の差が何倍にも開いてくることは容易に理解できるだろう。この施策の成否のカギは顧客満足度(CS)が握ることになるが、この点はこれまでのアンケート調査などの結果を見る限りは自信を持てる状況だ。

また、同社はマシンルームの導入も進めている。これはブースの一部をマシンルームに改装してトレーニングマシンを設置し、会員には自由に機器を使用してもらって体型維持・向上を図るというものだ。直接のトレーナーの指導はないが、プラニングシートを配布して適切な自己管理を可能にしているほか、定期的なカウンセリングも行っている。2017年6月時点にはマシンルーム設置店舗数が全120店の3分の2に当たる80店に増える見通しだ。

こうした施策の結果、ライフサポートプログラムのゲスト数は、導入間もない2016年1月と比べて2017年4月には10.5倍に増加した。これと関連して既存顧客のKPIである休会者数が23%減少し、代わりに再契約者数が37%増加した(いずれも2016年3月と2017年3月の比較)。RIZAPボディメイク事業のストック型ビジネスモデルへの転換が着実に進んでいると言える。

(2) シニア層取り込みの状況
シニア層の取り込みは同社がかねてより注力しているポイントだ。シニア層を開拓するメリットは数多いが、特に重要なのは以下の2点だと弊社では考えている。1つは、若年層と比較して時間的に余裕があるため、平日昼間というジム/トレーナーの稼働率が低い時間帯に誘客できる点だ。これによって全体としての稼働率を上げることができ、店舗売上高の増収及び利益率改善に寄与すると期待される。この点は後述するジム/トレーナーの生産性向上への取り組みとも重なるポイントだ。

もう1つは、シニア層に対する訴求ポイントが、短期的なボディメイクよりも、長期的な健康維持にあるという点だ。ボディメイクが2ヶ月間の短期プログラムが基本としている(ここにライフサポートプログラム等を付加して契約の長期化を狙っているのは前述のとおり)のに対して、健康維持や体力年齢の改善を遡及する上では、当初から長期契約を視野に入れたものとなり、前述のLTVに重なる収益モデルとなるとみられる。

現状はシニア向けのマーケティングは順調に進捗している。同社はシニア向けには29分のインフォマーシャルで丁寧な説明で納得を得ることを主眼にしたCMと、主力のビフォア・アフター/15秒・30秒CMの両方を展開している。シニア層の中での若手と言える50代には、タレントのエド・はるみを起用したCMが大きな反響を呼んで問い合わせ件数が大きく増加している状況だ。その結果として、新規入会者に占める50代以上の割合は20%を安定的に超えてきている状況にあり、30%台に乗せるのも時間の問題とみられている。

(3) トレーナー生産性向上への取り組み
RIZAP事業における需給バランスは、現状では明確に需要超過、すなわち、顧客の需要に対してジム及びトレーナーのキャパシティが追いついていない状況だ。その原因は、働く現役世代(20代~40代)の割合が高く、トレーニングの時間帯か早朝・夜間・休日といったところに重なりがちな点が1つだ。しかしそれ以外にも、予約システムが十分にコンピュータ化されておらず、少なからず機会ロスが発生している面もあるというのが同社自身の分析だ。

この点について同社では、新たな予約管理システムを導入し、店舗生産性・店舗稼働率などを現状の1.5倍とすることを狙っている。その結果として、店舗当たり売上高を現状の1.2倍に引き上げる計画だ。前述した顧客単価の上昇やシニア層の取り込みによる平日昼間の時間帯の稼働率上昇などと組み合わされば、店舗売上高の上昇度合いはさらに大きくなると弊社では考えている。

前述した一連の施策によって、顧客単価は明確な上昇カーブを見せている。入会後12ヶ月間の顧客単価は、2013年3月入会者と、2016年3月入会者とでは、1.6倍に上昇している。ライフサポートプログラムにしても、シニア層の取り込みにしても、まだアーリーステージにあり、伸びしろは大きい状況だ。したがって顧客単価もここからさらに大きく伸びていくと弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 RIZAPーG Research Memo(9):LTV、シニア層、生産性向上の3つの軸で成長が続く