従来、東証マザーズ市場で外国株式だった旧アキュセラ・インク(Acucela Inc.)は上場を廃止し、2016年12月に三角合併により窪田製薬ホールディングス<4596>が持株会社として、東証マザーズの内国株式市場に2016年12月6日付で再上場した。事業活動については米国子会社のアキュセラ・インクで眼科領域に特化した新薬の研究開発を進めていくことに変わりはない。なお、旧アキュセラ・インクの既存株主には1:1の比率で同社の株式が交付されている。内国株式となることで認知度の向上が進むほか、外国株に投資できなかった機関投資家の投資対象にもなり得ることから、潜在的な株式価値の向上につながるものと期待される。

開発パイプラインの状況として、自社開発品の「エミクススタト塩酸塩(以下、エミクススタト)」に関しては2016年4月より増殖糖尿病網膜症を対象とした臨床第2相試験を米国で実施しており、2017年第2四半期を目途に終了する見込みとなっており、結果を見て今後の開発方針を決定する。また、希少疾患であるスターガルト病を対象とした臨床試験も2017年初旬に開始する予定となっている。導入品となる白内障・老眼(老視)治療薬候補の「ラノステロール」については、2017年下旬から2018年初旬に臨床第1/2相試験を、また、網膜色素変性の遺伝子治療に向けた「オプトジェネティクス」については2018年に臨床第2相試験の開始を目指している。開発に成功すれば失明を防ぐ画期的な治療となるだけに、その動向が注目される。

尚、2016年12月14日に低分子化合物を用いた眼科治療薬の開発を手がけるEyeMedics社(本社:米国カリフォルニア州)と、眼科治療薬の新薬候補化合物を含むバイオミメティック技術(生物模倣技術)において全世界における製造・開発・販売の独占的実施権取得に関するオプション契約を締結している。加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫など、血管新生を伴う網膜疾患において、初期段階の炎症過程で放出される内因性因子を全く新しいメカニズムで調節することを目指すと発表しており、その治療対象となる領域が広いことから、今後の展開が期待される。

2016年12月期の業績は「エミクススタト」の地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性に対する治療薬候補としての開発が中止となったことで、提携からの収益は前期比65.5%減の8,300千米ドル、営業損失は38,300千米ドル(前期は26,556千米ドル)となる見通し。来期以降は複数のパイプラインで臨床試験を開始する予定となっているほか、引き続き有望と思われる新薬候補や技術等のインライセンスも継続していく方針のため、研究開発費の増加により営業損失も拡大する可能性がある。ただ、手元キャッシュは2016年9月末時点で現預金及び短期・長期投資合わせて147,887千米ドルあり、当面は資金面でのリスクはないものと判断される。

■Check Point
・新規開発品目が追加され、その他の各開発品目の開発も着実に進んでいる
・エミクススタトは糖尿病網膜症、スターガルト病などで開発を進める
・当面は自力での研究開発が続く、進捗状況によっては営業損失が拡大

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 窪田製薬HD Research Memo(1):三角合併により内国株式として東証マザーズに上場