金融庁は、2018年12月14日、第11回目となる「仮想通貨交換業等に関する研究会」(座長・神田秀樹学習院大学院法務研究科教授)を開催し、今年3月以来の議論をまとめた報告書案を発表した。

仮想通貨について、わが国では各国に先駆けて2017年4月に改正資金決済法が施行され、交換業者登録が進んだが、その後、2018年1月に不正アクセスにより、コインチェックが管理する顧客の仮想通貨が外部に流出した他、立ち入り検査を通じて多くの仮想通貨交換業者に内部管理体制の不備も発見された。そのため、160社とも言われる新規参入希望社の登録がペンディングになってもいる。
今回の報告書案では、こうした状況下で、今後仮想通貨業者が求められるセキュリティリスクへの対応や顧客財産の保全方法の他、現在は明確な規制が無い仮想通貨のカストディ業務やデリバティブ取引やICOについても、具体的な規制内容に関わる研究会での意見が反映された。
たとえば、流出リスクへの対応については、セキュリティ対策の観点からできる限りコールドウォレット(オフライン)による秘密鍵の管理を求め、ホットウォレットで管理した場合でも、業者にはホットウォレットで管理している受託仮想通貨に相当する額以上の純資産額および弁済原資(同種・同量以上の仮想通貨)の保持が求めることが適当など、より具体的な対応策が挙げられている。
また仮想通貨のデリバティブ取引については「他のデリバティブ取引と同様の業規制を適用することが基本」とし、信用取引についても同様の規制の対象とすることが適当であると提言している。
また、今回の研究会で特に注目されたICOについては、「様々な問題が指摘されることが多い一方で、将来の可能性も含めた一定の評価もあることを踏まえれば、現時点で禁止すべきものと判断するのでなく(中略)、適正な取引の確保を図っていくことを基本的な方向とすべき」と、改めて規制の対象とすることでICOを認める方向が示された。
その他の詳細は、今後金融庁から公表される同報告書でお読みいただきたいが、この日、今回の報告書案について意見を求められた研究会メンバーからは「日本では過去、3回も流出事件が起きた。セキュリティ対策を厳しくすることはもちろんだが、具体的なセキュリティ基準を業者に示すことも必要であり、基準ができたら、その遵守状況を誰がチェックするのかも合わせて書いて欲しい」、「業者には十分な資産を求める。現在160社が登録申請待ちだと聞いているが、審査に要する行政コストを軽減するためにも、必要資産のハードルをもっと上げても良いのではないか」などの厳しい意見が出た一方で、「ブロックチェーンの決済手段としての暗号資産の将来を否定するものではない。また、今後、ルールが明確になればビジネスがやりやすくなる」と、規制の網が幅広くかけられることを肯定的にとらえる声も聞かれた。
同研究会は今回でひとまず終了し、今後、報告書案を12名の研究会メンバーらが確認・修正した上で公表されることになる。
ちなみに報告書の終わりには、世界的には今、「仮想通貨」は「暗号資産」と呼ばれることが一般的になりつつあり、日本でも今後、世界のそれに合わせて「暗号資産」に変更する可能性があるとも指摘されている。新たな資料を作成する仮想通貨関係者は、呼称の変更も想定した上で資料の作成に臨むことが必要かもしれない。


【ニュース提供・エムトレ】




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情報提供元: FISCO
記事名:「 仮想通貨交換業に関する研究会報告(案)まとまる~ICOは規制対象とし、参入認める提言