※図表等を含む全文は以下のURLをご参照ください。
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2022/cc/0330_1

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:此本臣吾、
以下「NRI」)は、日本の生活者や社会がどのような感情の状態にあるのか、その
「空気感」をSNSへの書き込み情報をもとに計測し、指数化する方法を
2022年3月に開発し、その手法を用いた分析結果を本日3月30日に発表します。
「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「緊張」「疲れ」という6つの指標を毎日計測
することができます。

NRIではこれらの指標を「日本の空気感指数」と名付け、日本社会の空気感の変動を
定量的かつ科学的に把握するための新たな指標として、活用していくことを提案
します。NRIではこれらの指標を継続的に計測することで、その時々の空気感を
客観的に把握するとともに、将来の政策検討、経済予測、マーケティング戦略など
へも活用することを目指します。

なお、今回の指標作成にあたっては、筑波大学システム情報系の佐野幸恵助教との
共同研究の成果をもとにしています。

■心理検査(POMS:気分プロフィール検査)の考え方をもとに6指標を設定

社会の空気感を表す6つの指標については、心理検査(POMS:Profile Of Mood
States)の考え方をもとに設定しました。POMSで設定されている6つの感情分類を
もとに、各指標をNRI独自の表現で定義しました(以下「日本の空気感指数の
6指標の感情」参照)。

同様の考え方をもとに、ブログへの書き込みなどから空気感を把握した先行研究の
成果を活用し、6つの感情指標のそれぞれに関連する表現を定義し、
指標を作成しました。

【日本の空気感指数の6指標の感情】
活気: 元気、活発、陽気、精力的、積極的、イキイキなどの感情
混乱: 混乱、錯乱、当惑、自信がない、唖然、ゴタゴタなどの感情
落込み:悲しみ、憂うつ、孤独、怯え、ガッカリなどの感情
怒り: 怒る、困る、反抗、不機嫌、イライラなどの感情
緊張: 緊張、心配、不安、落ち着かない、ソワソワなどの感情
疲れ: 疲れた、くたびれた、だるい、うんざり、ヘトヘトなどの感情

■Twitterへの書き込み情報をもとに、1日単位で指標を計測

一つの大きな社会的な出来事で、社会の空気感は大きく変わることがあります。
そのため、現時点の空気感を把握する上では、1日ごとに指標を計測することが
重要です。NRIでは、Twitterのユーザーによる日々の投稿データをもとに、
各指標に関連する単語などの書き込み量を計測し、指数化しました。

各指標に関連する書き込み量を単純にカウントするだけではなく、リツイートなどに
よる複数カウントや、同一人物が行う複数の書き込みなどを排除する適切なカウント
方法を考案しました。また、利用者の拡大などによる書き込み総量の変化や、
6つの指標に関連した特定の用語(「だるい」、「ぐだぐだ」など)がSNSで
流行するなどによる書き込み表現のトレンドや、特定の指標に関連した書き込み量の
急激な増減などの問題を回避するため、書き込み量をカウントした後に、
各指標の増減トレンドを比較できるよう、データの規格化を行っています。

■6つの空気感の動きとそれらの変動要因

実際に2015年から2021年までの期間において、6つの指標の変化を提示したものが
図1です(末尾)。データは1日単位で計測していますが、1週間あたりの平均値で変動を表示しています。

指標の値が大きく変化するタイミングでは、その指標に関連する大きな出来事がある
場合が多くあります。例えば地震や台風などの自然災害で「緊張」指標が拡大したり、
円安などの経済的な要因が「混乱」や「緊張」の指標を変動させたりしています。
2020年以降は、新型コロナの影響を受けて「緊張」が高まり、緊急事態宣言解除の
タイミングでは「活気」の指標が高まっています。「怒り」や「疲れ」の指標は
社会情勢を反映して小幅な変動はありますが、長期的には安定傾向にあります。

直近では、ウクライナ侵攻の影響を受けて、侵攻開始日の2月24日に「混乱」
「落込み」「緊張」の指標が大幅な高まりを見せました。1日単位の変動を
見ることで、日本の空気感の短期的な変化についても高感度に観測することが
できます。

■各指標のトレンド分析

6つの指標のトレンドを、時系列データの将来予測をする際の代表的なアルゴリズムで
あるProphetを用いて、指標の変動要素を長期時系列、年間、週間の要因に分解した
ところ、長期的なトレンドとしては、「活気」「緊張」の指標は上昇傾向にあることが
わかりました。「混乱」「落込み」などは2020年以降はダウントレンドで、
「疲れ」は2021年に入り大きく上昇する傾向にあります。

年間の変動傾向をみると、6つの指標ともに年末・年始は下降する傾向にあることが
わかります。「緊張」は年度始まりである4月に高まり、「疲れ」は5月~9月に
高くなる傾向にあります。また、夏休みをとることが多い8月には「疲れ」以外の
指標は下降します。「落込み」は年間を通じて安定しており、特定の出来事などで
上下はしますが、季節的な動きは少なくなっています。

週間トレンドでは、月曜日の指標が高く、週末に向けて下降する傾向にある指標が多く
見られます。一方で、「怒り」は平日と土日の差が大きく、「緊張」は平日では
一定の水準になるなどの特徴も見られます。

このように6つの指標の変動要因を分析することで、日本社会の空気感が、どのように
変化する可能性があるかを予測することもできます。

■各種経済指標と高い相関にある空気感の指標

今回開発した「日本の空気感指数」と日経平均株価の変動をみると、
「活気」や「疲れ」指標と有意な正の相関があり、「落込み」指標とは負の相関が
あることがわかりました。また、その他の変数とも相関している傾向にあり、
ある時には「緊張」指標が、別の時には「活気」指標などが株価を上下させるなど、
6つの指標が複雑に関係しながら株価に影響を与えている可能性があります。

このように、経済や社会の変動に影響を与える生活者視点の基礎指標として、
「日本の空気感指数」の活用を提言します。今後NRIでは、空気感とその他の
経済指標との関係についても分析を行い、経済予測や政策立案のための基礎指標
として活用していく予定です。また、指標の測定結果については定期的に公表し、
学術研究や政策検討さらには企業のマーケティング戦略立案などに役立つよう、
情報提供を行っていきます。

以上

【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000255812&id=bodyimage1



配信元企業:株式会社野村総合研究所
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情報提供元: Dream News
記事名:「 野村総合研究所、日本社会の空気感の変化をSNS情報から 読み取る指標「日本の空気感指数」を開発 -「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「緊張」「疲れ」の6指標で計測-