日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、21年1月から開催している厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会(以下、大麻検討会)」に対する要望書を5月24日(月)に同省の医薬・生活衛生局長へ提出した。

大麻検討会とは、医学・薬学・法学の有識者12名で構成され、21年1月からこれまで6回開催され、下記のような議論が積み重ねられてきた。検討会は第7回で終了して本年6月に議論を取りまとめた報告書を作成する予定である。

第1回 2021年1月20日
(1) 座長の選出
(2)薬物対策の現状と課題
(3)その他
第2回 2021年2月25日
(1)大麻を取り巻く環境と健康への影響
(2)大麻等の取扱いの変化による社会環境への影響-米国での状況について-
(3)薬物使用の疫学:大麻を中心に
(4)その他
第3回 2021年3月16日
(1)再乱用防止と依存症対策
(2)再乱用防止~「需要低減」のための地域依存症支援~
(3)その他
第4回 2021年3月31日
(1)薬物の適正使用
(2)医療用麻薬の製造・流通と適正管理について
(3)大麻由来医薬品の医療への活用
(4)その他
第5回 2021年4月23日
(1)日本の麻文化を守るために
(2)これまでの委員からのご質問に関する回答と追加説明
(3)とりまとめに向けた今後の検討課題
(4)その他
第6回 2021年5月14日
とりまとめに向けた議論
○大麻取締法のあり方
○再乱用防止、社会復帰支援等
○医療用麻薬及び向精神薬
○情報提供、普及啓発
第7回 2021年5月28日
とりまとめに向けた議論2
○大麻規制のあり方
○社会復帰支援を柱とする薬物乱用者に対する再乱用防止対策
○医療用麻薬及び向精神薬の規制
○普及啓発及び情報提供

大麻等の薬物対策のあり方検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html

本学会では、4月25日(日)の春の学術セミナー2021における大麻検討会に関する議論等を踏まえ、次の3点を要望した。

1:大麻取締法第1条で定義されている現在の部位規制を廃止した上で諸外国に倣いTHC含有量の基準を設け、基準値以下のTHC含有品種に関しては大麻と別個にヘンプとして大麻取締法の規制対象から除外し、医療利用並びに産業利用の可能性を推進すること

2:カンナビジオール(CBD)及びCBDを主成分とする医薬品に関して、大麻取締法、並びに麻薬及び向精神薬取締法の規制物質から除外される旨を明示すること

3:THC及び大麻草の将来的な幅広い医療利用を見据え、大麻使用に伴う罰則の制定を見送ること

これらの内容を補足する添付資料として、令和2年度厚生労働科学特別研究事業「難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻由来成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究報告書」『諸外国における医療大麻の分類と法規制の枠組みに関する研究』を提出した。

日本臨床カンナビノイド学会「大麻等の薬物対策のあり方に関する要望書」
下記のリンクに全文があります。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=113374



【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000237019&id=bodyimage1

【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000237019&id=bodyimage2

図1:大麻取締法にTHC基準を設けてHemp(ヘンプ)を規制対象外とする区別図
図2:21年5月24日に厚生労働省医薬・生活衛生局長の鎌田氏に提出する本学会理事の正高佑志

<5月24日の提出の様子はこちらも参照下さい>
「大麻『使用罪』に反対」「大麻の柔軟な医療利用を」
厚労省に弁護士有志と関連学会が署名や要望書を提出
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-kyokuchou

日本でも医療用大麻を適切に使えるようにして
海外で使える薬で日本の患者が救えない理由
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-masataka

<用語解説>

Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

ヘンプ(産業用大麻)
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用の大麻と区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれている。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。



配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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情報提供元: Dream News
記事名:「 日本臨床カンナビノイド学会が厚労省「大麻検討会」に関する要望書を提出