『一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか? (Business Life)』
(クロスメディア・パブリッシング)
地面に触れるシューズ底面をアウトソールというのは、みなさんもご存知でしょう。このアウトソールもビジネスシューズを選ぶにあたり、外せないポイントです。なぜならアウトソールとその製法で、靴の寿命にも差が出るのです。まさに下から支えてくれる存在。
今回はそのアウトソールについて詳しく紹介しましょう。
それぞれの特徴を理解し、使い分けられるようになればビジネスシューズとの付き合いがより楽しくなるはずです。
靴の見栄えだけでなく、履き心地にも大きな影響を与えるのが、このパーツだと思います。素材となるとアッパーにばかりに目が行きがちですが、実はこれも種類が様々です。ここでは主に、イギリスの紳士靴に使われるものを3種類ご紹介します。
①レザーソール
アウトソールの元祖とも言えるもので、「タンニンなめし」という昔から続く手法を用いて処理された、分厚い牛革が用いられたものです。適度なしなやかさとクッション性があり、自然な通気性と耐熱性にも優れるのが特徴です。ただし耐水性やグリップ力それに耐久性では、後で記すラバーソール系のものよりどうしても劣ります。
また近年では、必ずしもそうとは限らないのですが、「重い」との先入観もあるようで、バランスのとれた性能がありながら、必要以上に敬遠されがちなのは残念です。
②ダイナイトソール
合成ラバーを用いたイギリス製のアウトソールとしては、恐らく最も有名なもので、底面に施された幾つかの円い凹凸でグリップ力を与える形状になっています。側面からは凸凹が目立ち難いので、内羽根式の靴やデザインによってはスリッポンであっても違和感なく装着でき、雨用のドレスシューズの底材としては最適なものの一つでしょう。
百年以上前に原型が登場し、今日でも当時とほぼそのままの形状で製造されています。
③コマンドソール
タイヤのように深く刻まれたトレッドパターンのお陰で、路面状況に関わらず安定した歩行が可能なイギリス製ラバーソールです。足アタリが硬くしかも重いものの、これなら山道や岩場など条件の悪い路面でも安心で、イギリスの各靴メーカーが得意とするカントリーシューズ・ブーツにも多く採用されています。
原型は登山ブーツ用に登場したもののようですが、イギリス陸軍向けのブーツとしても大量に納入された実績があります。
②や③に関しては、イタリアのビブラム社でも類似のものを製造していて、それぞれ性能を競っていますね。他にも最近では、スニーカーと同類のポリウレタンソールも多く見掛けます。ただしこれは加水分解による破損が起こりやすく、寿命は長くて数年と考えていた方が良さそうです。
また、カジュアルな分野では生ゴムを用いたクレープソールもあり、柔軟性とクッション性には優れるものの、高温に弱く次第に固くなるのが難点で、見た目的にもビジネスシーンでは不向きです。
私個人としては、「紳士靴らしい履き心地」を味わうには、是非とも一度はレザーソールのビジネスシューズを選んでいただきたいと思っています。確かに欠点が若干あるのも事実です。しかし、テクノロジーがこれだけ進化した今日でも生き残っているのは、何しろ着用感が自然であるのとともに、快適性が抜群だからでしょう。この底の靴に替えたら、長年患っていた水虫が完治したなんて話も、ある方からお伺いしました。
その一方で、悪天候や過酷な環境などへの対策として、②や③のようなラバーソールの靴も何足かあると絶対に便利なのは間違いありません。ビジネスにおいても足元の安定は何事にも代えられませんし、お手入れも簡単だからです。最近は都会でも、大理石の床など雨でなくても滑りやすいところも多いですから。
実はイギリス製のビジネスシューズでも、ここ数年で、新品の段階からラバーソールを装着したものが大分増えました。そしてそれらは海外のみならず、イギリス国内でも好評を博しています。地球温暖化の影響なのか、従来のような霧雨ではない大粒の雨の日がイギリスでも増えていて、レザーソールでは心もとなくなっているからのようです。
いずれにしても、それぞれの特徴を理解し使い分けられるようになると、ビジネスシューズがより楽しく履けるようになると思います。アウトソールの良し悪し、その製法で靴の寿命には差が出ます。長く愛用できるビジネスシューズを探している方は、この3つの名前と特徴を覚えてみてください。