理学療法士&経営者の立場から見たヨガとは?「反省を教訓に昇華させる練習が、まさにヨガ」

「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より



ヨガをなぜ始め、続け、そして伝えるのか。「デキる人は、ヨガしてる。」の著者2名によって、ヨガのエキスパートにインタビューを行いました。



お話を伺った人:中村尚人さん

日本ヘルスファウンデーション協会 代表理事。予防運動研究会 代表。日本理学療法士協会 会員。






―ヨガを始めたきっかけをおうかがいできますでしょうか。


 


合気道を高校の時から、社会人まで続けていました。転職で千葉から東京の八王子に引っ越した際、道場を変えたのですが、その道場の方針に自分が合わず、長年続けてきた合気道をストップしてしまったんです。どうしようかなと思っている時に友達に誘われて、ヨガに行ってみたんです。正直にいうと、初めは合気道の代わりだったんですよね。合気道もやっていたし、運動にはそれなりに自信があったのですが、初めてヨガをした時、全然ポーズがとれなくて。周りの人たちは普通にできているのに、なぜ俺はできないんだと。「何だ、これは!?」と思いましたね。最初は悔しくて続けていた感じです。


 


―なるほど、最初は合気道の代わりだったのですね。話は変わりますが、ヨガをしている、していないに関わらず、ヨガ的な方というのはいらっしゃると思うのですが、それはどのような方だと思われますでしょうか。


 


まず、自然という大いなるものに対して、畏敬の念を持っている方ですね。自然が人間に恵みを与えてくれているわけですからね。あとは、自分のためではなくて、人を育てたり、子育てでもそうですが、自分が獲得した知慧を後世に伝えようと尽力されている方は、ヨガ的だと感じますね。相手のことを想って、見返りを求めず奉仕の心で接している方ですね。エゴが消えている人、といっても良いかもしれません。そういう方は、様々な世界にいらっしゃると思います。


 


―中村先生は会社経営もしていらっしゃいますが、経営という仕事の中でヨガを意識されることはありますでしょうか。


 


個人事業主は別ですが、会社は自分1人で成り立つものではありませんよね。社員を雇い、養っていかなければならない。当然、数字(売上や利益)は大事です。


ただ、そればかりを追いかけてしまうと、自分は何でこの仕事をしているんだっけ、という目的が見えづらくなってしまいます。また、会社や社員のことを考えて、仕事に力を入れ過ぎてしまうと、今度は家族や家庭でも不和が起きてきますし、自分を犠牲にし過ぎるのも良くないんですよね。


会社と自分を行ったり来たりする、バランス感覚が大切です。バランスが崩れてしまうと、しんどいですね。社長だから忙しいのは当たり前なのですが、経営者として頑張っている気持ちを、社員と共有したい部分はあるんです。ただ、それをはっきり出してしまうと押しつけがましくなってしまって、独裁のようにも受け取られかねない。かといって何も言わないと、ただただ自分が疲弊していって自暴自棄になってしまいます。社員にも、たまには愚痴の一つでも言ってほしいんですけど、自分が忙しそうにしているのを見て、遠慮をして何も言ってくれなかったりと。コミュニケーションは難しいですよね。だから、常にポジティブにいようとはしています。常に前向き、楽観的でいる、というわけではなくて、ネガティブなマインドになってしまった時、そのことに早く気づいてそこから脱する、引っ張られないようにする、ということです。


できたことよりも、できなかったことに人間は感情が持っていかれてしまいますし、それは仕方のないことです。だから、できなかったことは反省して、教訓に昇華させてパワーにすることですよね。反省を教訓に昇華させる練習が、まさにヨガです。過去の失敗や未来の不安にとらわれず、今ここにあるものを見る、というね。そうやって見つめた「今」が、やがて過去になるわけですからね。いかにプラスの面を見つけてネガティブなものを昇華できるか、という。考え過ぎずに動くのが良いです。


 


―そうですね。気功の世界でも、静功(動かずに行う気功法)と動功(動作を伴う気功法)、両方を行うことが大切だといわれています。


 


そうですよね。人間は体を使って進化をしてきたわけですから。体を無視して頭だけ使って、考え過ぎて止まっちゃうのは良くないですね。仕事でも動いて失敗したら、次にいけますからね。とにかく動いてみることが大事ですよね。


 


―中村先生は理学療法士としても活躍されていますが、医療人としての見地から、ヨガについてどう思われますでしょうか。


 


理学療法はフィジカルの領域なので、精神は見ないんですよね。西洋医学の思想は細分化していけば原因がわかると考えるものなので、領域がものすごく細分化されています。


逆にヨガは東洋思想ですよね。体と心を包括的に見るので、統計でいったら複雑系です。人間そのものが、そもそも複雑系です。例えば、地球を一つの生命体とみなす「ガイア理論」という考え方があります。森が汚れたら、海が汚れる。水が汚れると、当然それを飲んでいる僕らも汚れるという風に全てが繋がっていると考える。これは東洋的ですよね。


ヨガも東洋のものですから、ヨガがただのスキルになってしまうことは危惧していますね。体を動かしてリラクゼーションを得たり、瞑想をして脳をすっきりさせたりできるわけですが、それを何に繋げるのか、ということが大事です。ヨガは単なるフィットネスではなくて、思想と共にあるものですから、ヨガの効果を、感謝や奉仕や慈悲の心に繋げたいですよね。


 


―その通りですね。最後に中村先生にとってヨガとは一言でいうと何でしょうか。


 


人生を豊かにする道標ですね。



 


中村尚人 Naoto Nakamura

日本ヘルスファウンデーション協会 代表理事。予防運動研究会 代表。日本理学療法士協会 会員。日本人類学会 会員。株式会社P3 代表取締役。タクトエイト代表。身体と心の運動に取り組み、予防医学の実現を目指すヨガ講師。理学療法士として医療・介護分野にて臨床経験を積む中で、病気になってからよりも、病気にならないようにする事の重要性に気付き、予防医学の実現のためにヨガとピラティスのスタジオを立ち上げる。自らまとめ上げたピラティスメソッドやウォーキング法の指導者育成をはじめ、執筆活動、各種講演、日々の運動指導に携わる。

 









『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』

(クロスメディア・パブリッシング)






情報提供元: BUSINESS LIFE
記事名:「 理学療法士&経営者の立場から見たヨガとは?「反省を教訓に昇華させる練習が、まさにヨガ」
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