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「“何を伝えたいのかわからない”と言われる」「プレゼンや報告の際、自分でも何を伝えているのかわからなくなる…」こんなお悩み、ありませんか。
はじめまして、石上沙織です。私はテレビ・ラジオ・インターネット動画の気象キャスターとして働きながら、スピーチトレーナーとして、ビジネスパーソンの皆さんに「伝え方」の指導をしています。
これまで500人以上の方に指導する中で、「伝え方」のコツは、天気予報に凝縮されているのではないかと思うようになりました。
今回は、私の経験を通して気づいた“伝える際の2大ポイント”=“何を伝えるか”“どう伝えるか”について書いていきます。
私たち“気象キャスター”の仕事は、ただ天気の解説をするだけではありません。実は、伝える内容をすべて“自分で”考えているのです。記者が書いた原稿を読んだり、ディレクターが組んだ台本通り伝えることが多い“アナウンサー”の仕事と大きく違う点かもしれません。
たとえばテレビ放送の場合、まず天気図や資料を読んで、伝えるべきポイントを考えます。そのポイントに沿って、どんな画面をどんな順番で使うことが効果的か、組み立てていきます。必要ならば、デザイナーさんにCGを発注することも。
そして、画面に合ったコメントを考え、放送に臨みます。生放送なので、オンエアギリギリまで雨や気温の情報をチェックし、直前になってコメントの内容を変えることも。持ち時間も決まっているわけでなく、オンエア寸前に「やっぱり30秒巻いて!(短くして)」と言われることも少なくありません。華やかな仕事だと思われることも多いですが、実は地味な作業の連続なのです。
テレビでもラジオでもインターネット動画でも、まず取りかかるのが「“何を伝えるか”を考える」という作業です。皆さんも天気予報で「きょうの天気のポイントは…」なんてフレーズを聞いたことがありませんか?
「晴れるのか雨なのか」「風は強いのか」「暑いのか寒いのか」「台風は」「花粉は」「乾燥は」…など数ある情報の中から、「きょうは“何を伝えるか”」を1つだけ決めるのです。
この“何を伝えるか”の中には、“相手は誰か”“相手にどんなアクションを取ってほしいか”ということも含まれています。
天気予報を伝える際も、番組がメインターゲットとしている視聴者は誰なのかを意識する必要があります。「朝の番組を見ている人は忙しいから、要点のみコンパクトに」「主婦向けの番組だから、洗濯情報や買い物に行くべき時間を」など、“相手は誰か”を考えることで、何を伝えるべきか変わってくるからです。
また、“相手に取ってほしいアクション”を考えることも必要です。私は天気予報とは、「天気について知ってもらう」ことが目的ではなく、「天気を知って、アクションを取ってもらう」ことが目的だと考えています。例えば「あすは、雨が強まります」と言われるより、「あすは、大きめの傘をお持ちください」と言われた方が、より具体的なアクションに繋がるのではないでしょうか。
これらは、ビジネスパーソンの皆さんにも通じる話です。「専門知識のない相手に、専門用語を連発してしまう」「忙しい相手に、ダラダラと長時間話してしまう」ということはないですか? これでは、“相手は誰か”を考えていることになりません。
また、例えば上司への報告ひとつとっても、“相手にどんなアクションを取ってほしいか”を明確にすることが重要です。「〇〇について報告します」という伝え方をするケースが多く見られますが、それでは上司はどんな行動を取ったら良いかわかりません。「〇〇について、意見を聞かせてください」「指示をください」「決裁をください」など、相手が取るべきアクションを明示してこそ“わかりやすい伝え方”に繋がるのです。
“何を伝えるか”が定まったら、次は“どう伝えるか”です。よく言われることですが、まずは「結論」から伝えるようにしましょう。この「結論」にあたる部分が、上述した“何を伝えるか”と同じです。天気予報なら「きょうは大きめの傘をお持ちください」だったり「日中は洗濯のチャンスです」だったり。「結論」は長くならないよう、できるだけ端的に、キャッチーに伝えられることが理想です。
よくビジネストークのスキルとして「ホール・パート法」「PREP法」などが使われますが、これは天気予報でも多用しています。
例えば、「結論(ホール)」「理由・詳細(パート)」「結論(ホール)」という順序で組み立てる「ホール・パート法」。これを天気予報で使う場合、まずは「きょうは洗濯日和です」という結論を述べる。その後、「日差しがたっぷり届くから」「風が穏やかだから」「空気が乾燥するから」と、理由・詳細を説明する。最後に「だから、きょうは洗濯日和です」と念押しする。このような解説をすると、納得感をもって聞いてもらえるのです。
“どう伝えるか”というのは、話の構成だけではありません。私がプレゼンやスピーチの指導をする際、「もったいないな」とよく思うのが「早口」で「間(ま)がない」こと。自分の話したいことを矢継ぎ早に伝えるため、一方的、独りよがりな印象を与えてしまいます。
とはいえ、「間」や「沈黙」が生まれることが怖いと思う人も多いでしょう。しかし、「間」は上手に使えば、相手を引きつけるためのとっておきの方法となるのです。
私はラジオでも天気の解説をしていますが、この「間」を有効に使うことを心がけています。
例えば解説の冒頭、「きょうは皆さんに謝らないといけないことがあります」とって注意を引く。そして1~2秒、わざと間をおく。そうするとパーソナリティーの方々が顔を上げてくれたり、「なになに?」と聞いてくれたりします。そのタイミングで「きょうの雨、朝には止むとお伝えしていたのですが…このあと、まだ降りそうなんです!」と、自分の最も伝えたいことを話す。このように「間」を有効に使ったときは、パーソナリティーの方ともちょっとした一体感が生まれる気がします。
今でこそ、気象キャスター・スピーチトレーナーとしての仕事をさせていただいている私ですが、最初から「伝え方上手」だったわけではありません。10年以上前、NHKの地方局にキャスターとして入局した頃は、「伝え方をわかっていない!」と怒られることばかり。それでも実践を積み重ねたことで、少しずつですが上達することができました。
幸いなことに、「伝える」ということは、毎日のように実践の機会があります。今回お伝えした「伝え方」のコツをひとつずつでも実践していただけたら幸いです。
あわせて、「第三者から客観的な意見をもらう」ことも、上達への近道!
私は「気象キャスターが教える“伝え方”講座」という少人数セミナーを開催していますが、それぞれの受講者に合わせたフィードバックをしていくと、みなさん見違えるほど上達していきます!
みなさんも仲間からアドバイスを貰ったり、社内でフィードバックしあう場を設けてみてはどうでしょうか。自分では気づけない癖や課題を指摘してもらうことで、伝え方が変化してくると思います。
「伝える」ことが得意になると、自信がつき、仕事の効率アップにも繋がります。より充実したビジネスライフのために、「伝え方」のスキル向上に取り組んでみませんか?