神奈川歯科大学大学院環境病理学分野の槻木 恵一教授らの研究グループは、新型コロナウイルスに対する交叉IgA抗体を非感染者(感染既往なし)の唾液中に発見しました。唾液中のIgA抗体は、口腔へ侵入する病原体や異物を中和あるいは凝集反応で処理し、粘膜からの感染防止をはかります。本研究において新型コロナウイルスに対して口腔での免疫反応としてIgA抗体の重要性が示唆されました。この成果は、medRxiv[Detection of cross-reactive IgA against SARS-CoV-2 spike 1 subunit in saliva, doi: https://doi.org/10.1101/2021.03.29.21253174 ]で公開され、ダイレクトトランスファーでリバイス中です。
■研究の背景 研究チームでは、口腔粘膜上皮は、新型コロナウイルスが結合するレセプターACE2と感染促進を行うTEMPRSS2の発現を認めることを昨年8月20日にInternational Journal of Molecular Science[Existence of SARS-CoV-2 Entry Molecules in the Oral Cavity. Int J Mol Sci. 2020 Aug 20;21(17):6000. doi: 10.3390/ijms21176000.]にいち早く報告し、口腔は新型コロナウイルスの感染部位となることを示してきました。 一方で、口腔には独自の感染防御システムが認められ、特に口腔の粘膜免疫の実行抗体である唾液中のIgA抗体は、生体内に病原体を侵入させないよう未然に働く予防効果があります。 感染症は、病原体の感染力と感染防止システムのバランスが不均衡になると発症します。しかし、口腔における新型コロナウイルスの感染防止に関与する因子の研究は、非常に遅れていました。