「ダンサー」小早川清 作 ウィッセルスコレクション
「リップルージュ」小早川清 作 ウィッセルスコレクション
「道頓堀」上原古年 作 ウィッセルスコレクション
アムステルダム国立美術館は、2016年6月24日(金)から9月11日(日)まで、当美術館内フィリップスウィングにて、日本版画収集家エリーズ・ウィッセルス氏のコレクションから選ばれた現代日本版画170点を、初めて公開いたします。
作品にはどれも、飛躍的変化を遂げた20世紀前半の日本社会が映し出されています。これら版画作品に加え、ヤン・デース & ルネ・ファン=デル=スタル両氏のコレクションからの着物と漆器、また東京国立近代美術館所蔵のポスター作品も展示されます。
■作品が生まれた背景 ― 20世紀初頭の日本
1900年以降、日本はまさに順風満帆、目覚ましい進歩の道を歩み始めます。近代都市は産業の発展に大きく貢献し、余暇を豊かにする新たな文化も生まれました。アメリカやヨーロッパと同様に女性の活躍も始まり、「モダンガール」と呼ばれる新しいタイプの女性たちが登場。こうした社会的な楽観主義の背後で、どこか危うさも孕んだ時流は、過去を理想化する懐古主義にもつながっていきます。
このような大きな変革の途上にあった社会を、1923年に関東大震災が襲います。東京を中心とした広範囲でほぼ壊滅的な状況となってしまいます。しかし震災後の復興作業は迅速で、結果的には大都市開発が一気に押し進められることになったのです。化学繊維の開発は伝統的な着物も含めた衣料全般を手頃な価格にし、東京のデパートのショーウィンドウに飾られた最新ファッションは買い物を楽しむ人々の注目を集めました。1930年の東京は、10年前とはまったく違う世界的大都市として生まれ変わっていたのです。
■テーマは新版画&創作版画 二つの潮流が表す激動の日本社会
この時代の日本社会を、今回展示される版画作品以上に活き活きと今に伝えるものはありません。日本には古くから浮世絵と呼ばれる版画芸術がありましたが、20世紀初頭には新版画そして創作版画と呼ばれる新しい美術運動が起こりました。新版画の作家たちは伝統的版画技術を用い、理想化された女性像や情趣ある風景画を、伝統的モチーフでこのジャンル特有の作品を制作します。一方、創作版画の作家たちは新しい美術思想を持つ前衛作家として、現代社会を反映する都市生活と産業というモチーフを選び、作品制作を行ったのです。この二つの潮流の版画が伝える当時の日本、20世紀初頭の激動の日本社会の姿がこの現代日本版画展のテーマです。
■エリーズ・ウィッセルス氏コレクション
エリーズ・ウィッセルス氏のコレクションは、オランダにおける20世紀前半の日本版画コレクションとして、また日本国外にある優れた現代日本版画コレクションとしても大変ユニークなものです。作品総数は現時点で約2,000点、どれもクォリティの高いものばかりが過去25年間にわたって集められています。このコレクションでは新版画、そして創作版画の両方が同様に収集され、当時の日本版画芸術全体を展望できる貴重なものです。 情報提供元: @Press