それ、ただのわがままや得手不得手ではなく「汗をかけない、かきにくい」無汗症という病気かもしれません。
そして無汗症の子どもは体温調節が苦手。残暑が厳しい9月は、熱中症をはじめ体温調整を行う発汗機能障害による病気の発症リスクが高まる時期といえます。
発汗機能障害に詳しい埼玉医科大学医学部脳神経内科教授、中里良彦先生に子どもの遺伝/先天性無汗症の一つ「ファブリー病」についてお話をうかがいました。
「汗をかけない・かきにくい」「手足の激しい痛み」見た目では気づきくいファブリー病
ファブリー病とは厚生労働省の指定難病であるライソゾーム病の一種です。ライソゾームはヒトの細胞の中にあり、不要な物質を分解する役割を担っており、分解に必要な酵素が多数存在しています。
ファブリー病は、そのうちの一部の酵素の働きが低下しているために、不要な物質が体の組織に貯まってしまうことでさまざまな症状を引き起こす遺伝性、先天性の病気です。
ファブリー病の症状は年齢によっても異なり、幼児期・学童期には「汗をかきにくい・汗をかけない」といった発汗障害や手足の激しい痛みなどの症状があります。
30歳頃になるとこれらの症状は軽快するといわれる一方、腎障害は20歳頃、心障害は30歳頃から進行するとみられています(必ずみられるとは限らず、人により症状の出方や時期が異なる場合があります)。
子どもが夏の暑い日に動きたがらなかったり、お風呂に入るのを嫌がるのは、暑さでなまけているわけではなく、先天性、後天性の無汗症による症状のためかもしれません。
子どもはもともと発汗能力が低く、熱を逃がしにくい
幼小児期の子どもは汗腺をはじめとした体温調節能力がまだ十分に発達していません。単位面積当たりの汗腺の数は多いのですが、単一汗腺あたりの汗出力は成人に比べて半分以下です。
夏の高温・暑熱環境下では、発汗が熱放散の唯一の手段となります。そのため、子どもは深部体温を一定に維持する能力が低くなります。
深部体温が40度まで上がると全身けいれん、42度で多臓器不全になる可能性が高まると言われており、深部体温の上昇は命に関わる危険を及ぼすほどです。真夏や残暑が厳しい季節には、子どもの状態に気を配りましょう。
またファブリー病の子どもは、汗での体温調節が難しいことから、熱中症の危険性や汗をかけずに体温があがることで手足の痛みを誘発する恐れがありますので注意しなくてはいけません。
ファブリー病かも? こんな子どものサインに注意
ファブリー病の特徴的な症状として、幼児期・学童期には「汗をかきにくい・汗をかけない」といった発汗障害や手足の激しい痛みなどがあらわれます。
お風呂が苦手で、お風呂に入るのを嫌がるのも子どもの患者にみられる特徴です。また、皮膚に赤い発疹があらわれることもあります。
(監修:東京慈恵会医科大学 衞藤義勝 名誉教授)
これらの項目に当てはまるようなら、ファブリー病の疑いがあり、QOLを維持できるよう早期発見早期治療が求められます。心当たりがある方は、下記のファブリー病について詳細を紹介するサイトをご確認ください。
ファブリー病は診断が難しいため、病名がわかるまで10年以上かかることも多い病気です。早期発見のためにも、「あれっ?」と思ったら医師に相談しましょう。
【参考】
※「ファブリーツリー」ファブリー病情報サイト
https://www.fabrytree.jp/summer_cp/ 情報提供元: WomanSmartLife