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公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が世界を元気にする挑戦者たちを迎え、日本の将来について語り合うリレー対談。第7回目はアパレルをはじめ小売・卸売業者向けソリューションを提供する株式会社ディー・ティー・ピーの代表取締役、岡留嘉伸さんをお迎えしました。
喜多村:アパレル業界では、お店のほとんどがディー・ティー・ピーさんのシステムを使っていると聞きます。まず、ディー・ティー・ピーさんがどのようなことをしている会社なのか、お聞かせいただけますでしょうか?
岡留:一般的なビジネスをする上での販売管理、つまり商品を仕入れて在庫にしてそれを販売する小売店舗や卸業者さんの販売管理や商品管理、顧客管理などのシステムを提供する会社になります。
喜多村:例えば、僕がお店で気に入った服を買おうとしたとき「そのカラーは今ないんです」、「そのサイズが今置いてなくて」ということがありますよね。その際、「〇〇店には在庫があります」とか「最寄りの店にお取り寄せしておきます」というように、全店舗からお客様に商品が届けられるようなシステムも御社が作られたものなのでしょうか?
岡留:そうですね。とくにアパレルに関しては広範囲にシステムを提供しています。アパレルはまずデザイン画を起こして実際に作るかどうか判断し、サンプルを作って展示会で並べ、各店舗や取引先の人たちに見てもらい、その方々が何点欲しいかというのを入れていく。その点数で工場に発注するんですが、その展示会受注、発注配分、在庫基準配分などもリアルタイムで行うことができます。工程の長いアパレルで、求められることを全て網羅したシステムなんです。
喜多村:自社でブランドを持っている場合も、発注権のある人がそういう形を取ってるんですか?
岡留:だいたいそうですね。それを集計して発注し、モノが出来上がると中国から陸揚げされて各店舗に分配されるんですけど、売り上げがいい店や在庫の少ない店など、各店舗に売り上げベースで配るか、在庫ベースで配るか、コンピューターで弾き出して分配します。
喜多村:売上規模や売り場面積の違う店舗に同じ数を入れるわけにはいかないですものね。
岡留:はい。次に商品がお店に陳列されるとお客様の目に触れ、1点売れれば売り上げが1になり、在庫が1減ります。そうした商品管理をするわけですが、当社のシステムでは、その1点をいつ、誰が、どこで買ったのかも全てデータとして取ることができます。そのデータ分析をしっかり行うことで、売れるものはまた仕入れて在庫にし、売れないものは入れない。データを徹底して商品開発に活かせるように作っています。
喜多村:昔は販売員が接客しながら、例えば「このお客様は何人家族で、こんな嗜好がある」といった情報を顧客リスト化していましたが、いつどこで何を買ったのかということまでDX化されるわけですね。
岡留:ええ、大事なのは、商品と顧客の分析をしっかり行うことです。顧客の欲しいものがその店にあることが大切で、なければ他店からすぐに用意できる、あるいはECサイトからすぐ買えるということですね。
喜多村:ディー・ティー・ピーという会社は岡留さんが一人で立ち上げたベンチャーですよね? こうしたシステムは何年前から手がけているのですか?
岡留:30年前くらいじゃないかな。だいぶ早いですよ。スマホもない時代ですから。大手の富士通さんやNECさんもそういうシステムは開発していませんでした。
喜多村:何がきっかけだったんですか?
岡留:創業したのは36年前になりますが、当時、アパレル業界の商品管理は、光で数字を読み取るOCRだったんですね。私はバーコードを付けて管理しないと分析ができないと思い、特許を取ってバーコードで管理する体系を徐々に広げていったんです。当初は服屋さんや靴屋さんから「おしゃれな商品にあんなヒゲみたいなの付けられるか」みたいな抵抗もありましたが、バーコードの方がやはり便利だということで、今ではオンワードさんやワールドさんも、私の考えたバーコードの体系を採用しています。
喜多村:今ではもうバーコードが当たり前ですよね。
岡留:当時のアパレルは、上代をゴム印で押して、値下げするときはシールを貼ってというように全て手作業だったんですが、当社のシステムは「7月25日から20パーセントOFFにする」とコンピュータの中で設定すれば済む。25日にその商品をPOSレジに持っていけば自動的に25パーセント引きになります。
喜多村:ある店舗だけ先行してセールするようなこともできるわけですか?
岡留:もちろんです。衣料品のセールは南の方から1週間ずれで北上してきますからね。それと店を開けながら棚卸しができるのもバーコードのメリットです。私はシステム系ではなく営業の出身なのですが、アパレルの在庫照会や移動、棚卸しを、誰もが正確にできるようにしたいと常々考えていて。それらを検証しながらシステムに組み込んでいったんです。
喜多村:なるほど。今、日本のGDPはインドに抜かれそうになっていて、一人当たりの名目GDPも40位近くにまで落ち込んでいます。なぜかと言えば、今までの日本の生産性というのは残業で保たれてきた面がある。それが今、働き方改革で早く帰るとなると、その分、生産性は落ちてしまう。本来、DXはそこをリカバリーするものですよね。「作業」はAIやシステムに任せて、出てきた結果を分析するような「仕事」をするのが社員の役割のはずです。
岡留:そうですね。でも、今でも多くのシステムは日本型の縦割り社会の弊害が残っているのが現状なんです。お店の在庫、ECの在庫、こっちには卸しの在庫、そしてこっちは倉庫業者の在庫と、データベースが何個もあってバラバラなんですよね。当社の場合、お店もECも倉庫業者の在庫も、データベースは1個なんです。ふつうはデータを引っ張ってきて、それを倉庫に送るわけですが、うちでは倉庫屋さんにIDとパスワードを発行し、倉庫屋さんが見に来るようになっています。データベースを自社内だけでなく、協力企業も見ることができるので、ピッキングリストも納品書も不要になります。
喜多村:昨今、物流の2024年問題と言われてますが、ドライバーさんの労働時間が規制されると、その物流コストは企業の純利に影響するし、お客さんにとっては価格に反映されます。生産者から末端まで、いかに情報を一元化して無理・無駄をなくすかってことが重要になりますよね。
岡留: そうですね。1社1社で何とかしようとしても無理でしょう。我々も今、このシステムをアパレル以外にも広げられるよう活動していますが、他業種でもいろいろな企業やセクションで同じデータを使う方が無駄を省けますね。
喜多村:ほかに御社のシステムが他社より優れている点はどんなところでしょうか?
岡留:他社さんのシステムの多くはデータが分かれているので、コストもかかるしデータの連携を取らないといけない。要はバッチ処理による連携なんですよね。当社ではお店がお客さんにポイントを付与するサービスも行なっていますが、うちのシステムなら、例えば来店ポイントとして1000ポイント差し上げたとしたら、そのポイントを使ってその場で買い物することができます。これがバッチだとできないんですよ。
喜多村:そうなんですか! あの「ポイントは次回から使えます」というのは来店の動機付けだと思ってましたが、そうじゃないんだ。
岡留:バッチだと夜にコンピュータが一括で計算処理して、朝に数字が出るので、翌日にならないとポイントが付かないんです。ECサイトで付いたポイントをその日のうちに店舗で使おうと思っても使えません。
喜多村:そういえばコンビニのポイントカードなども、その場では反映されませんね。
岡留:航空会社のマイレージもそうですよね。まあ、だいたいのシステムが縦割りで作られているので、そこの情報をすぐ利用することができないわけです。でも、そこで今、何かが起きたのであれば、リアルタイムですぐ使えるようにしないと次のアクションには繋がらない。サッカーの試合でも、パスを受けてボールを持ったら、ゴールを狙うか別の選手にパスを出すか、ドリブルして前へ行くか、全部リアルタイムで動いてるじゃないですか。バッチで3分待ってからボール蹴るなんてしてたら負けちゃいますよね。
喜多村:御社のシステムはタイムラグがなくて一気通貫なんですね。リアルタイムで処理するとなると、コストも高くなるのでしょうか?
岡留:トータルコストで言えば、汎用メーカーの大手のものよりは安いです。ただ、他社さんがサーバーを1個で回しているところ、私どもは1つが故障しても大丈夫なようにノンストップのサーバーを2つ稼働させています。データベースサーバーが2本、アプリケーションサーバーも2本、webサーバーも2本、つまりサーバーが6個あるんです。そうしてスピードや安全性を高めているため、サーバー費用だけ高いという特徴があります。
喜多村:今回の対談では、皆さんに「これから求められる人財」について伺っているのですが、岡留さんはどうお考えでしょうか?
岡留:当社が求めるのは、どんなこともコツコツとやる人、そして柔軟性のある人。訓練によって創造力が発揮できるようになる人です。現在、当社ではシステムの拠点をマレーシアに移しているのですが、マレーシアの平均年齢って28歳なんですよ。そうした年代の若い人たちは、やはり柔軟性も創造力もあるし、スピード感もある。平均年齢が50歳近い日本で募集をかけてもなかなか応募が来ないのですが、マレーシアではいい人財を採用することができています。
喜多村:人件費はマレーシアの方が安いですか?
岡留:まだ安いですね。それと、当社のシステムは20年くらい前からイタリアやフランス、イギリスのお客様にも使ってもらってるのですが、日本で開発していましたから日本語のみだったんです。それをCSVで書き出して、エクセルにイタリア語やフランス語、英語を入れて使っていた。マレーシアで開発することで、近い将来、英語版も展開できると思います。
喜多村:日本で培ったノウハウのうち、開発をマレーシアに持って行って、そこからワールドワイドに展開するわけですね。最後に今後のビジョンについてお聞かせください。 岡留: 今、当社では「3階層システム」というものを作っています。データベースサーバーにはデータが入っているだけで、その仕事は必要な情報を探し出すだけ。その隣のアプリケーションサーバーにはプログラムが入っていて、データベースから引っ張り出された数字を計算するだけ。そしてクライアントは集計された数字をパソコンに送って表示するだけ。データを探すだけの人、計算するだけの人、表示するだけの人に分かれた三権分立の構造にすることで、スピードが圧倒的に速くなり、ポスレジが何台ぶら下がってもダウンしないといったメリットがあるんです。このシステムは特許も取っているのですが、世界中どこにもないんですね。これをアメリカのドラッグストアのような大規模なところに持っていきたいと思っています。
◆岡留嘉伸(おかどめ よしのぶ)
株式会社ディー・ティー・ピー 代表取締役
株式会社ディー・ティー・ピー
所在地:東京都港区赤坂2-14-5 Daiwa赤坂ビル 3F
URL: https://www.dtpnet.jp/
◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長
一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/