デリケートゾーンのケア、きちんとしていますか? あまりよく分からない、そもそもケアって何・・・? そんな人がほとんどではないでしょうか。今回は、女性の体や人生に深く関わる、一番大切な部分であるデリケートゾーンについてのお話を、今年7月に著書『潤うからだ』を上梓したばかりの森田敦子さんに伺いました。
そもそもデリケートゾーンのケアって何? どんな効果があるの?
− Tonoel編集部(以下T)
デリケートゾーン、というと、なんとなく大っぴらに話題にできない印象がありますが、最近はデリケートゾーンをケアする商品を以前よりお店で見かけるようになりました。
コスメの延長で気になるトピックではありましたが、私自身もそのケアの重要性がイマイチよく分かっていません。デリケートゾーンのケアは、そもそも必要なのでしょうか?
− 森田敦子さん(以下森田)
デリケートゾーン、いわゆる“膣まわり”のことなのですが、日本では長い間、この“膣まわりのケア”の認識自体がありませんでした。ただ、江戸時代までは、月経小屋という、生理期間中の女性が集まって寝泊まりしていた小屋があって、年配の女性が若い女性に、生理や膣まわりのケア、女性の体や性について、色々なことをオープンに教えていたんです。
それが戦後、生理が不浄のもので、性に関して話すことも恥ずかしいことになってしまったため、デリケートゾーンや女性性についてきちんと教えてくれる人がいなくなってしまったんです。
− T
では、デリケートゾーンのケアは特別なこと、というより元々あった当然のことだったんですね。
− 森田
そうなんです。その証拠に海外、特にヨーロッパではものすごくオープンに語られていて、ママが娘に膣まわりのことから性についてまでしっかりと教育しています。デパートにも化粧品と一緒に、デリケートゾーンのケア用品がずらりと並んでいるくらい。
− T
具体的にデリケートゾーンのケアとは何でしょうか? 海外では当然のことのようですが、今まであまり意識していなかった日本人の私たちとしては、ケアしてもしなくてもいいような気がしますが(笑)、デリケートゾーンのケアの重要性とは何でしょうか?
− 森田
デリケートゾーンの具体的なケアとしては、まずは専用のソープで清潔にする。それから、保湿したり、筋力をつけたり、アンダーヘアのケアをしたり、ということなんですが、これらのケアが女性の体の様々な不調や、パートナーとの関係、女性の幸せにも関わってくるんです。
− T
女性の幸せ、もですか?
− 森田
はい。体の不調にまつわる話は後ほど詳しくお話しますが、単純にムレやかゆみなどが改善されるといった話だけではなく、ケアするに当たってデリケートゾーンについて知ることは、性について意識することにもつながるんです。
日本では、性やセックスについて、パートナーや友人、ましてや家族などとオープンに話をしませんよね。
私はフランスの大学で植物薬理学を学んだのですが、そこで“セクソロジー(性医学)”を教わりました。薬草学と性がつながっていることがまず驚きだったのですが、植物の効き目云々よりも、それを受け取る体の状態について詳しく調べるのも興味深くて。
食事や睡眠以外にも、パートナーとのセクシャリティの相性、セックスして快感を感じているか? パートナーがいないときは、自分でセクシャルケアができているか? なんてことまで調べるんです。
フランスでは医学的にも極めて冷静にそういったことが教えられるので、家庭で教えたり、パートナーや友人同士でもあっけらかんと話し合うことができる。
特に、性についてもっとオープンにパートナーとも話せるようになることは、自分や相手の希望を伝えあって、体の相性を高め合うこともできるようになるということ。それって、充分、女性の幸せにもつながりますよね。
女性の体の様々なお悩みを解消する、デリケートゾーンの潤い力とは?
− T
デリケートゾーンをケアをすることで、女性の体のお悩みが改善しやすくなるというお話ですが、そもそもケアができていないために不調が起こっているとも言えるのでしょうか?
−森田
まず、ケアをしていないデリケートゾーンの状態というのが、衛生状態も良くないですし、カサカサと乾燥していて皮膚が切れやすくなったりしますね。するとデリケートゾーンがどうなるかというと、ムレやかゆみ、臭いなどの不快な症状が出たりします。
それから、乾燥しているということは、本来粘膜によって潤っているべき膣から、粘液がきちんと出ていない、ということ。
この“粘液”がとても大事で、フランスでは「粘液=免疫力」とも言われているほど。顔のお手入れと同じように、洗った後にきちんと保湿してあげると、デリケートゾーンが柔らかくなって“粘液力”が上がるんですよ。
粘液の分泌は、不妊症、更年期障害、鬱などにも深く関わっていると医学的にも証明されはじめています。
また、デリケートゾーンの粘液が充分に出ないということは、子宮の状態やホルモンバランスにも関わりますので、“老化”のスピードが一気に加速する、ということでもあるんです。
− T
老化もですか!? 顔の保湿も大事ですが、お話を伺っているとむしろ、顔よりもデリケートゾーンの保湿の方が大事なような気がしてきました・・・・・・。
−森田
世界的な産婦人科医で、私の植物療法学の師でもあるフランス人のアルナール先生も、「いつまでも粘液を分泌できる、潤いと弾力のある膣を維持することは、どんな高級な美容液よりも、アンチエイジング効果がある」とおっしゃっていましたよ。
−T
実際にデリケートゾーンのケアを始めたことで、体の変化を実感された方は多いですか?
− 森田
月経痛が和らいだ、妊娠した、通常のムレやかゆみが本当になくなった、セックス時に濡れにくかった人が濡れやすくなった、などなど、本当に体が変わったと感じている方が、たくさんいらっしゃいます。今まで全く意識してこなかった手付かずの場所ですから、ケアした効果を実感しやすいのでしょうね。
〜膣まわりケアの効果〜
1) ムレ、かゆみ、臭いの解消
2) 生理痛の軽減
3) 免疫力アップ
4) ホルモンバランスを調整する
5) セックスレスの予防
6) セックスで快感を得られるようになる
7) 妊娠しやすくなる
8) 出産がラクになる
9) 産後の回復が早くなる
10) 更年期障害の緩和 など
デリケートゾーンの効果的なお手入れ方法
森田さんがプロデュースする、オーガニック素材から生まれたデリケートゾーン専用のスキンケアアイテムたち。奥左から:保湿やセックス時の潤滑剤としても使えるアンティーム ローズ ローション 100ml ¥3,240、同ホワイトクリーム 100ml ¥2,808(ともにアンティーム オーガニック)、膣マッサージに使用できるバーシングオイル 30ml ¥10,800(インティメール)、オーガニックの弱酸性ソープ。アンティーム フェミニン ウォッシュ 100ml ¥2,160、手前:外出先で使えるデリケートゾーン用ウェットシート。同ハイジーンシート 12枚入り ¥1,620(ともにアンティーム オーガニック)
− T
お話を伺えば伺うほど、デリケートゾーンのケアはもはや必須ということが分かりました(笑)。早速、取り入れていきたいのですが、どんなケアから始めたら良いでしょうか?
− 森田
第一に、清潔にすることですね。ただ、膣まわりはバリア機能のある角質層がないのでとても繊細です。バスタイムにボディソープでゴシゴシと洗ってしまうのは、目の中を石鹸で洗うようなもの。まずは、デリケートゾーン専用のソープを使って、優しく手で洗うというケアを習慣づけてください。
それから、膣まわりは体の中で最も乾燥しやすい場所なので、専用のローションやクリームで丁寧に保湿しましょう。膣まわりの萎縮の改善や予防にもなります。
さらにもう一段階、取り入れて欲しいケアが、オイルを使った膣マッサージ。
− T
膣のマッサージですか? それは少しハードルが高そうですね……。
− 森田
ちょっと驚かれるかもしれませんが、乾燥してシワシワだった膣まわりにふっくらとした弾力やハリが戻り、膣が柔らかくなります。いきなりは難しいと思うので、まずは正しく洗うことと、保湿することから始めれば大丈夫。慣れてきたら、ぜひオイルマッサージにもトライしてみてください。粘液もぐんと出やすくなりますから。
− T
他にも何かオススメのケアはありますか?
− 森田
骨盤底筋群、という言葉を聞いたことがありますか? 子宮や膀胱を支えている筋肉なのですが、ここを鍛える膣トレーニングをすると、妊娠・出産がスムーズになったり、セックス時の膣の締まりが良くなる、なんてことも。尿漏れや子宮脱といった病気予防にもなります。
それから、アンダーヘアの処理。今では脱毛サロンでも、V・I・Oラインの処理がメジャーになりつつありますが、V(前面)は量を少なく形を整えて若干残すとしても、私としては衛生的に考えても、I(膣部分)とO(肛門まわり)のヘアはなくて良いと考えています。
今、脇の毛の処理が甘い人ってほとんどいないでしょう? 脱毛レーザーが医療機器になって値段もかなり下がりましたから、5年後には、皆アンダーヘアもすっかりキレイになっているかもしれないですね(笑)。
〜デリケートゾーンのお手入れステップ〜
1) 専用のソープを使って洗い、清潔に保つ
2) クリームやオイルで保湿・マッサージをする
3) 膣トレーニングで筋力をつける
4) アンダーヘアを処理する
デリケートゾーンとセックスレスの関係。粘液力を高めることは、幸せな生き方にもつながる?
− T
お話を伺っている中で、セクシャリティについて知ることの重要性が出てきましたが、最近、“セックスレス”というキーワードもよく聞かれます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
− 森田
“セックスレス”、最近本当に多いですよね。夫婦間でのセックスレスだけでなく、20代や30代で恋人がいても「面倒くさい」「性欲がわかない」という理由でセックスをしない人や、仕事ばかりしていて全くそういう気が起きない、という人もすごく増えています。
本来、“性欲”は食欲や睡眠欲と同じ本能の1つですから、「セックスしなくても全然平気」という状態は、体の状態を心配してあげないといけないサインです。
− T
なるほど。では、本能的な欲求であるにもかかわらず、なぜ今、性欲がわかない人が増えているのでしょうか?
− 森田
ストレスやホルモンバランスの乱れ、環境など様々な要因が絡み合っていますが、大きな理由の1つとして言えるのは、膣の乾燥からくる萎縮によって粘液が出にくくなっていることがあります。
膣が乾いて濡れていないと、性交時に痛みを伴いますから、心理的な抵抗感が生まれますよね。そうするとセックスが気持ち良いどころか、苦痛だったり、億劫になって自然と積極的に行いたいものではなくなります。すると、セックスによって粘液力を高めるチャンスもなくなりますから、ますます乾いた膣になり、悪循環に。
性を抑え込んだ状態が続くと、幸福ホルモンが出にくくなってしまうので、これはものすごくもったいないことなんです。
− T
セックスしないと、幸福ホルモンが出ない??
− 森田
女性の体は、パートナーとの肌の触れ合いや、セックスによってエクスタシーを感じると、脳から“β-エンドルフィン”“オキシトシン”という幸福ホルモンが分泌されるんです。
このホルモンが分泌されると、イライラしたりカリカリしたり、といったストレスが吹き飛んで、ゆったりと穏やかになり、幸せな気持ちでたっぷり満たされます。定期的にこの幸福ホルモンが得られると、自然と周りの人にも優しく愛を注げる人になれる。
これは、仕事の成功や高価なジュエリーを買ったからといって出てくるものではないんです。体と体の触れ合いによって出てくるもの。幸せに生きる1つのコツとも言えますから、これを手にしないのは本当にもったいないですよね。
パートナーがいない人は、ぜひセクシャルセルフケアを取り入れてください。健康的な心と体のバランスのためにも、自分でエクスタシーを起こして幸福ホルモンを出すことは、決して恥ずかしいことではありませんよ。
− T
仕事の充実感やお金では手に入らない、心も体も満たされた幸福感はすごく大事なこと、そして女性が真に求めていることだと思います。そういった意味でも、デリケートゾーンのケアで粘液力を高めていくことはとても大切なんですね!
− 森田
デリケートゾーンをケアすることは、女性性を大切にすること。それは、自分の魂を大切にすることにもつながると思いますので、ぜひこれからは皆さんにも取り入れていただきたいと思います。
***予想以上に奥が深いデリケートゾーンにまつわるお話。お手入れからセクシャリティ、さらには女性の幸せにまでつながる貴重なストーリーは、今後、日本の女性の大きな意識改革になるのでは?と思いました。具体的なケアの仕方やもっと詳しくデリケートゾーンについて知りたい方は、森田さんの著書『潤うからだ』をどうぞ。
情報提供元: Tonoel