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実験で同じ状況を再現してもらいました。動き始めて技が決まるまでは1.8秒。その間、高藤直寿選手はどんな判断をしていたのか、分析した映像を見ながら本人の話を聞きました。
袖釣り込み腰を仕掛けると同時に、相手は防御しようと後ろに下がっていきます。その瞬間、高藤選手はとっさにこの技をあきらめて、相手をつかんでいる左手を離しました。
高藤選手は「一歩目を踏み込むところで、自分の思い描いていた動きを相手がしないのがわかっていて、袖釣り込み腰じゃ行かないだろうなというのをわかりながら入っている」と解説します。
手先から伝わってくる感覚で投げられないと判断した高藤直寿選手は、その瞬間、次の手に移ったといいます。「背中を持って投げる背負い投げみたいな技があって、それにも行けるという判断があった」のです。
一方で「逆に振り返ってしまって、完全に防御できない状態にして、相手の頭を下げながら投げることによって、相手の一番防御できない部分に投げる」ことを考えたといいます。「どうすれば一本取れるか、背中が付くのかを考えながら、一瞬一瞬動いている」と振り返っていました。
高藤選手の1.8秒では、足を踏み込んだ瞬間に技が決まらないと見切りました。その直後、柔道着をつかんでいる手先からの感覚で、相手の重心がどう動いているかを察知。相手の重心が動いていく方向に向かって技をかけていたのです。