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現在は弟の後藤文利さんが創業200年以上になる和菓子店「萬菊屋」(まんぎくや)を主に担当し、兄の後藤昌利さんが萬菊屋のパティスリー部門として2015年に立ち上げた洋菓子店「510Maison de CinQ-dix」を担当。
兄弟で力を合わせ、14代続く伝統菓子「萬菊屋」の伝統を継承しながら、和菓子造りで培った技術や経験をフルに生かして独自の洋菓子を生み出しています。
「510 Maison de CinQ‑dix」はモダンでシックなたたずまい。中に入ると清潔感と温かみを兼ね備えた空間が広がります。
木目を生かしたカウンターの横は、焼き菓子と一緒にナチュラルな木製じゅう器や植物なども飾られてライトアップされており、まるでアートギャラリーを思わせる洗練された空間。
兄の昌利さんは萬菊屋の代表取締役を務めながら、「510 Maison de CinQ‑dix」のシェフパティシエとして商品開発しています。
「和菓子には春に柏餅、初夏には若鮎、秋には亥の子餅‥と、季節ごとの菓子があって、それぞれに意味があります。
“暦で菓子を作る”のが和菓子の魅力の一つで、その季節性は洋菓子の方にも取り入れて、季節の果物などをふんだんに使っています」と昌利さん。
ショーケースの中には旬を感じさせるケーキやタルト、プリンなどがずらり。宮崎マンゴー、メロン、ブラックベリー、パッションフルーツ‥艶やかなフルーツが美しく並び、どれも芸術作品のように精巧な美しさ。
実際に味わってみると、見た目の期待以上のクオリティの高さと、余韻まで美味しさが残る、心に響く後味。唯一無二のおいしさに、一瞬で幸せな気持ちに。
一方で、 昌利さんは洋菓子の魅力も語ります。
「和菓子ではどら焼きの生地を焼く際に、 160 度なのか 180 度なのか、 その温度管理は手をかざして感覚で覚えたりするので、 長年の修業を重ねてこそ、熟練の職人技が身につきます。
それも素晴らしい技術で、フランス菓子でも通ずるものはもちろんですが、分量や時間などの製造数値をしっかり管理して、製菓理論に基づいて作り上げていきます。
また、機材の進歩に合わせて、働き方もこの10年でだいぶ変わりました。この現代的な製造方法や新技術をできるだけ取り入れています」。
昌利さんは和洋の両方の良いところ、その技術と経験を融合させて独自のスイーツを表現しているのです。
例えば7月1日(火)から7月末まで全国300店以上が参加する「ダイナースクラブ フランス パティスリーウィーク」(※)に同店も参加中で、今年のテーマスイーツ「サントノレ」にちなんで開発された期間限定の「黒糖と出雲抹茶のサントノレ」は要チェック。
「サントノレ」は19世紀にパリのサントノーレ通りで誕生したとされるフランスの伝統菓子で、円形のパイ生地の上にクリームを絞り、キャラメルでコーティングしたミニシューを飾り付けるのが定番。昌利さんはそこに和素材を使用。
日本最南端、波照間産の黒糖で作ったシューショコラ生地と黒糖のタルトを、香り高い出雲抹茶のディプロマットと黒糖シャンティショコラで仕上げています。
「萬菊屋」で黒蜜をたいてもらって、スポイトで食べる直前に加えるスタイル。普段は和菓子派という人にもぜひ味わっていただきたい新境地のスイーツ。
※「ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク」は、ダイナースクラブが主催する国内最大級のスイーツの祭典。今年、世界で75周年、日本で65周年を迎えるダイナースクラブは、レストラン優待をはじめとしたグルメサービスや、旅、エンタメ、ゴルフなど幅広い分野で会員様をサポートするクレジットカード。
さらに母の日や父の日の時季にはカーネーションに見立てた美しい洋菓子も販売。鉄板に薄くチョコを広げ、繊細な薄さを保ちながら削って花びらにしたもので、思わず見とれてしまいます。
繊細なデコレーションや魅力的な彩りなど、細部に職人の技を感じられ、感性が刺激されます。それは「萬菊屋」の繊細な飾りの入った上生菓子にも通じます。
「510Maison de CinQ-dix」の隣には「萬菊屋」の伝統的な和菓子も並んでいて、同じ屋根の下で行ったり来たりしながら、和洋の菓子を見比べる特別な体験ができます。
同じ初夏の季節でも、和菓子では鮎で表現、洋菓子では完熟マンゴーやメロンで表現しており、見ているだけで感性が磨かれ、楽しいひととき。
しかも「萬菊屋」側の店内には江戸時代に使われていた木型がたくさん壁に飾られています。
菊や桜、梅をかたどったと思われる、和菓子の木型はなかなかお目にかかれない伝統的工芸品であり、ぜひ次世代を担う子供たちにも見せたいもの。
祖父が和菓子店を、父親はレストランを忙しく運営していた環境で育った後藤兄弟。兄の昌利さんは、当時を次のように振り返ります。
「和菓子店は開店する前の仕込みがまるで戦争、でも出来上がった菓子を売り場に並べてしまえばひと安心。
一方レストランは開店前の仕込みも大変だけれど、営業してからもお客様のタイミングに合わせて柔軟に対応する必要があって、こっちも大変。でもそのライブ感が幼い私には、とてもかっこよく思えた」。
昌利さんは菓子の基礎を専門学校で学んだ後、さまざまなコンクールで受賞歴のある巨匠 柳 正司氏の「パティスリー タダシ ヤナギ」(東京・八雲、神奈川・海老名)などで本格的に学び、フランスに渡って山形にUターンしました。
朝一番で開店すると、予約したホールケーキを取りに来る常連客が続々と入店。地元・山形の素材をふんだんに使って、お客様の要望に最大限に対応した入魂のケーキが笑顔で手渡されると、地元のお客たちも満面の笑みに。
幼い頃に兄弟がレストランで見てきた“ライブ感のある温かい接客”が今も息づいているのでしょう。
赤湯温泉で一番歴史のある地元の菓子店「萬菊屋」と「510Maison de CinQ-dix」。ぜひ東北旅行の際に足を運んでみてください。
あんバタークロワッサンや、数量限定の朝焼きクロワッサンなどベーカリー、カフェメニューなどもラインアップしており、ドライブの途中に気軽に寄る休憩スポットとしてもおすすめです。
510Maison de CINQ-dix (メゾン・ド・サンクディス)
住所:山形県南陽市若狭郷屋728-1
最寄駅:J R赤湯駅(駅から車で5分)
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日・火曜日
テイクアウト:可
イートイン:不可(入り口付近に屋外テラス12席あり)
電話番号:0238-43-2066
駐車場:有り、約12台分