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■「パーソナルスペース」に侵入されて不快感
狭いエレベーターで知らない人と二人きり……数十秒程度のことだとしても、ちょっと気まずい時間ですよね。筆者の事務所のあるマンションのエレベーターが、それはもう狭くて狭くて、面識のない他の住人と鉢合わせると、目のやり場に困ってしまって、ついつい階数表示ランプを見上げるというのがお決まりです(笑)。狭いエレベーターで他人と一緒になったときや、満員のエレベーターに乗ってしまったときなど、ついつい階数表示ランプを凝視してしまう……そんな経験、みなさんにもありませんか?
これって実は「パーソナルスペース」の問題なんだそうです。
自分のパーソナルスペースに侵入されたことへの不快感をまぎらわすために、エレベーターの回数表示をじっと見つめる……。他にも通勤ラッシュ時の電車内で、目をつむっている人が多いのも、同様にパーソナルスペースに侵入された不快感をまぎらわせているそうです。
パーソナルスペースとは、一言で言うと誰もが持っている“心理的な縄張り”のことを指します。
知らない人が自分の近くに来ると不快に感じる。これは“他者にそれ以上近づいてほしくない”という、心理的な縄張り意識を持っているからなんだそうです。そして、この心理的な縄張りのことをパーソナルスペースと呼ぶんですね。
相手のことを何も知らない場合、その人が自分に危害を加えるかもしれない……だから必要以上に近づいてほしくない。そう考えるのは、動物が本来持っている本能的な心理。
ちなみに国民性の違い、社会的・文化的な違い、性別の違いによってパーソナルスペースは変わってくるそうです。一般的に、男性が持っているパーソナルスペースは前後に長い楕円形であることが多く、女性が持っているパーソナルスペースは円に近いことが多いんだとか。
もちろん、パーソナルスペースは見知らぬ他人に対しては広くなるものの、家族や恋人や親友など親しい人物に対しては狭くなるんだそうですよ。
アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、相手との関係性にもとづいたパーソナルスペースの距離を、次の4つに分類しています。
【密接距離】0~45cm/家族や恋人などもっとも親しい相手
【個体距離】45~120cm/友人や同僚など、そこそこ親しい相手
【社会距離】120~350cm/上司や取引先などの相手
【公衆距離】350cm以上/講演会などでの話し手と聞き手との距離
パーソナルスペースという概念を意識すると、このストレス社会の現代でも、少しだけ生きやすくなるかもしれませんね。
【関連書籍】誰にも覚えがあるヘンな感覚の正体(KAWADE夢文庫)