通信販売大手のジャパネットグループが、自社の中途採用における選考プロセスに応募者の自己紹介動画を導入することを発表しました。



 



その背景について、同社の広報は「応募者の熱意や想いをくみ取りたいからで、特に当社の姿勢に対する“共感”や“将来の夢”を知りたい」と説明しています。具体的には、入社希望者が専用アプリで応募登録をする際に動画の提出も求めていて、書類審査にあたる一次選考に活用する意図のようです。



 



書類審査の場合、そこで学歴や職歴は分かっても気持ちや熱意はなかなか伝わってこないため、会社理念やビジネスモデルに共感していない人材が審査を通ってしまうことがあったそうで、それを事前に知りたいという目的があるようです。



 



 



■自己紹介動画で採用のミスマッチは減る?



 



この動きに関するコメントとして、動画は応募者が持っている「空気感」「雰囲気」が伝わるため採用のミスマッチを減らす効果が見込める……という話があります。採用面接では、初めの数分で自社に合う人材かどうかが概ねわかるので、動画であればそれと同じ効果が認められるだろうということです。



 



ただ、私はこのミスマッチ回避に関しては、そこに期待し過ぎても、必ずしも思った効果は得られないという立場です。特に「自撮り動画」というものは、いろいろな動画の中でも特殊性があるものだからです。



 



私自身の経験で言えば、例えば目の前にいる「人」に対して話すのと、誰もいないところで「スマホ」に向かって話すのとでは心構えが大きく違います。私の場合、人前でお話をする機会は多いので、人から見られることや話すことには慣れていますが、これがカメラやスマホ相手となると、そう簡単には行きません。



 



撮影してくれる相手が目の前にいるならまだしも、自撮りとなると完全な一人語りの状態になります。私はモデルやタレントではないので、カメラに向かって感情をあらわすことには慣れていません。「自撮り動画」を撮るにはそれなりのテクニックが必要ですし、個人の性格による得手不得手が結構大きく出るでしょう。演技経験でもなければ、動画で熱意を表現するのは難しく、たぶん私にはできません。



 



よって私では応募資格がないこととなりますが、会社の意図は、こんなハードルを作ることで“入社意欲の高い人だけに応募してほしい”というニュアンスが強いのではないかと思います。



 



 



■動画と紙、どちらの情報が優れているか



 



例えば、何か商品を買おうとしたとき、紙のカタログとCM動画のどちらを重視するかというと、そこは何とも言えないはずで、その人のとらえ方によっても違います。



 



動画の方が感覚的にとらえやすいですが、じっくり確認するということでは紙媒体の方が優れていますし、特にCM動画は売りたい側の意図に基づいて作られたものなので、それがその商品のすべてを示したものではありません。カタログはその物の実感がとらえにくいですが、手元で文字を見ながらじっくりイメージすることができます。どちらか一方よりは両方があった方が、より理解しやすいことは間違いありません。



 



採用活動でも、応募資料に動画があれば、同じように理解を増す効果は、確かにあり得るでしょう。動画が活用される機会は、これからどんどん増えていくでしょうが、それだけに集約することは考えられません。動画がバーチャルに進化したり、紙媒体が違う形に変化したり、その他用途に応じた表現方法がいろいろ開発されるでしょう。



 



採用活動では、世の中にそんな動きがあることは認識しつつ、あくまで自社の目的に合った方法を考えて行かなければならないのではないでしょうか。


情報提供元: citrus
記事名:「 ジャパネットが中途採用に“自撮り動画”を導入! その狙いとは?