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有料道路ではなぜお金を支払うのか。クルマを運転する人なら多くの人が知っているだろう。建設費用をまかなうためだ。
国土交通省の資料によれば、日本の有料道路制度は1952年に創設された。終戦直後で財政的に厳しい中で道路整備を進めるために、国や地方公共団体が資金を借り入れ、道路の利用者から料金を徴収して返済に充てる制度だ。4年後には道路整備特別措置法が制定された。
税収が安定してからも、同じ区間に無料の国道や県道など代わりとなる道路があり、建設によって多くの人に利便性をもたらす場合は、国土交通省と国あるいは地方自治体の認可によって有料道路が作られてきた。
現在有料道路は、都市高速道路や本州四国連絡高速道路を含めた高速道路と、それ以外の一般有料道路に大きく分けられる。いずれも利用者の料金によって建設資金の返済が終わった際には無料になるとしている。
高速道路については2005年の日本道路公団民営化の際に45年と決められたが、その後15年プラスされたので2065年に無料化される計画だ。一方の一般有料道路は、建設時に償還期限を申告する決まりになっている。なので建設費の返済を終えた有料道路は原則的に無料になる。筆者が住む関東地方でも、開通当時は有料だった日光いろは坂、碓氷バイパス、奥多摩有料道路、箱根新道などが通行料金不要になっている。
そんな中、一度は無料化された道路が、再び有料化されようとしている事例がある。1985年に開通し、2014年から無料になっていた福岡県の国道201号線八木山バイパスだ。筑豊地域と福岡都市圏を結ぶ国道201号線のうち八木山バイパスだけが2車線で(一部登坂車線あり)、無料化によって朝夕を中心に渋滞が発生し事故も増え、車線をふさぐ事故が発生すると長時間身動きが取れなくなることもあった。
そこで福岡県の小川洋知事は2018年、問題解決には4車線化が必要であり、早期整備に向けて有料化も検討に入れた整備をお願いしたいと国土交通省に要望。国交省はこれを受けて有料化による4車線化の検討を始めたという。八木山バイパスはもともと4車線で計画されていて、用地は買収済みであり、一部の橋の基礎工事も済んでいるので、着工から約5年で完成するという報道もある。その八木山バイパス、2014年以前にも一度無料になったことがある。民主党政権時代の高速道路無料化政策の社会実験路線として選ばれ、2010年から1年間、通行料金不要になっていたのだ。
高速道路無料化の政策は、翌年東日本大震災が起こったことで、財源を震災復興対策に回すという名目で凍結された。もし震災が発生せず、政権交代もなかったら、すでに無料になっていた可能性もある。たぶん4車線化に際してもそのままだろう。
それに社会実験中にも、相応の渋滞には悩まされていたはず。なぜそのときの経験を生かして、4車線化を前提に償還期限を先延ばしするなどの措置を取らなかったのか疑問だ。無料になったり有料になったりを繰り返しては、利用者の政治不信が募ってもしかたがない。
ただし世界的に見れば、最近の流れは有料化だ。先進国で高速道路が無料の国というとドイツと英国、米国を思い出す。ただしドイツのアウトバーンは大型トラックについては少し前から有料になっており、乗用車についても有料化の議論がある。英国のモーターウェイ、米国のフリーウェイは原則無料だが、近年整備された道路は有料としているところも多い。英国で言えばロンドンに入る車両に課金するロードプライシングも一種の有料化だ。
自動車交通が地球環境に悪影響を与えていることは言うまでもないし、一部の人しか利用しない高速道路やバイパスを住民全員が支払う税金で整備するのは不公平だと考える人もいるだろう。それに道路は作れば終わりではなく、後々の補修なども必要になる。目先の損得勘定にとらわれず、長い目で見た判断を望みたい。