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手足が冷たい、手先や足先が温まらない、手足は冷えるのにのぼせる……といった症状はありませんか?冷え症は体のあらゆるところに影響し、免疫力を下げてしまいます。この記事では、冷え症の原因と対処方法について現役薬剤師が解説します。
冷え症とは季節や体調に関係なく、体の部位、あるいは全身が温まらない状態のことです。
冷え症は、1年中寒い、体全体は温かいが手足が冷たい、指先が冷たい、下半身は冷たいが頭はのぼせる、冷房にあたると具合が悪くなる、下痢しやすい、などさまざまな症状があります。
冷え症には自律神経の乱れや生活習慣などといった多くの原因があります。原因別に詳しく解説します。
体温調節には自律神経が関係しています。自律神経が乱れると、血液の循環が悪くなり冷えを感じやすくなります。またストレスにより体温を保つ力が弱くなります。
貧血になると血液量が少なくなり、血液の循環が悪くなります。また体のエネルギーを作る働きが弱くなり、体を温めにくくします。
睡眠時間が減ると、自律神経が乱れやすくなり、体温調節がしにくくなります。また体のエネルギー生産が低下して体を温めにくくしてしまいます。
運動不足により、血流が悪くなり冷えが生じやすくなります。また筋肉により血液の循環が良くなるので、筋肉量が減ると体が温まりにくくなります。食事は脂っこいものや甘いものを摂りすぎると体が冷えやすくなると言われています。
体が冷えていることにより、さまざまな病気を引き起こしやすくなります。月経不順、PMS、不妊、肩凝り、腰痛、頭痛、腹痛、耳鳴り、めまい、リウマチ、アトピーなど、数えきれない程沢山あります。
冷え症の改善には色々な方法があります。今から出来る対策をお伝えしますので、体のめぐりを整えて、冷え症を良くしていきましょう。
ぬるめの湯船に20分程つかりましょう。熱いお湯だと冷えた血液が体を一気にめぐり、気分が悪くなってしまうことがあるので注意してください。湯船につかる時間がない方や、体力があまりない方は、桶にお湯を溜めて足湯をするのもおすすめです。
ふくらはぎは体の第2の心臓と言われています。ふくらはぎをマッサージすることで全身の血流が良くなり、体を温める効果があります。また指先を押してマッサージするのもおすすめです。指先は細い毛細血管が沢山あり、血流が悪くなりやすいところです。優しく押してみましょう。
体が冷たい時は外から温めましょう。温めた血液が全身に流れるように、温める部位やツボを意識することも大切です。おへその下や、尾てい骨の上辺り、肩甲骨の間がおすすめです。上半身がのぼせやすい方は、手足の末端を温めましょう。
冷え症の中でも、睡眠障害が起きてしまう方は多いです。早寝早起きや朝日を浴びることは対処方法として有効です。睡眠をきちんととると自律神経が整い、冷えを改善しやすくなります。最近はテレワークで運動不足な方が増えています。運動不足は冷えの原因になります。手足を伸ばしてストレッチをするだけでも改善につながりますので、是非やってみてください。
甘いもの、脂っこいものを控えるようにしましょう。糖質・脂質の代わりに、タンパク質や野菜を取り入れてください。タンパク質は体を温めるエネルギー物質です。野菜は体を温めたり、血液をサラサラにして血流を良くする作用があります。体を温める作用のある野菜は、茄子や生姜といった冬の野菜と言われています。逆にトマトやきゅうりなどの夏の野菜は体を冷やす可能性があるので注意してください。パンなどの小麦製品、ビールも体を冷やしてしまうので、気を付けましょう。
鉄分、プロテインの摂取おすすめします。
日本人は鉄分摂取量が少ないとされており、血液検査で貧血と診断されなくても慢性的に鉄分が足りていない可能性があります。鉄が欠乏すると血液量が減り、血流が悪くなるので、冷えやすくなります。鉄過剰症を心配される方もいるかもしれませんが、食べ物やサプリメントの摂取だけではとてもなりえないので安心してください。
プロテイン(タンパク質)は体の調子を整えるだけではなく、精神安定効果も期待できます。タンパク質が分解されてできるトリプトファンと呼ばれる必須アミノ酸は、メンタル不調を改善する働きがあります。メンタルバランスが整うことでストレスが減り、自律神経を整えて冷え症が改善しやすくなります。食事だけでタンパク質を十分に摂取するのが難しい場合は、プロテインを取り入れてみてくださいね。
好みの香りのハーブティーを取り入れることで、リラックスし自律神経を整えることができます。また生姜など体を温める作用のあるハーブティーを飲むことで、血流を良くして温めることができます。
漢方薬には体を温める作用のあるものがあります。ここでは、それぞれの漢方の特徴について解説します。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
手足など末梢を温め、体の内側も温めます。冷えによって下腹部が痛くなり、下痢をしやすい場合にも使われます。
真武湯(しんぶとう)
疲労感があり、全身の冷えやめまい、耳鳴り、下痢をしやすい方に良い薬です。慢性的な胃腸炎・腸疾患や、かぜが長引いた後の倦怠感にも使われます。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
疲れ気味で、不安感や不眠症状などがある神経過敏な方に用いられる漢方薬です。気のめぐりを整えるだけでなく、体を温める作用もあります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力がある方で、手足が冷えてのぼせる、下腹部が張る、便秘、頭痛、肩こり、めまい、むくみ、にきび、しみなどの皮膚トラブルがある場合に用いられます。冷えのぼせだけでなく、生理や更年期に伴う症状にも使われています。
冷えは体の中を見つめなおすことで改善できます。冷え症というと軽くとらえがちですが、あらゆる疾患の原因になることも分かりましたね。冷え症に悩んでいる方は、日々の生活で取り入れられることからはじめてみてください。治すのに時間がかかってしまう場合もありますが、あきらめず地道に継続していくことが大切です。
参考:熱産生の観点からみた冷え症の生理学的メカニズム 基礎代謝量および筋肉量を用いた検討獨協医科大学看護学部紀要 (1883-0005)13巻 Page41-47(2020.03)
若年女性における経穴刺激セルフケアの冷え改善効果の自律神経機能評価
日本福祉工学会誌 (1344-9273)23巻1号 Page4-10(2021.05)
成人女性の冷え性と栄養摂取量の関係 冷え性を予防する食生活
日本未病システム学会雑誌 (1347-5541)24巻3号 Page22-30(2018.12)
各種膠原病患者に対する日常生活アンケートと自律神経症状調査結果
岐阜県総合医療センター年報 (1882-1057)39号 Page3-10(2018.12)
女性の冷え症状と不妊症との関係について
全日本鍼灸学会雑誌 (0285-9955)66巻3号 Page180-188(2016.08)
個を重視した高齢者医療に果たす漢方の役割 ファーストラインの漢方はどこまで可能か(第39回) 老年症候群以外の高齢者でよくみられる疾患と個の医療を重視したファーストラインの漢方の選択と意義 冷え性・貧血
Geriatric Medicine (0387-1088)55巻9号 Page1045-1048(2017.09)