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住居だった当時の姿をほぼそのまま残した外観に対して、二階建ての屋内は伝統的な町屋の構造を残しつつも大きくリノベーションされた造り。まずは100種の小皿料理が描かれた札が埋め尽くす壁面がひときわ目を引く。
空間デザイン、設計から建築までを自社で行うのが、この店を運営する株式会社ファンインターナショナルのスタイルだ。「最初の店を始めた時から自分たちで店のデザインを考えたり、トンカチを持って内装を手作りしながら経験を積み重ね、創業から30年近い時間をかけて今の形を作り上げてきました。これだけ1から10まですべてを手がけているのは、全国を探しても当社ぐらいだと思います」と同社の福田龍二社長は語る。
同社は京都市の山科区に木工製作所、大阪の守口市に製作工場を持ち、古材を再生したインテリアやオリジナルの看板、什器などを自社で製作。「ほら、これも自分たちで作ったんですよ」と福田社長が指差した木のダクトレールも、山科の工場で作られたここにしかないものだ。
外部に依頼すれば2倍3倍と費用が掛かる部分を社内で行うことでコストダウンを図るだけでなく、自社のこだわりに対して妥協のない空間作りを可能にしている。言い換えれば、店舗そのものがファンインターナショナルの“作品”なのだ。
そうしたコストダウンの徹底は、一皿230円から揃う小皿料理のリーズナブルさにも反映されている。「その日の気分に合わせてお好きなものを選んでいただけるよう、あえてジャンルを絞らずに選択肢の数を増やしました」と福田社長が語るメニューは、鮨、串焼き、おでん、BBQレストランなど多彩な業態を手がける同社のいいところを集めたようなレパートリーの広さ。小皿というコンパクトさを活かし、どの一品もかわいらしい形でまとめられていて、見栄えにも気を遣っていることがよく分かる。
一皿は二人で分けるとちょうどいいくらいのボリュームで、ひとつひとつ異なる柄の小皿に乗せられた料理を「最初はトロすじ大根で、次は抹茶チーズぽてさら、その後はローストビーフを…」といった具合に食べ進めていくと、まるで小さな島を渡り歩くアイランドホッピングを楽しむような面白さがある。
また、もうひとつの売りが、店内の囲炉裏で焼き上げる炉端焼きだ。
炭火でじっくり火を通してふっくら香ばしく仕上げる炉端焼きは、姉妹ブランドの「鮨炉まん」で定評のある自慢料理。のどぐろ、海老、大トロイワシ、銀鱈西京焼などの魚介を中心に、味だけでなく囲炉裏で行われる調理風景を見るのも楽しみのひとつとなる。
酒は「坤滴」「神蔵」「守破離」「日日」など京都の地酒を多数揃えるほか、京都のクラフトビールも扱い、空間、料理、酒と三拍子の京都らしさでじっくりと酔える。
同社では、烏丸駅北東エリアを京町屋や町屋風建築をベースとした美食の町として定着させる「宵の小町」プロジェクトを推進しており、今回の新店をその中心的な存在に位置付ける。
この界隈は、寺町京極、新京極、錦市場と人気の商業エリアと近接しながら比較的静けさを放つエリアで、それでいて築百年を越える古民家の多く集まる地域でもある。そうした中で同プロジェクトには既に30点ほどから賛同の声があるといい、マップなどを作成して情報を発信中。福田社長は「本物の京都を好きな人たちがハシゴ酒で歩いてくれるような、粋で艶のある町に育てたい」と今後の意気込みを語ってくれた。
「100種小皿と炉端 百炉まん」は2025年8月8日オープン。京都に暮らす人はもちろん、観光で訪れる人も、宵のうちが来たら訪れる一軒に加えてみては。
「100種小皿と炉端 百炉まん」
所在地:京都市中京区御幸町通六角下る伊勢屋町334
営業時間:17時~24時00分(土・日曜も同様)
定休日:なし
席数:60席(1階34席 1階26席/テーブル席、半個室含む)
電話番号:075-746-2650