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フランスやイタリアなど、古くからワイン造りが行われていた国に対して、ワイン造りの歴史が比較的浅い国のことを「ニューワールド」と呼びます。近年、ワイン造りがさかんな日本もニューワールドの1つ。その他、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、チリ、南アフリカなどもニューワールドに分類されます。
南半球に位置するニュージーランドは北側が温暖、南側が冷涼な気候の地域として知られていますが全体的にみると比較的涼しい気候でワインを造っている産地。
ぶどうを完熟させて造る濃いワインに対して、ニュージーランドはクールクライメイトと呼ばれる、涼しい気候下で作られるブドウからエレガントで酸味と渋味のバランスが取れたワインを造っていくというのが1つのトレンド。同じような気候の生産地として挙げられるのは、カナダやアメリカ・オレゴン、フランスといったエリアが挙げられます。
主な名産地としてはソーヴィニヨン・ブランの一大生産地「マールボロ」や、国内最古の生産地「ホークス・ベイ」の他「ワイララパ」「ネルソン」「セントラル・オタゴ」などがあります
世界的にみると、やはりニュージーランドワインは「ソーヴィニヨン・ブラン」のイメージが強いですが、国内に目を向けてみるとシャルドネやシラー、メルロー、ピノ・ノワールなども人気の品種。
ぶどう品種に加え、地域によってことなる様々な味わいのワインが楽しめるのがニュージーランドワイン最大の特徴と言えるでしょう。
ワイン醸造家・寺口信生さん
北海道・札幌出身。ホークス・ベイ「Moana Park Winery 」に勤務するワイン醸造家。
山下
寺口さんは、ニュージーランドでのワイン醸造を行う前に日本で面白いキャリア・経歴を積んできた方だとお話をうかがっていますが、どのようなバックグラウンドをお持ちなのですが?寺口さん
確かに、他の醸造家とは少し異なるキャリアの歩み方かもしれませんね。大学で醸造について学んだ後「余市ワイン」に就職して7年ほどワインを造る仕事を行っていました。その後、東京でも醸造を学ぶなど全国各地の方々と知り合いながら、ワイン造りのエキスパートを目指していました。山下
ここまで聞くと、いわゆる王道を歩んでいる気がしますね。寺口さん
実はその後、ワーキングホリデーでニュージーランドに語学と醸造を学びにいったんですが、帰国後は醸造の仕事ではなく「成城石井」の輸入担当として働いていました。その後、成城石井のワインや食品輸入を行う子会社で社長を務めるなど、20年ほど勤務していましたね。山下
え!ワイン醸造の勉強でニュージーランドに行ったのに帰国後は別の仕事に就いたんですか!?(笑)
寺口さん
はい、そこが少し異色な部分と言われる部分でしょうね(笑)当時30歳前後で自身のキャリアを考えたときに、このままワイン造りをしていくかどうか迷った時期だったんです。今は、たくさんの造り手の努力で日本ワインの地位や評価も高まってきましたが、残念ながら当時は日本のワインに対する評価も高くなかったですし、色々な迷いや葛藤があったんです。山下
確かにそれは面白い経歴ですね。しかし、その後またワイン醸造の世界に戻ってきたんですよね?寺口さん
そうですね。多くの造り手が努力した結果、日本ワインの評価も年々高まってきました。その様子を、同じワイン業界にいながらも別の立ち位置でみていたわけなのですが、自身の中で何か熱いものが芽生えていったというか。生涯をかけてお酒に携わる仕事をしたいと思っていたので、エノログの資格を取るなどワインの現場とはずっとつながりを持っていました。
そこを突き詰めて考えたときにやっぱり自分はワインを造るのが好きなんだなと再確認した形ですかね。そこで、2017年にニュージーランドに移住することに決めたんです。
現在、エノログの資格を持ちながら、海外のワイナリーで働いているのは私1人です。
山下
日本でもワイン造りが盛んになっている現状を考えると、また思い切った選択ですよね(笑)寺口さん
日本でやることももちろん考えたのですが、どうせやるなら新しい場所でチャレンジしたかったんですよね。妻がニュージーランド人だったというのもありますし、子どもが小学校を卒業するといういいタイミングでもあったので(笑)最初はヴィラ・マリアなど現地の有名なワイナリーで研修をさせていただいたり、畑仕事をさせていただいたりと経験を積みながら交流を重ねていき、良いご縁があって今のMoana Park Wineryで働かせていただけることになりました。
山下
今回、日本でも発売されることになった「MUTU 睦」ですが、このワインにはどういった想いが込められているのでしょうか。寺口さん
もちろん、日本人らしさというのは意識している部分ではあるのですが、ニュージーランドには日本人が立ち上げているワイナリーもたくさんあるなか、私の場合は日本人がニュージーランドの企業で働いている形なので少し毛色が違います。ニュージーランド人、オーストラリア人、日本人がチームを組んでワインを造る中、少し違った視点から日本の“食のシーン”に合わせられるようなワインを目指して造ったブランドです。
このワインを造る上で、日本で食品のバイヤーとして積んできた経験は非常に活きていると思いますね。
山下
ワイン造りの外側に身を置いたからこその経験が活かされているんですね。この「MUTU 睦」という名前はどういう意味ですか?寺口さん
MUTUというのは、ニュージーランドの先住民であるマオリの人たちが話していたマオリ語で「真髄」という意味。ニュージーランドは英語のイメージも強いですが、実はマオリ語も公用語で、国歌は1番がマオリ語で2番が英語なんです。昔はマオリ語を話せる人があまりいなかったのですが、最近では固有の文化が再評価され学校授業でも取り上げられていることから、若者の間でもマオリ語がかなり浸透してきているんですよ。
マオリの文化にリスペクトを表すという意味でマオリ語を使ったネーミングにしたんですが、これに日本語の「睦」という漢字を当てています。「仲睦まじい」という言葉があるように、友情や繋がりといった意味があるこの漢字をつけることで、日本とニュージーランドの架け橋、新しいワイン体験といった意味合いも込められています。
山下
ネーミングの意味合いもかなり深いですね...。赤・白それぞれの味わいの特徴も教えていただけますか?寺口さん
シャルドネ(白)は、比較的トラディッショナルな「ホールバンチプレス」という造り方で樽発酵させているので、ニュージーランドのワインにしては少し厚めのしっかりした味わいになっています。特徴的なのは酸味のキレです。オーストラリアなどのワインに比べると、しっかりとした骨格のあるワインだと思います。食事に合わせるのであれば、まずはやはり「刺身」「寿司」ですよね。この2つは日本文化の象徴ともいえる食事ですので、比較的どのようなジャンルの具材に合わせても美味しくいただけると思います。特に白身魚にはぴったりです。
その他、チキンにも合うと思います。ニュージーランドではローストしてシンプルに塩コショウでいただく肉料理も多いですので、そういった食文化にも対応できるような味わいに設計しています。
寺口さん
一方、赤ワインはメルローにカベルネ・フランを15%ブレンドした1本です。2019年は特にカベルネ・フランの評判が良い年度だったので、メルローを主体としながらもカベルネ・フランの良い部分を上手く馴染ませたバランスの良い味わいに仕上がっています。赤ワインなのでやはりお肉料理と合わせたいという方が多いと思うのですが、「ラム」とのペアリングは絶品ですね!その他のお肉に関しても、脂身というよりは赤身系のお肉を合わせると美味しくいただけます。
メルロー主体なのでそこまで渋みもありませんし、アクセントとしてカベルネ・フランのスパイシーな香りもでてきますので優しく穏やかな赤ワインです。ソースでしっかりとした味付けにしたお肉というよりは、白ワインのチキンと同様に塩コショウで味付けしたようなシンプルなお肉料理と合わせていただきたいです。
寺口さん
日本の食事、ワインに共通するのは「優しい」「穏やか」といった味わいだと思います。私が日本人がニュージーランドで作るワインとして大切にしているのは、そういった部分と共鳴する「激しすぎない穏やかなワイン」です。日本には世界各国から様々なワインが輸入されるため非常に選択肢が多い中、お祝い事のときなどに私達のワインを飲んで、穏やかに優雅な気分を感じていただければ嬉しいですね。
また、ニュージーランドの食材を購入する機会があったときにもぜひ「MUTU 睦」のことを思い出していただきたいです!ニュージーランドは食品輸出大国ですので、チーズや乳製品なども美味しいものがたくさんあります。そういった食品とのペアリングやバランスの設計も1つひとつこだわって造っているワインですので、日本食に加えぜひニュージーランドの食材とも一緒に楽しんでみてほしいです。
日本人らしさと、ニュージーランドらしさが融合した新たな価値観を持つワイン「MUTU 睦」。きっとその味わいを確かめれば「睦」という1文字に込められた“2つの国の架け橋”になるという想いが伝わってくるはず。
日本では2022年初頭から発売予定となっていますので、ワイン好きの方はぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。
提供:株式会社都光
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