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今年は残暑が厳しいらしいですね。暑いといっぱい汗をかくわけで、体臭が気になる時期はもうちょっと続きそうです。デオドラント用品で体臭対策をとっている方も多いかと思いますが、ここではそもそもの話として「ニオイの正体」についておさらいしておきましょう。
空気中を漂う目に見えない微小な分子が、鼻の奥にある347種類の嗅覚受容体(ニオイセンサー)を刺激して起こる感覚がニオイです。1つの分子を複数の嗅覚受容体で感知するのですが、その組み合わせの違いでニオイを嗅ぎ分けます。
ちなみに、犬の嗅覚受容体は約1,000種類とヒトの3倍。8km先の発情期のメスも感知します。さらに多いのはゾウでおよそ2,000種類。小さなリンゴも迷わずつかんで食べるわけですね。
常温で揮発性がある物質がニオイの対象です。347種類の嗅覚受容体がそれぞれ「1/0」で感知するため、理論上は2の347乗種類の嗅ぎ分けが可能です。が、実際は、ニオイの記憶、分別能力が追いつかず、40万種類となっています。
なお、ニオイ原因物質の印象は濃度によって変わります。たとえば、ジャコウネコの糞尿のニオイをそのまま嗅ぐと非常に臭く感じますが、濃度をごく少量に薄めるとジャスミンの香りと知覚されるようです。
体臭のほとんどは、皮膚に常在する菌が汗・皮脂などの分泌物を栄養分として分解することで、ニオイが発生します。ただし、常在菌の中にはいいニオイを出す表皮ブドウ球菌も含まれるので、常在菌をすべて殺すのはマイナスです。重曹石鹸やミョウバン石鹸は、表皮ブドウ球菌を残したまま洗うことが可能な石鹸として売られていますね。
食べ物が腐ったニオイは不快で、熟成した果実はよい香り…と進化の過程でニオイに対する快・不快が磨かれてきました。一方で、納豆やチーズなどの発酵食品は地域・文化によって快と感じる人と不快と感じる人に分かれます。
嗅覚受容体は非常に消耗が激しく疲れやすいものです。一定時間、同じニオイに対する興奮が続くと、鈍感化します。そのため、自分のニオイに気づきにくくなることに。また、閾値があるため一定量以上の分子がないと感知ができません。
両者は基本的に別物です。消臭剤はニオイの原因物質を中和して別の物質に変えたり、原因物質を囲い込んで認識できない状態に処理します。一方の芳香剤は、より強い新たなニオイの元を提供して、問題のニオイを認識しにくくします。
効果が実証されているサプリメントでも、特定の種類の体臭へのものだったり、経口摂取では別の物質に分解されて意味がない場合もあります。また、皮膚や消化器などに原因がある場合は、そちらの対策を施さないと無意味です。
サプリメントはあくまでも補助的なもの。とはいえ、具体的な原因とアプローチが決まっているなら、食べ合わせも考慮した正しいサプリメントの利用は効果的な一手になりうるでしょう。
個人差もありますが、最近の研究では、脳の嗅覚部で嗅球の総細胞数に関しては女性が1,620万個、男性が920万個。また、嗅細胞数は女性が690万個、男性が350万個で、やはり女性の方が嗅覚が鋭いとされています。
代謝にかかわる設計図が遺伝情報なので、体臭はかなり遺伝要素が大きくなります。先天的な遺伝子欠損などによって分解酵素が生成できず、魚が腐ったような体臭を放ってしまう魚臭症(トリメチルアミン尿症)などが有名です。一方で、体質だから仕方がないと思い込んでいる要素が、実は食生活や生活習慣に起因していたということが多いのも事実。対策によってケアできる部分を検討し、改善しましょう。
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(記事提供元:月刊ラジオライフ2016年8月号より一部修正)