ビール好きの皆さんは、スタイリッシュな「N」のロゴマークのクラフトビールを飲んだことはありますか。こちらは奈良醸造株式会社(以下、奈良醸造)のロゴマーク。その名の通り、奈良市に醸造所を構えるクラフトブルワリーです。


2018年6月の初仕込から今までの2年間、定番ビールは造らず、さまざまなビアスタイルを造っています。ビールの味わいだけでなく、アルファベットのビール名、銘柄ごとに用意されるポストカードなど、ビールファンからはさまざまな点で注目を集めています。2020年5月より缶での通販も開始。人気が高い上、製造量が限られていることもあり、入手が難しいブルワリーのひとつです。

ビールを造り始めて2周年を迎える奈良醸造。代表取締役でブルワーを務める浪岡安則さんにオンラインビデオツールを使用してインタビューを実施しました。京都醸造で修行することになった経緯、奈良醸造ならではのこだわりや仕掛け、これからどんなビールを造っていくのかなど、いろいろなお話をお聞きしました!




ビールを介して“奈良”を発信するクラフトブルワリー



奈良醸造は奈良市北之庄西町に醸造所、週末のみ営業するタップルームを構えています。JR奈良駅からバスで30分程、もしくはJR郡山駅からバスで5分程で最寄りのバス停「イオンモール大和郡山」で下車、徒歩で8分ほどの場所にあります。

代表取締役でブルワーを務める浪岡さんの前職は、奈良県庁に務める公務員でした。地元、奈良で自らクラフトビールを造ることを決心し公務員を辞職。京都醸造のアシスタントブルワーとして修行を開始しました。約1年半の修行期間を経て、2017年7月4日に奈良醸造を設立

奈良醸造と名付けた理由は、奈良のことは、奈良の人が思うほどには、まだ奈良の外では知られていないから。自分たちが造るビールを介し、いろいろな場所で「奈良」という言葉が出てきたらうれしいとの思いが込められています。一方で、地名を冠するには、それだけの覚悟が必要とし、これから奈良を拠点に活動していくことへの強い意思表示でもあるのだそう。


2018年6月21日にビールと発泡酒の製造免許を取得し、その2日後に初めてのビールを仕込みました。初仕込みのビールはアメリカンIPAの『PUBLIC PRESSURE』。周囲から集まる期待と、それに比例して募るプレッシャー。さまざまな思いを苦いビールに込めたそう。


ビールファンの間では、奈良醸造といえば定番ビールがないことで知られています。これまでの2年間、1種類を除き、レシピの異なる合計49種類のビールをリリースしています。ビールの名前もユニークで、奈良で造るクラフトビールでありながらも、日本語ではなく基本的に英語(たまにラテン語だったりも!)で付けられています。


ビアパブ等でビールを飲むともらえることがあるポストカードも人気です。銘柄ごとに用意され、ビールの名前、コンセプト、ビアスタイル、アルコール度数、ホップやモルトの種類など、そのビールに関するほぼ全ての情報が掲載されています。イラストデザインも銘柄ごとに異なり、飲んだ思い出とともにコレクションするファンも多いです。




フレッシュな樽生の状態でビアパブに出荷するほか、瓶内二次発酵で熟成を楽しむ「N BOTTLE CONDITIONED」シリーズを造り通販と工場併設のタップルームで販売。タップルームでは、自宅に持ち帰れられるようにと、その場で缶にビールを詰める“クラウラー”の提供もしています。2020年5月からは、全国にビールを届けようと機械詰めの缶製品の通販も始めました。

奈良醸造ができるまで。「誰もやらないなら、自分でやっちゃえ!」



スタッフの皆さんとブルワー浪岡さん(後列右)

ー浪岡さんはブルワーを目指されたくらいなので、やっぱりビールはお好きだったんですか?


浪岡さん


いいえ。大学の時はビールは好きじゃなかったんです。僕らの時代は一気飲みをさせられるような時代で、ビールに対していいイメージがなかった。苦いし、お腹がいっぱいになるし。あまりいい印象がありませんでした。



ーそうだったんですね。では、ビールに興味を持ったきっかけはありますか?

浪岡さん


大学生の時、バックパッカーをやっていました。いろんな国を周る中でビールを飲むとおいしいんですよね。初めてビールがおいしいなと感じました。社会人になってからは『ヒューガルデン』を飲み、特に衝撃を受けました。苦くないビールがあるんだなと。自分の中にベルギービールのブームが来ました。



ーどうしてビールを造ってみようと思ったのですか?

浪岡さん



ベルギービールは瓶の中に酵母が生きてるって聞いた時、もしかしたら酵母を培養してビールが造れるんじゃないかと思ったんです。いろいろと調べていくと、ビールというのは大手の醸造所だけではなくて、小さいところでも造られていることを知るようになったんです。

社会人になってもバックパッカーのノリで、1週間程の休みを利用してヨーロッパやアメリカを訪れました。ガレージや町工場みたいな小さい規模でビールを造っているところを見て衝撃を受け、おもしろいなって思いました。この体験が「ビール造りって、もしかしたらできるんじゃない?」と思ったきっかけです。



ー公務員を辞めて、京都醸造で修行されたそうですね?

浪岡さん


はい。もともと奈良は、全国でも醸造所の数が少ない県の一つだったんですね。奈良県庁の公務員をやっていたこともあって、奈良でもクラフトビール文化が盛り上がるといいなって思っていました。

いろんな人に醸造所をやればいいのにって、声をかけたりしていたんですけど、なかなかやる人がいなくって。誰も始めないいんだったら、自分でやっちゃえっていう気持ちになってきて、悶々としていました。

そんな時に、人づての紹介で京都醸造を始める前のクリスさんと出会いました。「奈良でブルワリーをやりたいと思ってる」と話したら、「これから京都で醸造所を始めるから、うちに勉強しに来ない?」と声をかけてもらい、公務員をやめるきっかけになりました。



ーずいぶんと思い切りましたね!

浪岡さん


最後まで自分の中では葛藤していました。でも、京都醸造が立ち上がるタイミングに立ち会えること、「アシスタントブルワーとして経験を積んでみないか?」と言われたことが、最後のひと押しになったのかなって思ってます。こういうタイミングって、一生に一度しか訪れないんじゃないかと。

もしかしたら、奈良ですでにクラフトビールのおいしい醸造所があったり、クラフトビール文化が広まっていたら、たぶん僕は公務員を辞めずに支援する方に回っていたと思います。



ー京都に住んでアシスタントブルワーをされていたんですか?


浪岡さん


京都には通っていました。京都醸造でビールの勉強をしながら、奈良で醸造所をできる場所をずっと探したり、そういう準備も同時並行でやっていました。



ーそうだったんですね。どうしたら「一人前」と認められるんですか?

浪岡さん


あちらは一人前とは思ってないかもしれないですけど(笑)

そうですね、ビールができあがるまでの工程を、一人でひと通りできるようになることかなと思います。

レシピを書いて、実際に手を動かして、麦芽を粉砕して、実際の仕込みをやり、発酵中のビールを管理して、最後に樽詰めするとかですね。

ブルワーって、よくビールを仕込んでる部分だけと思われることが多いんですけど、9割位がタンクを洗浄したりとか、樽を洗浄したりとか、掃除がメインなんです。

掃除に不備があると、いくらいいビールを造っても、台無しになってしまうことがあるので、洗浄まできっちりできるようになることが必要ですね。



ー独立までの期間ですが、最初から、例えば「1年で独立しよう!」と思われていたんですか?

浪岡さん



いえ。これはたまたまだったんですけど、場所が見つかったのが一年半経った頃です。ちょうどその頃に、ようやくビールの仕込みも、全体の作業も、ひと通り自分でできるスキルを身に付かせてもらえたと思います。

京都醸造では一通りのことはちゃんとできるように、との思いで勉強させてもらっていたので、そういう意味では、いいタイミングだったんじゃないかなと思います。

本当は、早く見つかれば早く始めたいなとは思っていました。でも、早かったら、たぶんスキル的にはもうちょっと未熟なままだったんじゃないかなと思うんです。



京都醸造の卒業生という意味でも、奈良で新しいクラフトブルワリーができるという意味でも、ビールファンからの寄せられる期待が大きかったんですね。

奈良醸造のこだわり~デザインの秘密~



初仕込ビール「PUBLIC PRESSURE」のデザイン

ーロゴマークの「N」の文字ですが、ちょっと横長くなっていますね。立体的にも見えますが、どんな理由があるんですか?

浪岡さん


このNの形の縦横比、ちょうど連続性を持たせたり、無限に拡がっていくようなデザインにできたり、と様々な展開ができる形になっているんです。僕自身、幾何学模様だったり、エッシャー的なだまし絵とかが好きなので、この形にしました。

そうだったんですね!シンプルな形なのに、とてもおしゃれだなと思っていました。


ービアパブなどで奈良醸造のビールを飲むとポストカードがもらえることがあります。銘柄ごとにデザインの雰囲気が異なりますが、デザイナーさんはお一人ですか?

浪岡さん



もともと、お互い知った仲だったし、なによりクラフトビールが好きな方です。僕たちがビールのスタイルを色々と造っていることに呼応して、彼の方でもいろいろなアプローチでデザインをしてもらってます。


基本的に僕たちはビールを造る、彼はデザインをする、という形でいい緊張感でひとつのものを作り上げていく感じです。



ーデザイナーさんはビールを飲まれてからデザインされるんですか?

浪岡さん


ビール、ビールの名前とデザイン。どれが先かというと、結構いろいろなんです。音楽で言うと「作詞が先か、作曲が先か」に近いものがあります。

名前が先に降ってきて、名前に合わせてレシピを書いて、それと同時に、名前からデザインしてもらったり。名前を聞いたらデザインが降ってきたと言って、ビールを飲む前にできあがっていたり。

逆に、僕たちがデザインを見て、そのデザインを使いたいから、ビールを造ることもあります。

お題が来たら、どう返すかみたいな感じで、デザイナーさんは「大喜利」って言ってますね。



ー名前やデザインを考える過程はとても楽しそうですね。デザイナーさんとの仲のよさもうかがえます。初めてこのカードをもらったときは立派なカードで感動しました。どのような思いで作られましたか?

浪岡さん


ビールって何種類か飲んでるとわからなくなるじゃないですか。ビールの色だけだと、写真に撮っても、後で整理がつかなくなったりすることが多くないですか?カードを持って帰っていただいたいら、後でどんなビールだったか思い出してもらえるかなと思い作ってみました。

カードの裏にメモ欄がありますので、その時の記録とかを控えてもらえたらと思って。カードの保存というか、もっと気軽に使ってもらえたらなと思っています。



これまでのデザインやビールの説明はホームページに全銘柄分が掲載されています。ダウンロードも自由にできますので、興味のある方はぜひのぞいてみてください。(こちらから確認でます。)



ー最近、SNSなどで見かけることが多いオリジナルグラスですが、横広くて、ぽてっとしていて可愛らしいですね。どうしてこのような形にしたんですか?

浪岡さん


グラスはサイズが2種類あります。両方とも口が広くて、ずんどうな形です。ゆっくり香りを楽しみながら飲んでもらいたいなという思いと、口を広めにして、ゴクゴクいかないような形に設計した方がいいかなと考え、あえてこういう形にしています。



奈良醸造のこだわり~ビール造り~



奈良醸造はビール製造免許と発泡酒製造免許の2つを取得しています。これは珍しいケースで、年間最低製造量が増えることもあり、両方を取得しているブルワリーはあまり多くありません。

なぜ両方の免許を取得したのでしょうか。これには、ビール免許ではビールしか造れず、発泡酒免許では発泡酒しか造れないことが理由だといいます。「特殊な原料を使うとビールではなくなる。それは造ることができるビールの幅が狭くなるのではないか。そうであれば、あらかじめ両方の免許を取ってしまおう」と考えたそう。

幅広いビールを造りたいと考えた浪岡さん。最初に造ったビールにはどのようなエピソードがあるのでしょうか。

ー最初に造った『PUBLIC PRESSURE』のビアスタイルは「アメリカンIPA」ですね。どうしてアメリカンIPAを選んだのですか?

浪岡さん



僕が大好きな醸造所の一つに、ダブルIPAの元祖といわれている「ロシアンリバー・ブルーイング・カンパニー」というアメリカの醸造所があります。創業者のインタビューを読んでいると「なんでこんなビールを造ったかというと、設備が稚拙なため、ホップを効かせたビールを造る必要があった」的な記事を見たことが記憶に残っていたことが大きいです。


設備のクセをつかめていないのに、最初に繊細なビールを造ることはできないなって思っていたときに、この記事を思い出してアメリカンIPAを造ることにしました。あとは自分たちがこのスタイルのビールが好きだから、というところ。


周りからは、なぜいきなりそんなビールを造るんだとすごく言われましたね。僕自身は、なんとかなるかなって思ってたんですが(笑)。



ー奈良醸造さんのおもしろいところは、定番ビールがないところだと思います。どうしてですか?

浪岡さん


ひとつは、新しく入れた仕込釜の特徴を掴むまでは、定番は造りにくいなと思っていたんです。どんなビールのスタイルが向いてるのか、または向いていないのかって、いろいろと造っていかないとわからないところがあるので。

もうひとつは、自分に納得しないということですかね(笑)。「これでよし!」というものができたら定番にしたいんですけど。常に、もうちょっとこうすればいいんじゃないかという思いが残っていて。

タンクのクセはある程度分かってきたので、定番にしていきたいなという思いはあるんですけど。やっぱり、まだこうした方がいいんじゃないかって、悶々と考えることが続いてますね。



ーでは、定番ができたとき、そこにどんなエピソードが詰まっているのか。ファンとしては楽しみが一つ増えましたね。

浪岡さん


あまりハードルを上げないでください(笑)



ーところで、ビールの名前が『SOUR SONIC』『WATERMELON HEAD』『COMPLEX』など、全てアルファベット表記ですね。漢字は使わないんですか?

浪岡さん


ビールそのものがユニバーサルな飲み物ですし、奈良は観光の方がいらっしゃるので、海外からいらした方にも読んでもらえたらと思い、アルファベット表記にしています。今のところ、基本的には日本語の名前は付けないかなって思っています。



ーこれまでもさまざまなビアスタイルのビールを造られていますが、季節に合わせてビアスタイルを選ぶことはありますか?

浪岡さん


そうですね。基本的には、夏はセッションIPAであったりとか、冬はもうちょっとドシッとしたブラウンエール、アンバーエールやベルジャンダークストロングなどを造りますね。

造り分けているというよりも、「この季節にコレが飲みたいな~」みたいなイメージが先行しているかもしれないですね。とはいえ、たまに「この季節になんでコレが?」というのがあると思いますが、それはツッコまないでください。



ー自分が飲みたいビールをイメージして造ることが多いですか?

浪岡さん


ありますね。自分がいいと思わないと、レシピが浮かんでこないんですよ。「飲みたいな」って思うところは根っこにはありますね。自分だけでなく、飲んでほしい誰かを思い浮かべることは大きいです。

「マーケット的に今はコレが流行りだからコレを造る」といったことよりも、自分たちが飲みたいという気持ちを大切にしていきたいですね。



ということは、リリースされたラインナップを見ると、浪岡さんが飲みたい、もしくは飲んでほしいビールということですね。これからは注意してみてみようと思います。

いつ飲むかはあなた次第!熟成を楽しむビール



熟成を楽しむことができるビールとして、ボトルコンディションビールがあります。ボトルコンディションとは、発酵が終わったビールを瓶詰めするときに、酵母と少量の糖分を加え、瓶の中で二次発酵させるビールのことです。すぐに飲むのではなく、熟成させて、味の変化を楽しむビールです。ベルギービールでは見かけることが多いですが、日本ではボトルコンディションのビールを造っているブルワリーはあまり多くありません。まだ新しい奈良醸造で、ボトルコンディションをラインナップに加えた理由などをお聞きします。

ー「N BOTTLE CONDITIONED」シリーズについて教えてください。

浪岡さん


これは「瓶内二次発酵」をさせているビールです。「瓶内二次発酵」とは、発酵が完了したビールを瓶詰めする際、酵母と少量の糖分を加えることで、瓶内で発酵(二次発酵)を促すものです。

瓶内で発酵が進むことで、発生した炭酸ガスがビール中に溶け込んでいきます。これがビールの泡のもとになります。

また、酵母が発酵の際に瓶内の酸素を消費することで、酸化によるビール劣化のリスクが大幅に低減することから、常温での長期保存が可能となり、年月を経てビールの熟成を楽しむことができます。



ーボトルコンディションをやろうと思われたのは、浪岡さんがベルギービールがお好きということも影響していますか?

浪岡さん


そうですね。ボトルコンディションは2019年の春にラインナップに加えましたが、当初からいつかやりたいなって思っていました。

僕はビールの容れ物にはそれぞれ必要性があると思っています。例えば、缶というのは、ビールにとって大敵である日光や酸素を最もシャットアウトしてくれます。フレッシュなビールを容れるには、缶が一番いいと思います。

一方で、瓶内二次発酵というのものは、圧力が強すぎて缶では破裂してしまう恐れがあります。ゆっくりと熟成してもらうということを考えると、王冠ではなくコルクにしたり、破裂しないようにシャンパンボトルに容れる必要があります。

ビールの中身に応じて容れ物を変えるというところも考えて、新鮮なビールと瓶内二次発酵ビールを振り分けているという感じです。



ー樽詰でも提供されているそうですね。

浪岡さん


750mlのボトルと樽詰で販売しているビールもあります。熟成する前のフレッシュな状態を樽生でお楽しみいただけます。ですが、タップルームで持ち帰っていただくクラウラーにはしていないという線引はしています。



ーフレッシュな状態とボトルコンディションの両方を楽しむのは面白そうですね。ボトルを購入する方はベルギービールがお好きな方が多いですか?

浪岡さん


そうですね。ベルギービールをご存知の方にもご購入いただいています。

最初に造った『K TRIPEL』は、奈良県大和郡山市にあるコーヒースタンド「K COFFEE」で浅煎してもらったコーヒー豆を漬け込んだビールですが、焙煎所のファンの方など、あまりクラフトビールに詳しくない方にも興味を持っていただきました。そのような形で、ビール好きだけではなく、いろんな人に興味を持ってもらえるものになったらいいなと思い造ってる側面もあります。



どのタイミングで飲むのかは自分次第のボトルコンディション。15℃くらいまでの冷暗所光が当たらない場所で保管すればいいそうです。静かに時間をかけて熟成させ、コルク栓を抜いた時にはどんな味わいに変化しているのでしょうか。いろいろと試してみたいシリーズです。




ボトルコンディションのビールの話に続いて、これまでは行っていなかった缶での販売を始めた背景についてお聞きします。

缶ビールを全国にお届け開始



ー2020年5月より缶ビールの販売を始められましたね。もともとは2周年記念ビールとして用意する予定だったと伺いました。予定を前倒しにしたのは、新型コロナウイルスの影響によるものでしょうか。

浪岡さん


大きいですね。夏に奈良醸造2周年記念ビールとして実現できるようプロジェクトを進めていましたが、緊急事態宣言が出されてから、4月になって樽ビールの注文が殆ど途絶えました。自分たちにできることを考えたときに、2周年記念で準備してた缶を前倒して、他のビールで提供できたらいいのかなっていうことでスタートしました。



ー始められていかがでしたか?人気がありすぎてすぐに完売となっているようですが。

浪岡さん


いいえ、造る量が少ないんですよ。圧倒的に造る数が少ないというか、造るのに時間がかかっているところが大きいと思います。

機械を使っていますけど、ベルトコンベアーで流れて自動で詰めるような機械ではないんです。1本ずつ機械に置いてビールを詰めて、次に缶の蓋を締める機械に置いてみたいなことをマニュアルでやっています。ラベルもスタッフが1枚、1枚、手で貼ってます。

一度に製造できる本数に限りがあり、皆さまには品切れということで、ご迷惑をおかけして申し訳なく思っています。今後、充実させていきたいと考えています。



缶ビールは通販で購入できます。販売スケジュール等はホームページで確認してください。
■オンラインストア:https://narabrewing.shop-pro.jp/

低アルコールでも満足できるクラフトビールを



ー今後、どういったビールを造りたいのですか?今後の展望などを教えてください。

浪岡さん


やりたいことはいっぱいあるんです。

ビールの造りの部分でお話しすると、アルコール度数が低いビールですね。セッションIPAに代表されるようなアルコール度数が5%を切ってるビール。アルコール度数が低くても、クラフトビールとして満足していただけるようなビールを造っていけたらなと思っています。酔うために飲むお酒ではないところでビールが造れたらなって。

いろいろ飲みたいであるとか、アルコールが強いのは苦手なので、量は沢山は飲めないとか、そういった方には、低アルコールのビールを提供することは意味があるのかなと思っています。

ビール好きの方の中には、痛風になってしまったのでお酒を控えざるをえない、と言っておられる方のお話も聞きます。そういうお話を聞いていると、アルコールを造る立場上、責任の一部は絶対に自分にもあるよねと。それまでは、アルコール度数はおいしさによって造り分ければいいやくらいに思っていたのですが、もしかして、自分の造っているものは何かしら人の大事なものを損なってしまうんじゃないかということを考えることがあって、アルコール度数は強くないけれど、飲む方が満足するようなビールが提供できるというのが、次の自分の中の課題なのかなと感じています。

まだ日本ではそういうスタイルは流行らないというか、あんまり注目されないのかなと思います。でも、僕は必要だと思っています。

あまり酔わずにクラフトビールを楽しみたいという方もいらっしゃいますし、健康志向の方もいらっしゃるので、アルコール度数が低くても満足できる味わいのビールがあると喜ばれると思います。

ー他にも造りたいビールはありますか?


浪岡さん


奈良って酒蔵が多いことをご存知ですか?清酒発祥の地と言われてるくらいなので。日本酒を造っている酒蔵が多いのと、おいしい日本酒を造られている蔵っていうのは、結構多いんですよ。

たまたま酒蔵の杜氏さんと知り合いになる機会があり、清酒酵母の使い方のお話をしていく中で、とても興味が湧いてきて、清酒酵母を使ったビールが造れないかと今いろいろと調べているところです。

ビール酵母と清酒酵母の特徴が違いすぎて、どうしようかなとは思っているんですけど、おもしろいアプローチをしたいなって。まだ実現するかどうかわからないのですが考えています。



それは楽しみですね。ぜひ実現させてください。

奈良から発信する個性的なビールを



クラフトビール好きの浪岡さんがビール造りに興味を持ち、地元である奈良で「自分でやろう!」と決めたときから動き出した物語。京都醸造での修行を経て、奈良から個性的なクラフトビールを発信する奈良醸造を立ち上げました。ご縁に恵まれ、タイミングよかったという話もありましたが、それだけでは成し得なかったことだろうと思います。浪岡さんの人柄や想いと努力があってこその奈良醸造ではないでしょうか。

ビール造りへ真剣に取り組む姿勢が反映されたビールのラインナップ。飲んでもらいたい人のことを想い、飲む人の健康のことまでを考え、造られる奈良醸造のクラフトビールをぜひ味わってみてください。


奈良醸造株式会社(NARA BREWING CO.)


◯公式ホームページ:https://narabrewing.com/
◯オンラインショップ:https://narabrewing.shop-pro.jp/
◯工場見学Youtube:https://youtu.be/cEXHrnL8jZE



タップルーム


◯住所:〒630-8452 奈良市北之庄西町1丁目8番地の14
◯TEL:0742-64-0108
◯営業時間
【土・日】13:00~18:00(L.O. 17:00)
※営業日・営業時間を変更をすることがあります。SNSで最新情報をご確認ください。 ◯定休日:平日、祝日
◯座席:オールスタンディング
◯提供:ビールのみ
◯持ち込み:飲食物の持ち込み自由
◯支払い形式:現金、各種キャッスレス決済にも対応
◯喫煙・禁煙:禁煙
◯Facebook:@narabrewingco
◯Instagram:narabrewingco
◯Twitter:@narabrewingco





情報提供元: ビール女子
記事名:「 【1万字インタビュー】奈良から発信するクラフトビール。妥協しない奈良醸造のビール造りについて聞いてみた