ビール女子のみなさま、こんにちは! ポートランド在住の東リカです。
今回は少し趣向を変えて、一時帰省中に出かけた石川県金沢市のマイクロブルワリー「金澤ブルワリー」をご紹介します。


現在、金沢にはクラフトビールのブルワリーが2軒ありますが、金澤ブルワリーはその先駆け。2016年に当時、金沢唯一のブルワリーとして誕生しました。


金澤ブルワリー代表はビール女子!



クラフトビール醸造所がなかった当時の金沢でビール造りを始めたのは、石川県出身の鈴森由佳さん。

2年間のトロント留学中に出会ったのはクラフトビール。その多様さに感銘を受けます。その後、「地元に住んで、自分の好きなことを自由にやってみたい」という思いを抱えて帰国した際に、現オーナーと知り合い意気投合。そして、地元・金沢でクラフトビールを造ろうと決意したのだそうです。

それからは、北陸新幹線の観光案内所での勤務の傍ら休日毎に東京へ醸造研修に通い、醸造免許取得を目標にひたすらビール造りを勉強しました。


研修で唯一の女性メンバーだった鈴森さんは当時27歳。おじさんたちに混ざって苦手な理系の知識を詰め込んだり、慣れない力仕事に汗だくになったり。しかも手荒れ確実のビール造り。知れば知るほど「大変なことに手を出してしまった…」とめげそうになったこともたくさんあったのだとか。

それでも周りからの注目もあり、「一度スタートしたからにはやり遂げないと!」と大奮闘。東京でのビール造りの勉強と並行して金沢でも工場の立ち上げ準備や法人設立のための手続きを進め、29歳の誕生日目前にして、とうとう自分の工場でビールを製造できるようになりました。

毎回、自家製酵母を立ち上げるこだわり



「金澤ブルワリー」の自慢は、醸造所に酵母培養施設を併設していて、ビールを仕込む度に新しい酵母を立ち上げていること。東京の研究所に通う中で縁のできたベテラン醸造家を社員として迎えたことで、醸造所内で一から酵母培養を行えるようになったそうです。


現在、金澤ブルワリーでは、常時20種類程度の酵母をストックしているので、造りたいビールに合わせて自由自在に酵母を使うことができます。そして新鮮な酵母を使うことで、味の大半を決定するという香りがより豊かなものになります。

また、国内でも数少ない酒母製造販売免許を持つ醸造所として、同業他社に酵母の販売もしています。


他にも酵母関連のユニークな試みとしては、ビール酵母の代わりに日本酒酵母を使ったアルコール度数11%の熟成ビール(バーレイワイン)の製造があります。

クラウドファンディングで開発費を募った2種類の日本酒酵母ビールは、それぞれ異なる酵母と麦芽が生み出す味わいに因んで、金沢の二大河川『犀川』(男川)と『浅野川』(女川)の名前が付いています。

シャンパンボトル入りの高級ビールで、味は、吟醸香を感じられるデザートワインのようだそうです。

金澤らしい醸造酒を



1年前からは瓶販売を始めた金澤ブルワリーの定番商品は、赤いラベルの『ヴァージンエール(ペールエール)』、白いラベルの『ヴァイツェン』、黒いラベルの『ドライスタウト』の3種類。

どれもクラフトの街・金沢を体現できるよう素材にこだわり、酵母作りからの全行程を丁寧に行っています。また、「金澤麦酒」の名前はもちろん、ラベルには金沢の伝統工芸・加賀水引、蓋には石川県観光PRマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」があしらわれた金沢らしいパッケージングです。

地元のレストランや酒屋、駅などで販売していますが、お土産としては、おめでたい印象の赤と白のラベルが人気なんだとか。


鈴森さんのお気に入りは、赤いラベルのペールエール。東京研修時から造っていた、特に思い入れのあるビールです。

また、女性に人気だというヴァイツェンは香り高く、小麦のふくよかな甘さが美味しいビールです。男性に人気だというスタウトもコーヒーのような香りが心地よい、すっきりと飲みやすい黒ビールでした。
近々ここにラガービールも加わり、また常温保存可能な商品になる予定だそうですよ。

これからも醸造所から地元らしさを発信



イベントなどで直接お客さんの声を聞くのは楽しみで、励みになるという鈴森さんですが、今後もメーカーとして「醸造に専念したい」とタップバーなど自社ブランドのお店展開は、特に考えていないんだとか。


その代わりにという訳ではありませんが、金澤ブルワリーでは自社のビール以外にも地域のレストランやメーカー、個人のためのオリジナルビール造りを行うことで地元のコミュニティと結びついています。

お客さんそれぞれが造りたいビールのイメージやコンセプト、用途などをヒアリングし、酵母、素材、スタイル、ラベルに到るまで一緒に制作する工程は、大変だけど「変わり種」を造ることができるのが楽しいんだとか。

私が訪れたこの日も、地元の料理屋さんの依頼を受けて、ローズヒップでピンク色を付けたすっぽんエキス入り(!)の甘いエールビールがタンクに仕込まれていました。


また、その他の醸造酒免許も持つ金澤ブルワリーでは、地産の果物を発酵させたハードサイダーやリキュールなど、ビール以外のお酒の醸造も手がけていく予定です。

今夏は初めて麦酒以外の商品として、麦芽の代わりに米飴を使用し、生姜で風味を付けて酵母発酵させたグルテンフリーの発泡性アルコール飲料『ジンジャリカ』を発売。全国で唯一の生姜を祀る地元の神社、「波自加弥(はじかみ)神社」にインスピレーションを得たこの商品は、オリンピック開催を前にインバウンド向けに開発されました。
アルコール度数は3%と軽く、キリッと冷やして夏の太陽のもとで飲みたくなるドリンクです。

「本当に小さな醸造所なので、全部やってみて、やってみて、という感じです」と笑う鈴森さん。
酵母を自在に使い、様々な地元のお酒を増やしてくれる醸造所としての活躍がとても楽しみです!

金沢に遊びに来て!



鈴森さんからのメッセージは、「金沢には、クラフトビールを扱う美味しい料理店や、クラフトビールの専門店が今どんどん増えています!ぜひ、金沢にビールを飲みに来てください!」と最後まで地元推し。

ぜひ金沢に遊びに来て、「金澤ブルワリー」のビールを探してみてくださいね。



株式会社 金澤ブルワリー

◯住所:〒921-8173 石川県金沢市円光寺3-1-5
◯電話番号:076-201-0500





情報提供元: ビール女子
記事名:「 酵母培養からスタート!伝統工芸の街・金沢にある「金澤麦酒」のこだわりを聞いてきた