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予想もつかない展開で観客を新しい興奮の渦に巻き込んだ『ゲット・アウト』(2017)、『アス』(2019)。
そのプロデューサーがまたもや出口の見つからない強烈なスリラーを送り出した。
2人の女性主人公を一人二役で演じるのは、歌手・作曲家・女優・モデルと幅広い活躍を見せるジャネール・モネイ。
不条理な極限状態から懸命に脱出を試みる勇気ある女性像を見事に体現する。
アメリカ南部の農園で奴隷として過酷な状況で労働を強いられていたエデン。
脱走を試みた仲間は監視役の白人に無残に殺され、彼女への仕打ちもエスカレートしていく。
いつ命を失うかもしれない恐怖の中、それでも彼女は脱走を諦めていなかった。
一方、現代の著名な人種差別研究家であり作家でもあるヴェロニカ。
彼女は家庭では愛する夫と娘に囲まれ、仕事では物怖じせずにリベラルな主張を掲げる。
そんな成功者として何不自由ない彼女の生活が、ある出来事を境に激変する。
許可なく自由に話すことも禁止され絶えず生命の危険を感じながら暮らす奴隷の女性と、自らの信念や主張を自由に表現しながら家族と安全に暮らす現代の女性。
この対照的な二人の女性という点と点を線でつなぐものとは何か。
やむことなく続く不穏な空気と緊迫感が、観る者を2つの異なる世界へ没入させる。
テーマは『ゲット・アウト』や『アス』に続いて人種差別だが、じわじわと謎が明かされていくのを目の当たりにしながら、こんなアプローチもあったのか、と驚かされること必至だ。
映画の製作陣は、観客を有無を言わせない形で巻き込み、翻弄させ、想像しない地点に到達させることを狙っている。
まさに体験型の作品なので、安心して次々と起きる出来事に身を任せるのがベストだ。
と言っても、安心とは真逆の不安なことばかり起きるのだが。。。
「ANTEBELLUN(アンテベラム)」はラテン語で「戦前」を意味し、アメリカでは「南北戦争以前」を指す言葉だ。
この映画のポスター、オリジナルでは『E』が、日本版では「テ」が左右逆さになっている。
ちなみに、あのアウシュビッツ強制収容所の入口に掲げられた文字「ALBERT MACHT FREI」(働けば自由になる)は「B」が上下逆さになっていることで知られている。
本作を見終わった後にポスターの文字の意味を考えると、また別の余韻が広がるかもしれない。
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The post 【レビュー】過去と現在、二人の立場の異なる女性の視座から送る戦慄のスリラー『アンテベラム』 first appeared on YESNEWS | 超肯定的ニュースサイト.