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人間の脳は、何もしない安静時でも、生命維持のためにその限られた脳の資源の7割以上を使っていると言われている。つまり、能動的な行動をする際、残された約3割の脳を効率よく活用しなければ、情報過多の昨今、脳はすぐにオーバーワークとなり、それが続くことで「脳疲労」が起こる。
当日は、この「脳疲労」の仕組みなどについて、明治と共同研究を行った理化学研究所生命機能科学研究センター、チームリーダーの渡辺恭良氏による特別講演「脳疲労のメカニズムとその対策」で解説した上で、同生命機能科学研究センター上級研究員の水野敬氏による成果発表「高カカオチョコ摂取による脳機能の効率化」が行われた。
カカオに含まれる「カカオポリフェノール」は、動脈硬化や高血圧予防、便通改善など、さまざまなエビデンスで健康効果が証明されてきた。今回、明治と理化学研究所の共同研究で行った二つの研究では、高カカオチョコレートの摂取により、認知パフォーマンスの維持や脳活動の効率化に寄与する可能性があることが新たに判明。そのため、高カカオチョコレートを摂ることで”脳の省エネ化”に繋がると推測されている。
今回行われた一つ目の研究は、連続的な認知課題におけるパフォーマンスの評価ができる行動評価研究。被験者が高カカオチョコレートと低カカオチョコレートを摂取したあと、15分後と40分後に信号機の色と文字を活用したストループ課題を実施。
ストループ課題の正答率について、高カカオ条件では正答率の有意な変化は認められず、低カカオ条件では正答率が有意に低下した。また、被験者の感想をもとにした主観評価では、高カカオ条件では集中力の有意な変化は認められず、低カカオ条件では集中力が有意に低下した。
一つ目の実験結果から、高カカオチョコレートの摂取により認知機能パフォーマンスの低下が抑えられたと考えられる。このことから、高カカオチョコレートを摂取することで、脳の認知パフォーマンスを維持しやすくなる可能性があることがわかった。
二つ目の研究として、機能的MRIによる認知課題中の脳活動評価研究が行われた。一つ目の研究と同じストループ課題を行いながら、脳の状態を撮像・計測した。MRIにより、脳活動の高低を計測でき、脳のパフォーマンスが維持されているかを確認できる。
低カカオチョコレート摂取の場合は、1回目より2回目で脳活動が増大した。一方、高カカオチョコレート摂取の場合は、むしろ1回目より2回目の活動の値が低くなり、課題を行うために必要な脳活動を省エネで行えたという結果になった。このことから、高カカオチョコレートの摂取は脳活動の効率化に寄与した可能性が高いとされている。
以上の二つの研究から、高カカオチョコレートを摂取すると脳のパフォーマンスが維持され、脳資源を効率よく使える”脳の省エネ化”に繋がると考えられる。マルチタスクの仕事をする前や、頭をフル稼働させながら話すプレゼン前などには、高カカオチョコレートを食べることで脳資源をうまく抑えながら疲れにくい状態を保ち続けることに期待できそうだ。